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姫というからには、何となく、自分よりもずっと年上で綺麗なお姉さんを想像していた。
歳を聞いて、実際に目の前にして、そうか、いきなり大きくなる訳ではないのだから年下の姫もいるよなと納得した。
彼女は綺麗な女性と言うには早く、まだあどけなさが残る可愛らしい妹といった印象だった。
豪奢な着物がかえってその幼さを助長しているようで、奥に座る様は可愛らしい雛人形である。
そんな彼女が、口を開いたら、大人というよりどこかのおじさん大臣の様な口をきくのだ。
その、ちぐはぐな感じがとてもおかしく、笑いそうになった。慌てて俯く。
王家たるもの、この様な口調なのかと思いきや、時折口調に戸惑いが出ている。
幼い子が、無理に大人ぶって体裁を保っている、正にそれだった。
きっと、外から来た客人に威厳を表そうとしているのだろうが、これではかえって親しみがわいてしまう。
この口調をどうにかして崩したいと思った。その時、彼女はどんな顔をするのか。俺は、少し意地が悪いだろうか。けれど、そのやり取りはさぞかし面白いだろう。
王の一族とはいえ、やはり同じ人間。年相応なところもあり、可愛らしさもあるのだな、そう感心した。
彼女は俺に罪状を促した。
罪、と言われても実のところは濡れ衣だ。
言われた罪を話してもいいが、それでは俺が今までしてきたことを否定することになる。
また、あいつらも命令されたという体だが、罪を犯していたということになる。
そんな話をするのは、たとえ身が危うくなろうと許せないと思った。
どうせ、囚われの身、この先、どれだけ生かされるか分からない。
ならば、今の一瞬一瞬を後悔なく生きたい。
それに、仮にあと2日の命だとして、日々を憂いて生きるよりは楽しく生きたほうが、同じ結果でも違うと思う。
だから、正直に気持ちを伝えた。後悔したくないと思ったからだ。
すると、彼女は笑い、俺の考えを受け入れた。
王家の立場だから否定される可能性が高かった。
王への反対意見を述べているととられ、憤られる可能性もあった。
しかし、全ての不安を打ち消して彼女は笑った。
とても、楽しそうに。
それは、今まで作って話していた姿が崩れた瞬間でもあった。
そんな風に笑えるのか。まるで、広い空の下町を駆け回る子たちと何ら変わりない、屈託の無い笑顔だった。
もっと、笑ってほしい。
この、王宮の檻の中で、不自由に潰された感情を子どもらしく出してほしい。
そんな、俺が守ってきた子どもたちに対するような情を彼女に感じた。
これから、彼女と過ごす時が多いのだという。
ならば、俺は ー 彼女にたくさん笑ってほしい。
そう目標を立てた。




