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リーン リーンと鈴の音が強くなってきた。
空を見上げると、月が満ちてきている。
もうすぐ、終わりか。
毎度の事ながら辛い。そうならないように、思い出は作らないよう努めてきた。
だけどー。
暗がりの中で、女雛の様な少女は俯いている。朱塗りの格子部屋の最奥で、居ずまいを崩すことなく鎮座した様は、内に秘めたる想いにじっと耐えるかのようである。
赤の着物に飛ぶ金糸の花を握りしめ、はらと涙が零れた。
ー 月姫様。声が上ずりながらも私を呼んだ、呼んでくれたあの子。
だんだんと笑顔が増えて、私の名を呼ぶことに抵抗が無くなったあの子。
どこからか、花を持って来させて、花冠を教えてくれたあの子。
少しずつ縮めた距離の分、彼女の存在が大切なものになっていたのだ。楽しい思い出が幾つも巡る。
だけど、私はー
満月の夜に彼女を殺してしまうのだろうー。
リーン リーン。
間隔の狭まった無機質な金属音が部屋に満ちては消えていった。