25
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兄王と話し終え、扉を開けた。
失礼しますと声をかけたのだが、私の存在に気づいていないようだ。少し外した間に随分と仲良くなったようだ。2人は、ケラケラと笑いながらおしゃべりに夢中のようだ。
こんなことは、今まで無かった。まして、初日など少しでも二人きりにしようものなら、追いすがる目をし、私が戻ると恨めしそうな視線をくれたものだ。
だが、今は。
まるで、お互いしか見えてないように私は視界にも入っていない。
私ほど姫と近しいものは居ないのに。姫のために提案を兄王にしたのに。
存在にも気づかれないのは、凄く寂しい。
腹の底がぎゅっと捕まれ、揺さぶられる気がした。
ああ、寂しいなんてものじゃない。
切なくて、悔しさ、憤りも混じって、辛い。
「姫。戻りましたよ。」
平然と呼吸を整えて言った。言ったつもり。
はっと。慌ててこちらを見る。話し込んでしまったことの体裁が悪いのか、会話をぱたと止めた。なんでもない風を装って姫が言う。
「ありがとう。どうだった?」
「大丈夫でした。姫の初めての提案ですから。飲んでくれましたよ。」
にっこり笑って答える。
姫の顔がぱっと明るくなる。そして、
「よかった!よかったね!士郎!」
男にまっすぐ向けられた。
男も大変嬉しそうだ。
姫も飛び跳ねんばかりに身を乗り出し、二人は手を取り合い
そうになったところで、手を止めていた。
面白くないな。
姫のためと思ったが、姫はこいつのために願いを出し、私が叶えた。
つまるは、私がこいつの望みを叶えたことになる。
それでも、姫が喜ぶならと思ったが、姫自身が嬉しい事由ではない。
男が嬉しいことを間接的に姫が喜んでいるのだ。
なんだか、私のした事はひどく空しいような気がする。
本当は、姫の感情の成長を喜ばなくてはならないのに。まだ、私には出来そうもない。
しかし、と、男を見る。
いつまで、この調子でいれるのかな。この男。
死を目前にして、最期まで壊れずにいれたものはいないのだ。
そう思うと、気が楽になった。どんなにしたところで、お前は姫の側にずっと居られないし、姫の心は必ず私に戻るのだ。




