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暁に棲む  作者: 水街 つみき
39/45

25

兄王と話し終え、扉を開けた。

失礼しますと声をかけたのだが、私の存在に気づいていないようだ。少し外した間に随分と仲良くなったようだ。2人は、ケラケラと笑いながらおしゃべりに夢中のようだ。


こんなことは、今まで無かった。まして、初日など少しでも二人きりにしようものなら、追いすがる目をし、私が戻ると恨めしそうな視線をくれたものだ。


だが、今は。

まるで、お互いしか見えてないように私は視界にも入っていない。


私ほど姫と近しいものは居ないのに。姫のために提案を兄王にしたのに。

存在にも気づかれないのは、凄く寂しい。

腹の底がぎゅっと捕まれ、揺さぶられる気がした。

ああ、寂しいなんてものじゃない。

切なくて、悔しさ、憤りも混じって、辛い。


「姫。戻りましたよ。」

平然と呼吸を整えて言った。言ったつもり。


はっと。慌ててこちらを見る。話し込んでしまったことの体裁が悪いのか、会話をぱたと止めた。なんでもない風を装って姫が言う。

「ありがとう。どうだった?」


「大丈夫でした。姫の初めての提案ですから。飲んでくれましたよ。」

にっこり笑って答える。


姫の顔がぱっと明るくなる。そして、

「よかった!よかったね!士郎!」

男にまっすぐ向けられた。

男も大変嬉しそうだ。

姫も飛び跳ねんばかりに身を乗り出し、二人は手を取り合い

そうになったところで、手を止めていた。


面白くないな。

姫のためと思ったが、姫はこいつのために願いを出し、私が叶えた。

つまるは、私がこいつの望みを叶えたことになる。

それでも、姫が喜ぶならと思ったが、姫自身が嬉しい事由ではない。

男が嬉しいことを間接的に姫が喜んでいるのだ。


なんだか、私のした事はひどく空しいような気がする。

本当は、姫の感情の成長を喜ばなくてはならないのに。まだ、私には出来そうもない。


しかし、と、男を見る。

いつまで、この調子でいれるのかな。この男。

死を目前にして、最期まで壊れずにいれたものはいないのだ。


そう思うと、気が楽になった。どんなにしたところで、お前は姫の側にずっと居られないし、姫の心は必ず私に戻るのだ。

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