35/45
24
*
私の提案を伝えに行く。と、おふさは部屋を出て行ってしまった。
部屋には、話したとはいえ、まだ出会ったばかりの男がいるだけ。
途端に緊張してしまう。どうしよう。何を話せばいいのか。
押し黙ってしまった、私を見かねてか、彼は優しく言った。
「姫様のお着物は大変、綺麗ですね。赤地に金の花、蓮の花でしょうか。咲き誇っていて、目を奪われます。町にいてもこのような着物は見たことがないです。」
褒められた。
姫といえども、檻の中に暮らしているようなものなので、あまり褒められたことがない。
また、贄としてくる者は、私の機嫌を取れば生きられるのではないかと、褒めてくる者もいるが、ほとんどが罵倒である。
今から、殺してくる相手のことを素直に褒めることは難しいだろう。そんな気持ちが起きることが不思議だ。我が命に関わる事態の中で、呑気なお世辞を言える者などそうそういない。
やはり、彼は特異なのだろう。
色々と思うところはあるが、お気に入りの打掛を褒めてもらえたことは嬉しかった。
「ありがとう。」
口から、言葉が滑り出た。




