人生なんてガチャと一緒
これ確実に私死んだでしょ?
絶対に死んだね。なんとなく察したわ。
真っ暗な世界で私の体はふわふわと空中に浮いている
無重力ってこんな感じなのかな、とか死者の世界って真っ暗なんだななんて相変わらず暢気に考えていた。
とりあえずまずは行動しよう、意識を失う前は全く体が動かなかったけど体は動くんだろうか
指先から動かしてみる
うん、動かない
いや、ここは動けよ。何もできないじゃん。
どうにか頑張るも何もできない、何も起こらない。
そして頑張るのを速攻でやめた。
婆ちゃんが言ってた
人間諦めることも大事だよって。
いやもしかしたら爺ちゃんだったかもしれない
それはさておき、これからどうすればいいんだろうか。
真っ暗で何もなく、体は一ミリも動かない。ただ意識があるだけ。
これから永遠にこの空間を彷徨うんだろうか。
諦めることも大事だろうがここで永遠に居続けるなんてまず無理だ。
本が読みたい、なんでもいいから
本だけ与えてくれればこの空間だって楽園になるのに。
そう考えたら涙が出てきた。
何もできない、何もない。本当に無力だ。
私が社畜でなければ、上司や同僚の仕事の肩代わりも断る勇気があれば。
こんな所に来る事もなかったんじゃなかろうか。
どんどん悲しくなってきた。
自分で自分の首を絞めていたことに今更気が付いた
最初は仕事がすごく楽しかったから
そして上司や同僚に頼ってくれてすごく嬉しかったから休みが少なくてもいいや、なんて考えていた。
結果私は死んでしまった訳だが。
こうしてるうちにもきっと生前の世界ではたくさんの本が生み出され、ネットにはどんどん新作の小説が上がっているんだろうな
ああ……文字が読みたい…文字が……
どうして私はこんな目にあっているのだろうか。
さっきまで悲しかったはずなのに、どんどんイライラくるのが分かった
思い切り息を吸い、声を張り上げた
「ク……クソがーーーー!」
あ。声出た。
もしかしたら声が出ないんじゃないかと思っていたが声は普通に出るんだ。
この真っ暗な世界にきて初めての嬉しい発見だ。
どうせ誰もいないなら誰にも言わなかった今までの愚痴を言ってやろうじゃないの
部長はカツラだとか、隣の席の人は課長とデキてるとか、向かいの席の奴が私に仕事押し付けて先に帰るだとか、合コン誘われなかったとかひたすらに言いまくった
こんなに悪口とか愚痴って出てくるもんなんだね!
今まで誰にも言えなかったし言う気もなかったから忘れていたけど、思い出せばたくさん出てくるもんだ
ある程度言い終わったらかなりすっきりした
「すっきりしたのならよかったです」
「はい。すごくすっきりしました」
「ところで貴方様ご自身が亡くなられたことはもう受け入れられましたか?」
「それはもう。あんな生活してたら死にますよ!ははっ!」
「では、次の世界への説明をさせて頂きたいのですがよろしいですか」
「はい!どうぞどうぞ……ってどなたですか。というか姿が見えないんですが」
「私には姿はありません。神様の姿って誰も見たことないでしょう?」
確かにそうだ。
なんて姿のない自称神様の言うことを多少なりとも受け入れようとしている自分がいた。
こんなに素直になんでも受け入れてたらいつか詐欺にあいそうだな私
「まず貴女ですが簡単に言うと死にました。先ほどもおっしゃってましたが納得されているようなので色々と省きます、面倒くさいので」
神様のくせに面倒くさいって…
とりあえず素直に姿の見えない自称神様の有難いお話に黙って耳を傾けることにした
「転生に必要な徳ptが貯まったのでこうして私がわざわざ貴女に説明をしにきました」
「はい、神様質問です」
「質問を許可します」
「徳ptって何ですか」
「所謂善行です。貴女が他の方のお仕事もお手伝いしていたお陰で他の人が過労死する未来を変えました。何人もの死を救ったのは貴女です」
え、まじか。誰の仕事も手伝わずにいたら私がいた部署過労死だらけになってたの?
あの部署闇が深すぎやしないか?
「貴女の死のおかげで会社に調査が入り、トップも変わって今ではホワイト企業に」
「私が生きてるときにホワイト企業になってほしかったな」
「まあそう思いますよね。話が逸れてしまったので戻しますが、貴女には転生する特典がプレゼントされます」
心の中では舞い踊っていた
転生だよ、来ました。ド定番。
ありがとう神様!
「て…転生ってチートにしてくれます?!」
「残念ながらランダムです。ゲームのガチャと一緒です」
「おい、ふざけんな」
「私は案内係ですから。まぁあれですね、会社の受付嬢と一緒だと思ってください。ガチャはガチャでも有償オーブとかで引くガチャのようなものなので外れは基本ないと思います」
「すごくわかりやすい解説ありがとうございます」
きっと動けてたら暴れまわってたと思う。
転生ってそんな雑なものなの?
え?チートは?主人公補正は?
聞きたいことはたくさんあるのにつらつらと説明していく自称神様の話の中に割り込めない
「……と言う事で説明が面倒になってきたのでここまででいいですかね、いいですよね?では貴女に加護があらん事を」
「びっくりするぐらい雑でむしろ清々しいです」
「ありがとうございます。多少省きましたが私ができる案内はここまでです。あとは貴女の運次第」
先ほどまで淡々と喋っていた自称神様が小さく息を吐く音が聞こえた
「私はただの案内役ですが、貴女の事はずっと見守ってきました。貴女のやってきたことは自分を苦しめるものでしたが他の人は貴女に感謝しきれないほど感謝していました。それと同時に惜しんでもいます。貴女は貴女自身を誇りなさい。今後はきっと運に恵まれることでしょう」
優しく優しく語り掛けるようにそう喋った自称神様の気配はもうない
暗闇の中にぽつりぽつりと白く光るものが増えていく
どんどん白く輝いていく私の視界が涙で滲んでいった
「もっと生きたかったな…」
受け入れていてもどこか悲しい
さよなら社畜の私よ
そして初めまして新しい私




