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特に抵抗もしなかったからなのか、手荒なことはされなかった。
警察に案内されて、城の見学をする、そんな悠長な事態ではないのだが、様を表すにはこれがしっくりくる。
今では、入ることはおろか、門兵がいるので、用のない自分は近づくことさえしなかった。自己の生活に全くともって、関わり合いがなかったので、別世界と思っていた。
なので、城が城として機能しており、内には偉い人々が存在することを、感じると、本当に王はいるんだなぁと呑気な感想も持ってしまう。
城内にはふさわしくないであろう自分は、頭から爪の先までその場にそぐわないもので構成されてる気がしてしまう。
その気持ちを察してか、いや、本当に場に合わないと判断されてか、湯浴みと着替えが申し渡された。
ただ、門の内に入っただけで、これほど緊張している。これから城内に入るとなると、どれほど思考しなくてはいけないのだろうか。
促されるまま、城と比べればかなり簡素な造りの平屋に歩を進める。恐らく、下女など、身分の低い者達の住居なのだろう。
ふと、疑問符が浮かぶ。身に覚えの無いことではあるが、一応、罪人として連れてこられている。
ならば、もっと乱暴に土牢にでも放り込むものではないのか。湯浴みに、着替えなど、客人へのもてなしに近いものを感じる。
もっとも、罪人で置いておくにも、あまりにもみすぼらしいという判断が下されているなら話は別であるが。
一応、守谷に連れられ、店に入ったり、日雇いではあるが町で働いたりしているので、自分がそれほど浮いていないことは理解している。
ならば、これはーー
一体なんなのだろう。