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家に走りながら、守谷は考えていた。
お上の命が出たのはつい、昨日の事。あと3日後までに、若くて元気な罪人を連れて来いとのことだった。
詳しい事は分からないが、定期的に罪人を城に献上する。そして、その者が帰ってきた事はない。
罪が実際にあるかは関係ない。
お上が欲した人物を都合よく連れて行ける罪があれば良いのだ。
田中の仕組んだ事は昨日今日に始まった事ではない。
士郎から、銀の話を聞いたのが一週間前で、その時点で銀は女に何度も会っている。
田中は狡猾な男だ。お上の命を遂行したものは、それなりの報酬が貰える。
定期的に罪人が必要な以上、こうした手配を既に幾つもしているのかもしれない。そうすれば、いつも報酬を貰える。
しかし、今回、士郎である必要は無かったはずだ。
それは、俺のせいかも知れない。
俺に対する嫌がらせか、いや、俺の大事なものを奪う事で優位に立つ事が目的か。
とにかく、俺との関わりが無ければ、士郎は標的にならなかったのではないか。
いや、一番燻っている思いの原因は奴ではない。
子を天秤にかけられたとはいえ、士郎を見捨てた俺への憤りだ。
思いを巡らせながら、我が家に駆け込む。
妻の腕に抱かれて気持ちよさそうに眠る我が子を見た時、俺は
「よかった」
思わず口から零れた。
どんなに後悔しようとも、辿り着くところはここなのかと己の非情さが憎らしかった。