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村長の威厳 #とは

皆様こんばんは、エルフのフィーニャに頭をよしよしされながらエルフの村へと向かっているトカゲの私です。

先ほどまでいた森の中とは違い所々に松明のようなものが置いてあり、今は明るく照らされた道を歩いている。

この道は均しており、通りやすくする為か周りの木も軽く伐採してあった。

視界が高いと色々なものが見える事に感動する。

感動するといえばもう一つ。

ユグドラシルの木の周りに飛んでいた発光体が所々に浮いているのだ。しかもどんどん数が増えている。

とはいえ、あの巨木の周りほどは浮いていないがとても美しい。松明の光と発光体の光が相まって本当に神秘的だ。

周りを堪能しながらフィーニャの手の上で寛いでいると、拓けた場所に出た。

「ようこそ!ここがエルフの村【チャーロ】だよ」

私は体を起こし、村を見渡す。

壁は煉瓦だろうか?煉瓦を積み上げたようなしっかりとした作りに見える。屋根もしっかりしているようで雨風は余裕で凌げそうな家だ。

道もしっかり舗装してあり、道なりに石畳が敷かれている。

森の中にあるような村には見えない。思った以上にしっかりとしていて村というより街のようだ。

自分の思っていたエルフの村とは少し違うが、改めてここが異世界、ファンタジーの世界なのだと実感させられた。


村の中をどんどん歩いていく2人に声をかけて来るものは少なくない。

色々と声をかけられるも軽く返事をしながら真っ直ぐ進む2人が向かっているところは分かっている。

2人と遭遇した時に話していた「おばば様」と呼ばれる者のところだろう。

今更だが緊張してきた。連れて行かれることはわかっていたがフィーニャの手の上が心地よく、そして周りの景色が良かったせいで今の今まで忘れていた事を後悔している。

生きていた時はどんな強面のゴリラみたいな取引先の人にも屈せず契約を取り付けたものだ。

だがここは異世界。ファンタジーの世界。

果たして私の培ってきたものが通用するんだろうか?

そう考えるとそのおばば様と呼ばれる人物に会うのが億劫になる。

コミュニケーション能力は高めだと自信をもって言える。まあ大丈夫だろう、多分。大丈夫だと信じたい。

大丈夫だと自己暗示をかけていたその時フィーニャの声にハッと顔を上げた。


「よーし着いたよ!」

無駄に元気だな。オラに元気を分けてくれ。

チルマが目の前にある扉を開けた。

ドキドキは最高潮だ。

すげえ怖そうなおばあちゃん出てきたらどうしよう。

「おばば様、今戻りました」

チルマが先に中に入り、フィーニャが続いて入って行く。

家の中には丸いテーブル、それを囲むように数個椅子が置いてある。

その向こうにはソファの背が見えた。

「ああ、チルマとフィーニャお帰り」

声は若い。そして無邪気で優しいといった印象を受ける声だった。

「ただいま、おばば様。ユグドラシルの木は無事でした。特に変化なし!…なんだけどぉ…」

最後の方はごにょごにょと口ごもるように喋るフィーニャにソファの向こうにいる人物は笑い声をあげた

「不安そうな声を出すんじゃないよフィーニャ。村に入った時から気配は感じておったよ」

私と顔を合わせるように己の手のひらに目線を落としていたフィーニャは顔を上げた。

それと同時にソファから立ち上がるその人物に視線を集中させる。

「やぁいらっしゃい、小さな訪問者さん」

ソファの向こうから現れたのはおばば様とは呼べない、小さな女の子だった。

パッと見た感じは14、15歳だろうか。少女といって間違いない。

「おやまぁ…白いリザードとは珍しいねぇ。しかもここまで小さいとは」

けらけらと笑う目の前の少女に口が開いたままになる。

おばば様とか言うからすごく厳格な怖そうなおばあちゃんを想像していた。

呆気にとられる私の顔を覗き込む少女。

「初めまして、わしはこの村の村長をしておるモネード。ようこそチャーロへ」

そう言いニッコリと笑う少女基モネード…さん?…様?

明らかにフィーニャやチルマより若いじゃないか。

あ……本で読んだことあるぞ。これが俗に言うロリババアというジャンルのものか。

変に納得する私を他所にフィーニャとチルマはモネードさんに案内されるがままテーブルに座った。

フィーニャが私を机の上に降ろす。

暖かかったお腹あたりが急にひやっとした。


「おばば様、この子ねユグドラシルの木の根元にいたの」

「ほうほう…あの気難しい木がねぇ。珍しいこともあるもんだ」

「珍しいでしょ?あの森で彷徨っていると、この小ささじゃすぐ死んじゃうだろうし」

すぐ死ぬって言った?ねえフィーニャさん?!

勢いよくフィーニャの顔を見る。

「簡単にモンスターに踏み潰されるだろうし、怪鳥なんかの餌になりそうだな」

チルマが不穏なことを口にする。フィーニャからチルマに視線を移すと、すごく真面目そうな顔をして頷いていた。

この感じからして私は相当危ない橋を渡っていたようだ。

「普通やリザードなら大丈夫じゃろうが、このサイズじゃなぁ」

ふふふ、と笑うモネード様に震えた。

「おばば様お願い!ちゃんとお世話するから!飼っていい?!」

おいフィーニャ。犬とか猫とか拾ってきてお母さんに頼む小学生じゃないんだから、もっと別の頼み方あるだろうが。

顎に手を当て考えるモネード様。

「とは言えお前の事じゃ。どうせほっぽりだしてチルマが世話するのが目に見えとる」

お母さんじゃん。返答が完全にお母さんじゃん。元いた所に返してきなさいって言う流れじゃん。

「基本はフィーニャに世話させる。私はサボらないように目を光らせるよおばば様」

「チルマがここまで言うなら許可してもいいが、お前達こやつが何かわかってないのに飼うのかい?」

ですよね!おばば様!

私だって私のことわからないもん!トカゲってことぐらいしかわからない。

私なら見たこともないようなものを、珍しいからと言って飼わない。毒持ってたらどうすんだ。多分持ってないけど。

ふむ、と小さい声を上げ私を見つめるモネード様に後退りする。

まさか……殺したり…しないよね?

ビビリに拍車がかかり、全速力で走ってフィーニャの肩に登る。

そっと髪の隙間に体を滑り込ませて、顔だけモネード様の方へ向けた。

「おばば様が怖い顔するからリザードちゃんが怖がってるじゃない!可哀想だよ!」

「わしがいつ怖い顔をした!こんなに若々しいプリティな顔で見とるだけじゃ!怖い顔なんかするかい!」

「でもリザードちゃんが怖がって隠れちゃったじゃない!」

ギャーギャーと騒ぐ2人にどっと疲れる。

村長にそんな歯向かっていいものなの?

村長も自分の事プリティとか言ってるしこの2人はなんなんだ……

それよりも耳元で騒がれるのはこれ以上困る。

静かに座っているチルマの方へするすると移動した。

肩に登るとチルマの顔を見る。

表情はなんというか、「こいつら馬鹿だな」って感じの顔をしているのがなんとも言えない。

わかる……わかるよチルマ……

私のことで争わないで!って2人の間に入れたら良いんだけど小さな私が割って入ったところで何の意味もない。

フィーニャの手のひらも落ち着くがチルマの肩も落ち着く。

相変わらず騒ぐ2人を他所にチルマは勝手に席を立った。

「とりあえず夜も遅い。おばば様、フィーニャ、話はまた明日。この子は今日私が預かる」

そう言い残す。後ろから相変わらず2人の騒ぐ声が聞こえるがチルマはまるで聞いていないかのように颯爽と家から出て行った。


石畳をテキパキと歩くチルマが小さく欠伸をした。

「眠い。非常に眠い」

この子実はしっかり者に見えてかなりマイペースなんじゃないかな。

もう一度欠伸をして私に語りかけてきた。

「お前も疲れたろ?私の家は静かだからゆっくり眠れるはずだ」

優しく笑うチルマに惚れそうになった。

自然に人に気を遣えるイイ女!あ、人じゃねーわ私トカゲだわ。

ありがとうチルマ。優しいね。

話せないけど気持ちだけしっかり伝える。

伝わったのかチルマと視線が合う。ふっと笑い私の頭をそっと撫でてくれた。


今日は安心安全に夜を明かせる事に本当に感謝だ。

ありがとうフィーニャ、チルマ。

村の中を進むチルマに体を預け私は空を見上げる。

相変わらず、すごい夜空。

あ、流れ星。

いい夢が見れそうだ。

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