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暁に棲む  作者: 水街 つみき
42/45

27.1

どうやって、生き延びるかということだ。


おふさが言うには、生きてここを出たものはいない。

だが、俺はあいつらー子どもたちー を残して死ぬわけにはいかない。手元に置いたその日から、立派に育て上げると決めたのだから。


とはいうものの、どうすればよいのか、策がない。うまく逃げだせたとしても、警察はあっという間に捜し当てるだろう。例え、警察に捕まらなくとも、あいつらを抱えて逃げるならいずれ見つかる。

逃亡は自分の身しか守れそうにない。あいつらのために生きたいのにそれでは意味がない。


ならば、姫に俺を殺させないことしかない。

おふさの話や姫と実際に会った印象から、姫が好き好んで殺戮している訳ではないようだ。その理性を保たせればいい。色々な者を殺したそうだが、彼らとは違う何かを見つけなければならない。

それは、何だ。

分からない。分からないから探るしかない。姫が今までどの様な者を殺したか。何が彼女をそうさせるのか。

そのためには、彼女をもっと知る必要がある。もっともっと、彼女と話さなくては。


ふと、熟考を邪魔するように。小さな虫が耳元を掠めた。ぶーんと不快な音を立てながら、しつこく耳元を行き来する。

虫くらい、放っといていいのだが、こう何度も繰り返し顔に近づかれると気が散ってしまう。

ぱちん。

軽く両手で叩いた。

掌を開くとそこには何もなく、少し離れたところから、また耳元を掠めていく、黒い影。

俺には殺せないと思っていて、それを嘲笑うかのように。そうやって何度もやってくる。完全に舐めている。


ふっと息を吐いた。

瞬間、ぱんと音が響いた。

ぱたりと、黒い物が下に落ちる。自分の身に何が起きたかまだ、分かっていないのだろうか、じっとこちらを見て固まっている。

いや、よく見ると小刻みに震えている。脳震盪を起こして飛び立てないのだ。それを窓の外へ出そうと思ったが、ここには窓がない。

一瞬迷った後、ばんと、床を叩いた。平たく、動かなくなったそれを横目に、ぱんぱんと手を叩きながら布団に戻る。


すると、もういないはずの羽音が聞こえた。

気がした。

もう、あの状態から飛べるはずはないので、幻聴である。

それは、俺に考えないようにしていたことを指摘したようだった。


手で払うだけでは、問題は解決してない。それで、解決するなんて望み薄だったはずだ。

息の根を止めないと。俺は、いなくならなかったダロウ?


聴こえない声がした気がした。


そう、殺すという方法。

姫を殺してしまえば、確実に俺は姫に殺される事はない。王家を殺せば、死罪ではないかとも思うが、このままでは確実に俺は死ぬ。ならば違う方法に賭けた方が。

例えば正当防衛、姫が襲って来て仕方なく。

いや、俺が殺したとなればどんな理由があっても死罪だ。

ならば、不慮の事故はどうだろう。それは、不運にも偶然に起きて、、。


そこまで考えて、俺は哀しくなった。違う、殺したい訳ではない。誰も傷つけたくない。

でも、生きたい。俺は生きたいのだ。


ならば、どうすれば。


姫の笑顔が思い浮かんだ。無邪気な屈託のない笑い顔。人を殺したことなど無いような。

その顔を守りたいと思った事は確かだ。例え、人殺しでも、彼女の意思では無い。酷く心を傷めていると聞いた。不本意に人を殺すのは想像に辛すぎる。


第三の方法と、生きたい意思と、姫の笑顔。

ぐるぐると渦巻いて俺の脳内を混ぜる。

つと、目が熱を持ち涙が流れる。


どうすればいいのだ。俺は。

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