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暁に棲む  作者: 水街 つみき
38/45

24.3

「4歳児と同じではない。では、どのようにですか?」

平然と彼は聞いてくる。

ひどい!私のことを、すごく馬鹿にしている。ここは、がつんと、かっこよく言い返してやりたい。


「確かに、口調は普段通りではなかったわ。でも、考えあってのことなのよ。」

「ほう。」


彼は、にやにやとした笑顔でこちらを見てくる。

考えあってと言ったものの、大した考えなどなかったのが事実だ。

初めて会う、同い年くらいの男の子に対して、どう話せばよいか分からなかった。とても、緊張していたのだ。こういうのは、第一印象が大切だと聞く。

だから、少しでも威厳を保とうと、ああいう口調になった。

けれど、これでは、当初の目論見は全くの無駄になったようだ。しかも、なんだか馬鹿にされているようだし、威厳どころか、下に、見られてる?


「それで、理由とは?」

「体裁を保つためよ!あなたみたいなのになめられないように!」

なんだか、考えるのも馬鹿らしくなったので、正直に吐き出した。


すると、

ははははっと大きな笑い声がした。お腹を押さえて彼が笑っている。ひいひい言って、声が出ないらしい。


笑って欲しいとは思った。

けれど、これは何か違う気がする。


ひとしきり笑終えて、彼が言った。

「そんなに正直に言ってくれるとは思わなかったよ。あー、姫様、面白いね。ははっ。

そうだよ、堅苦しいのは止めよう。これから長い付き合いになるんだし。

この部屋では、歳の近い、友人として気軽に話しません?」


あっけらかんと彼が言った。


威厳とか、罪人と王家とか、そんなのどうでもよくて、ただ、話を心から楽しむ。

簡単だけれど、私の、そして彼の境遇 ー 捕食者と生贄 ー では著しく困難だったこと。


私がずっと憧れていたこと。


高いと見上げていた壁の上から、ふいに彼はやって来て、手を差し伸べ、壁に登らせてくれる。

彼に引っ張られながら、案外壁は高くなくて、私でも登れたのだと教えてくれる。


彼は、私の「困難」を「簡単」に変えてくれる。


「なんだか、その台詞は私が提案すべきだった気がするけど。いいわ。その方がずっと楽しいものね。

よろしくお願いします。」


最後に、士郎と呼んでみたかったけれどそれは、まだ高い壁に思えてそっと飲み込んだ。

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