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暁に棲む  作者: 水街 つみき
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ひどく、頭がぼんやりとする。微睡みの中にいるような感じだ。

今がいつなのか、そう考え始めた時と今では、既に随分の間が経っているのかいないのか。


毎度のことながら、夢から醒めた、いや、まだ半分夢をたゆたっているこの感触に慣れない。

ー 慣れたくはない。


この感覚があるという事は、今回もまた、私の願いは叶わなかったのか。

ー もう、誰も失いたくない。

それが無理なら私を ー。


いつものように、冷たい空気の満ちた部屋に、少女は鎮座している。無表情に佇むことが多かったとはいえ、今はまさに虚ろな人形のようである。

瞳は宙を見ているが、何も映していない。


あの子の笑顔を最期に見たのはいつだっただろう。

もう、数日は見ていない気がする。

死期が迫るにつれて、あの子は怯えてしまった。

せっかく仲良くなれたのに。


ただ、わたしの機嫌を取っていれば生きられるかもしれないという、一縷の望みで、あの子は私に話しかけていた。


だが、怯えているのは目に見えた ー いや、普通なら隠し通せたかも知れない。怯えを見慣れた私は、見抜いてしまう。


心からの、私の好きだった笑顔は、見れなくなってしまった。



あの子との最後の記憶はなんだろう。

いつも、最期は曖昧なのだ。眠る瞬間が分からないように、事の前後は、はっきりしない。

もちろん、最中の記憶もない。


それが救いと言えばそうなのだけれど。



空を見やると、限りなく丸に近いが、これから、欠けていく月が嗤っている。

今日に限っては、鈴の音は鳴らない。今はまだ、抑えつける必要がないからだ。


そして、また鈴は響き、その音を増して、今日を繰り返すのだろう。



ー 人の命を貪りながら、私だけが一人、生きていく ー。


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