17.3
罪を言えと言ったら、男は惑っている。
この人は無罪に近いのだろうと思う。与えられた罪はあるものの、身に覚えがないため、どう話すべきか考えあぐねているのだ。
少し、視線が宙を泳いだあと、意を決したのか視線が定まり、こちらをら向いた。
「私は、孤児を然るべき施設にも入れずに、集めて物盗りをさせていたということで連れて来られました。しかし、私には身に覚えのないことです。」
言い淀む輩はたくさんいたが、はっきりと否定する者は初めてだった。
いくら、無実でも、王の命令で連れて来られている。何らかの策略が働いていることは、はっきりしている。ならば、真実を言うことが必ず正解ではない。
ましてや、孤立無援の王宮で、王の意見に反する者など ー たとえ、王が間違っていても ー
いなかった。いるはずがなかった。
彼はよほど肝が座っているのか、それとも思慮が足りない阿呆なのか。
見極めてみたくなった。
「ほう。では、私に王への弁明を求めてでもいるのか?」
無実を訴えるには、有罪を取り消して欲しいと王に伝えなくてはならず、姫に訴えるのが早いと思われた。
だから、彼もそう言っているのかと思った。
「違います。」
きっぱりと彼が言った。初夏に駆ける涼風のような爽やかな声だった。
「王に訴えようなど思ってません。しかしながら、私は謂れのない罪を抱えているのも事実です。
だから、私はただ、罪のないことを知って欲しいと月姫様に申し上げました。
囚われた時から、危うい身です。今さら、恐れなどしません。
それならいっそ、堂々としていたいと思うのです。」
そう、宣言した彼は清々しい顔をしていた。
なかなか、変わった面白いことを言う男だと感心した。




