27.1
どうやって、生き延びるかということだ。
おふさが言うには、生きてここを出たものはいない。
だが、俺はあいつらー子どもたちー を残して死ぬわけにはいかない。手元に置いたその日から、立派に育て上げると決めたのだから。
とはいうものの、どうすればよいのか、策がない。うまく逃げだせたとしても、警察はあっという間に捜し当てるだろう。例え、警察に捕まらなくとも、あいつらを抱えて逃げるならいずれ見つかる。
逃亡は自分の身しか守れそうにない。あいつらのために生きたいのにそれでは意味がない。
ならば、姫に俺を殺させないことしかない。
おふさの話や姫と実際に会った印象から、姫が好き好んで殺戮している訳ではないようだ。その理性を保たせればいい。色々な者を殺したそうだが、彼らとは違う何かを見つけなければならない。
それは、何だ。
分からない。分からないから探るしかない。姫が今までどの様な者を殺したか。何が彼女をそうさせるのか。
そのためには、彼女をもっと知る必要がある。もっともっと、彼女と話さなくては。
ふと、熟考を邪魔するように。小さな虫が耳元を掠めた。ぶーんと不快な音を立てながら、しつこく耳元を行き来する。
虫くらい、放っといていいのだが、こう何度も繰り返し顔に近づかれると気が散ってしまう。
ぱちん。
軽く両手で叩いた。
掌を開くとそこには何もなく、少し離れたところから、また耳元を掠めていく、黒い影。
俺には殺せないと思っていて、それを嘲笑うかのように。そうやって何度もやってくる。完全に舐めている。
ふっと息を吐いた。
瞬間、ぱんと音が響いた。
ぱたりと、黒い物が下に落ちる。自分の身に何が起きたかまだ、分かっていないのだろうか、じっとこちらを見て固まっている。
いや、よく見ると小刻みに震えている。脳震盪を起こして飛び立てないのだ。それを窓の外へ出そうと思ったが、ここには窓がない。
一瞬迷った後、ばんと、床を叩いた。平たく、動かなくなったそれを横目に、ぱんぱんと手を叩きながら布団に戻る。
すると、もういないはずの羽音が聞こえた。
気がした。
もう、あの状態から飛べるはずはないので、幻聴である。
それは、俺に考えないようにしていたことを指摘したようだった。
手で払うだけでは、問題は解決してない。それで、解決するなんて望み薄だったはずだ。
息の根を止めないと。俺は、いなくならなかったダロウ?
聴こえない声がした気がした。
そう、殺すという方法。
姫を殺してしまえば、確実に俺は姫に殺される事はない。王家を殺せば、死罪ではないかとも思うが、このままでは確実に俺は死ぬ。ならば違う方法に賭けた方が。
例えば正当防衛、姫が襲って来て仕方なく。
いや、俺が殺したとなればどんな理由があっても死罪だ。
ならば、不慮の事故はどうだろう。それは、不運にも偶然に起きて、、。
そこまで考えて、俺は哀しくなった。違う、殺したい訳ではない。誰も傷つけたくない。
でも、生きたい。俺は生きたいのだ。
ならば、どうすれば。
姫の笑顔が思い浮かんだ。無邪気な屈託のない笑い顔。人を殺したことなど無いような。
その顔を守りたいと思った事は確かだ。例え、人殺しでも、彼女の意思では無い。酷く心を傷めていると聞いた。不本意に人を殺すのは想像に辛すぎる。
第三の方法と、生きたい意思と、姫の笑顔。
ぐるぐると渦巻いて俺の脳内を混ぜる。
つと、目が熱を持ち涙が流れる。
どうすればいいのだ。俺は。




