ガチャなんて大体こんなもん
光に包まれた私が次に目を覚ましたのは森の中
バカでかい木々に囲まれている
もちろん木があるという事は葉っぱもそこらへんに落ちてる訳でものすごくでかい。
流石異世界。木も葉も規格外のデカさ
どのぐらい葉がでかいかと言うと真上に落ちてきたら多分私は潰されて死ぬぐらいのデカさ。
葉っぱに潰されて第二の人生終了なんて洒落にならないが…
さてさて私の新しい人生の始まりという事で、まずは動けるものに転生しているかどうか。
右手は、動く。左手、もよしよし動くね。
次は右足を前に出す。おお!いい感じ!
左足も動くね!ああ…良き良き。
下を向くと手足見えちゃうからわざと上を向いて歩いているけどやっぱりドキドキするもんだわ。
触覚があるという事はちゃんと実体があるものに転生できてる証拠
ただおなかが地面に擦れちゃっててそこがちょっと気になる。
四つん這い系かぁ
もしや人外?まぁそれもあり寄りのありだし問題はない
もしかしたら赤ちゃんに転生しててずり這いしてるだけかもしれないしね(この感じまずありえなけど希望は捨てない)
猫とか犬とかに転生して優しい飼い主さんに拾われるかもしれないし、ドキドキが止まらない
木々の風に揺れる音で聴覚も確認済み
自然の音ってなかなかに癒されるものだ
今までコンクリートジャングルで生き、冷暖房完備の牢獄でパソコンや書類と睨めっこしていた私にとって自然の音というのは遠い存在だった
なんか観葉植物とかあった気がするけど元気に育ってた覚えがない
みんなが出す負のオーラのせいなのかフロアにあった観葉植物はドンドン枯れていったのはすごく不思議に思っていた。
それにしても全然前に進んでる感じがしない
景色はほとんど変わらないしちゃんと歩けてる?
さっきまでわくわくしていたのにドンドン不安になってきた
全然進まず、視界は一緒
下手すりゃ葉っぱに潰されて死ぬ
生まれ落ちた場所はまず最悪の場所という事だ
触覚はあるけど実は全く匂いを感じていないのも不安の一つ
嗅覚がないのは致命的だと思う
葉っぱの匂いも土の匂いも何にもしない
もしかしたら匂いという概念が存在しない世界なのかも!とかポジティブに考えてみたが無理だった
頑張って前に進もう
今出来るのはそれぐらい
私は不安をかき消すように必死に前に進んだ
しばらく進んでいると空がゴロゴロと嫌な音を立て始めた
このままだと絶対雨が降ってくる
わかっているなら行動あるのみ、必死で手足を動かす
もう少しで茂みに入れるところで自分の真横に大きな雨粒が落ちてきた
ものすごい量と、なにより勢いだ
隕石か!と思うぐらいには落ちてくるスピードやその他諸々がおかしい
あんなの直撃したらthe end
絶対死ぬ、100%死ぬ。わたしの第二の人生始まってすぐなのに即死攻撃の危機
死にたくない、その一心で茂みに逃げ込んだ
茂みの下は石?岩?が少し積み上がり中に空洞がある簡易の避難所があった
この石なのか岩なのかよくわからないサイズの土の塊は私が異常に小さいと仮定して、きっと生前の私のサイズなら気が付きもしないほどの石ころなんだろう
まあ、それはいいとして雨宿りできるのはものすごく有難い
自然にできた避難所はありがたく使わせて頂くことにした
石と石の間に体を滑り込ませる
体を全部入れたとき、後ろから音がした
何奴?と振り返れば見てしまったのだ
新しい自分の体を
長い尻尾
光沢のある鱗
真っ白な体
足先には小さな爪
どう考えたって爬虫類
どこをどう見たって爬虫類
控えめに言っても爬虫類
思わず口が開いた
だらしなく開いた口から真っ赤な長い舌が落ちた
確かに人生は博打だと思う
私の前世はその博打に負けたのだ
でも案内係の自称神様は言っていた
「有償オーブのガチャみたいなものだからハズレはない」と。
明らかにハズレじゃね?
これハズレだよね?
多分星1とか星2とか。言い方を変えるとノーマルとか良くてレア
レアはないよね、だってトカゲだもの
騙された!前私詐欺にあいそうとか思った途端にこれだよ!
詐欺じゃねーか!訴えるぞ!
狭い石の間でジタバタ暴れてみるも石さえも動かないこの非力さ
落胆するしかない
人間諦めることも大事
そう、諦める事も…諦めきれないけど。流石にこれは諦めがつかない案件だと思う
とは言え、私には今どうする事も出来ない
舌を引っ込め、真っ白な体を丸めた
ああ…さっきは気がつかなかったけど体は真っ白でも尻尾の先は黒いんだな
背中はどうなってるんだろうか
もしかしたらお洒落な柄が入ったお洒落トカゲかもしれない
ただ石の隙間は狭く背中まで見れない
とりあえず隕石のように降り注ぐ雨が止むのを待つしかなかった
待っていると雨はすぐに止んだ
どうやら通り雨だったようだ
石の間から体を出し外を見てみると、地面には水溜りが所々に出来ている
小さな私からすると大きな湖のようなものが至る所にあるのだ
トカゲって泳げるっけ?
ここで溺れ死ぬ可能性も無きにしも非ず
それを考えると元の道に戻る勇気はなかった
石から体を乗り出し濁った水たまりを覗き込んでみた
濁ってはいるが自分の顔は確認できた
どうやら目は黄色?金色?
濁っているせいで良くわからないがそんな感じの色だ
なんとも不思議な色のトカゲだな、なんて人ごとのように思ってしまった
兎に角ここにいても仕方ない、私には行動するしかないのだ
先ほどまで雨宿りをしていた石を乗り越え反対側ん目指す
溺れ死ぬことを考えると別のルートを行く事にした。
雨のせいで別のルートに進んでも水溜りが出来てはいたが先ほどまで進んでいた道よりかはマシ。
少しでも地面が多いところを進む。
頑張って前に進むも周りの景色はなかなか変わらない
ずっと木、ずっと葉っぱ、ずっと森なのだ
いい加減喉も渇いたしお腹も空いてきた
チロチロと舌を出した時、ある事に気がついた
匂いを感じたのだ
お?お?口を閉じていた時はなにも感じなかったのに舌をチロチロ出してみると匂いがある!
トカゲってこうして匂いを感じてたのか…生命の神秘だわ…
また改めて舌を出してみた
なんだかいい匂いがする
その匂いの方は向かってみることにした。
暫く進むと匂いは強くなってきた。
葉っぱの隙間をどんどんすり抜け先に進む。
ここだ!と思う場所に出るとそこにいたのは巨大な虫。多分コオ…ロギ…?
コオロギってあんなにトゲトゲだったっけ?
色も赤いと緑が混ざって毒々しいし、なにより手足が鎌っぽい。
なんとなく察してた。いや、結構察してた。
心の中でせめて虫は嫌だと思ってたけどフラグだった。すみませんでした。
向こうはこちらに気がついていないようで私は音を立てずに後ろに下がる。
そりゃそうだ。自分より何十倍もデカイ虫がいる
逃げるしかないと思った
音を立てずそっとその場を離れた。
やべぇよやべぇよどう見たって私が生きてた世界の虫じゃない。
異世界転生キャッホー!とか思ってた私が馬鹿だった
あんなんモンスターだよ、クリーチャーだよ
今の私には何もできない。出来るはずがない。
踏み潰されて終わり。
新しい世界に生まれ落ちて、死亡フラグしかない
おかしいな。
私が望んだものと違うぞ!
チートは?主人公補正は?
そんなの全然見当たらない
あの自称神様次会ったら尻尾で殴ってやる
そそくさと逃げた私は空腹に耐えきれず、木の根っこに隠れた
気が付かなかったが空には星が出ていた。
この異世界にも夜はあるんだな。
根の隙間から空を見上げた。
私はまた博打に負けたのだ。
前世でも今世でも、運は最悪。
せめてレアのモンスターとかに生まれたかった。
いろんな思いが駆け巡る。
生まれ落ちた時はとても嬉しかった
新しい自分とも仲良くやっていこうと思った
じゃあ今は?
とても悲しいしどうしていいかわからないし、生き残れる自信もない。
不安に押しつぶされそうだ。
何を考えてもマイナス思考になりそうな今無駄なことは考えないようにしないといけない
首を横に振り、不安な気持ちを振り払う。
それにしても、ああ…本当にお腹空いたな…
尻尾って美味しいのかな?
少しかじってみる
味はもちろんしないし、変な感じだ。
やめよ…なんか尻尾細いし千切れそうだし。
口から離し、改めて体に巻きつける。
少し安心した。
そうだ。いい風に考えよう。
私は5体満足に生まれ落ちたし、味覚以外の五感は確認できてる。
それでいいじゃないか。それだけでいいじゃないか!
そう考えよう。
やればなんだって出来る
生前私はどんなことでもやってきた
無茶な仕事もなんでもやってこれた
根性だけはある方だ。いや根性しかない奴なんだ
根性あるだけいいじゃん!
そうだよ!せっかく生まれたんだ!この体で出来ることをやるんだ!
とりあえず日が昇ったらお腹を満たそう
虫は嫌だけど。絶対に嫌だけど。
食べれる葉っぱとか探そうかな
もしかしたら木の実とかあるかもしれないし。
これから私の冒険が始まるんだ
オラわくわくすっぞ
ポジティブに考えてたら眠たくなってきた。
とりあえず上手いこと体も隠せてるしこのまま寝よう
ぎゅっと尻尾を体に巻きつけ、そっと目を閉じるとすぐに深い眠りに入った
寝入った後、身を隠すその巨木は不思議な光を放ち、ふわふわと周りには光が舞い踊っていたことを知る由もない




