表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
火の如く 風の如く   火の章  作者: 羽曳野 水響
110/168

第108話 撤退

      挿絵(By みてみん)



 ちによって、スペイン軍は、その半数の船を失ったようだった。

 林鳳は撤退てったいを決めた。

 中国人たちは、小舟に分乗ぶんじょうして、島を去る。

 ラ・ロンディネ号は、彼らには操船そうせん出来できない。助左たち一行いっこうが乗ることになった。

「勝利を収めたのは、我らのおかげぞ。信用してくれてもいいだろう。」

 秀吉が言ったが、さすがにすべて、信用してはもらえない。

 連絡れんらく将校しょうこうとして、シオコとその配下はいか十人が同乗どうじょうすることとなった。つまり御目付役おめつけやくである。

手狭てぜまな船に、ただ座っている客を積んでいる余裕よゆうは無いわ。そのほうらには大砲たいほうを撃つのを手伝てつだってもらうぞ。」

 秀吉はねんを押した。

「ではそちらのお仲間がわりに、我らの船に乗ってもらおう。御婦人ごふじんがた如何いかがかな。」

 シオコはにっこりして言ったが、勿論もちろんていのいい人質ひとじちである。

「その必要は無い。」

 秀吉は()()()として言った。

何故なぜなら、この脱出作戦で、死中しちゅうかつを求める者を、こちらから出すからだ。」

「ほほう。」

 シオコはひげでた。

「それはどういうことですかな。」

「私です。」

 紅はあゆみ出て、にっこり笑った。

「まあ、見ていてください。」

 実は、助左と随分ずいぶんめた。

「そんなこと、お前にさせられねえ。」

 彼はけわしい目で彼女を見た。

「俺が行く。」

「坊ちゃまがいらしたら」

 紅は()()まして言った。

「この船はどうなるんです?こんなこと、れっこです。羽柴さまも、私に出来できるとんだからこそ、おめいじになられたのです。万一まんいちのことがあっても、私のことはほうって行ってください。それが、船頭せんどうたる者の役目やくめでございましょう。」

 言い負かされて助左は、それ以上、追求ついきゅうするのはめた。

 が、()()()と、

「『慣れっこ』なのかよ、お前。」

と言った。

 その調子が、()()()()と彼女を思いやっているようで、()()と胸をかれた。

 目をらして歩み去った。

 彼の視線を、背中に痛いほど感じた。

(そんな目で見ないで)

 心が弱くなってしまう。

(喜平二さまとお別れてしてからというもの)

 たった一人で、自分を支えて生きてきた。

(それはけたい)

 顔を上げて胸をった。

 あたしは、あたしの道を行く。

 あなたの行く道とはまじわらない道を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ