24.3
「4歳児と同じではない。では、どのようにですか?」
平然と彼は聞いてくる。
ひどい!私のことを、すごく馬鹿にしている。ここは、がつんと、かっこよく言い返してやりたい。
「確かに、口調は普段通りではなかったわ。でも、考えあってのことなのよ。」
「ほう。」
彼は、にやにやとした笑顔でこちらを見てくる。
考えあってと言ったものの、大した考えなどなかったのが事実だ。
初めて会う、同い年くらいの男の子に対して、どう話せばよいか分からなかった。とても、緊張していたのだ。こういうのは、第一印象が大切だと聞く。
だから、少しでも威厳を保とうと、ああいう口調になった。
けれど、これでは、当初の目論見は全くの無駄になったようだ。しかも、なんだか馬鹿にされているようだし、威厳どころか、下に、見られてる?
「それで、理由とは?」
「体裁を保つためよ!あなたみたいなのになめられないように!」
なんだか、考えるのも馬鹿らしくなったので、正直に吐き出した。
すると、
ははははっと大きな笑い声がした。お腹を押さえて彼が笑っている。ひいひい言って、声が出ないらしい。
笑って欲しいとは思った。
けれど、これは何か違う気がする。
ひとしきり笑終えて、彼が言った。
「そんなに正直に言ってくれるとは思わなかったよ。あー、姫様、面白いね。ははっ。
そうだよ、堅苦しいのは止めよう。これから長い付き合いになるんだし。
この部屋では、歳の近い、友人として気軽に話しません?」
あっけらかんと彼が言った。
威厳とか、罪人と王家とか、そんなのどうでもよくて、ただ、話を心から楽しむ。
簡単だけれど、私の、そして彼の境遇 ー 捕食者と生贄 ー では著しく困難だったこと。
私がずっと憧れていたこと。
高いと見上げていた壁の上から、ふいに彼はやって来て、手を差し伸べ、壁に登らせてくれる。
彼に引っ張られながら、案外壁は高くなくて、私でも登れたのだと教えてくれる。
彼は、私の「困難」を「簡単」に変えてくれる。
「なんだか、その台詞は私が提案すべきだった気がするけど。いいわ。その方がずっと楽しいものね。
よろしくお願いします。」
最後に、士郎と呼んでみたかったけれどそれは、まだ高い壁に思えてそっと飲み込んだ。




