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暁に棲む  作者: 水街 つみき
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29 月姫の朝 2日目

なんだか、気持ちがふわふわする。


朝日がいつもより清々しく、柔らかく感じる。

意味もなく、息を吸い込んで、微笑んでみたくなる。

朝餉の米をいつもより丁寧に口に運んでみる。


どうしてかしら。


打掛の柄を気にする。

基本的に、打掛はそうそう変えない。その人を表す着物と言っても過言でないのだ。

一応、姫の身なので、打掛の数はある。

変える必要はない、無いのだけれど。


「おふさ、おふさ。」


「何ですか、姫。」

「着物、変えた方がいいかしら。」

おふさは唐突な質問に意図が汲めず、困惑した。

「その必要はないと存じますが、、何故ですか。」


言われて思う。何故だろう。

どうして、汚れてもいない打掛を気にするのだろうか。昨日と同じはなんとなく、嫌だなと思ったのだ。

なぜ、昨日と同じではいけないのか。

それはー。

「昨日と同じではおかしくないかしら。その、、士郎は気にならないかしら。」

どうしてか、士郎が気にしないかなと思ったのだ。

昨日と同じで、気を抜いてると思われたくないとか。

汚れている訳ではないし、普通は何日も着るのだけれど、同じのを着ていて汚いと思われないかなとか。


そんなことを考えて、不安になってしまうのだ。


おふさは、少し驚いて、ふうっと溜息をついた。目を伏せて、幼子のワガママにどう対応しようかなと迷うような、やれやれといった感じで。

「そんな心配はないと思いますよ。その打掛はとても姫にお似合いですから、その姿を見てもらった方が良いでしょう。」


おふさは、士郎は着物はずっと同じが基本だし、風呂にだってろくろく入られない環境にいたのだから、姫の気にすることなど歯牙にもかけていないと分かっていた。

しかし、それを言うと姫は怒りそうー取りようによっては、事実でも士郎の悪口になるーなので、言わなかった。


姫はと言うと、打掛が似合うと言われて、嬉しくなったようだ。士郎からも同じように褒められるのではないかという期待が生まれたのだろう。

嬉しそうに、裾をばたばたと振っては朱に散る金花を見ていた。

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