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今まで、色々な贄をこの部屋に連れて来た。
死ぬことへの恐怖から、震えるもの、怒るもの、嘆くもの様々だった。
部屋に入った時は、綺麗な部屋に愛らしい幼い姫が一人だけの光景に、拍子抜けする者も多くいた。
そこで、緊張が解かれ、死ぬことを忘れたように過ごす者もいた。
いや、忘れてはいなかったかも知れない。目の前の事態から目を背けているだけだったのやも知れない。
今は亡きものたちの声は聞こえないのでなんとも言えないが。
そんな中で、今回の男は気骨のある様子だ。
先の見えない不安に潰されることなく、抗って、今を生きようとしている。
そんな彼だから、早い投入なのか。
いや、偶然だろう。兄王がそこまで姫を思いやったりはしない。
せいぜい、今まで連れて来た贄と年代や性別をずらしている。ただ、それだけだろう。
姫は、兄はもちろん、王からも、まともな愛情は受けていない。
そんな中で、1番側にいて、愛してやれるのは私、ふさだけである。
初めてここに来た時は10だったので、そこまでのことは考えなかったが、親兄弟からの愛情を受けていない様は、自分と重なった。
私がしてほしかったことを、この子にはしてあげたい。
いや、ただ、純粋に縋ってくる幼子を可愛いと思っただけかも知れない。
始まりはどうであれ、彼女と過ごした10年余は深いものである。そこで生まれたものは誰にも負けないと思う。
だから、誰よりも彼女を愛している自負があり、幸せになって欲しいと思う。
贄を殺すたびに、仕方がないとはいえ傷つく彼女をなんとかして救いたいと思う。
幸いにも、贄は兄王の趣向で、様々なものが連れてこられる。もしかしたら、殺戮衝動を終わらせる方法があるかも知れない。
今度こそは、彼女が傷つかないように。
そう、願わずにはいられなかった。




