17.2
「はっ。」
短く言って、男は頭を下げた。
全くもって、固い空気である。
「よい。こちらへ来い、そして、お前の罪状を説明せよ。」
とりあえず、先ほどの口調を崩せないまま続ける。
罪と言う言葉に怪訝な表情をした。恐らくは無実なのだろう。身分の無い者は時として、為政者の犠牲となる。
父、いや、箱庭の出来事なので兄か。今回の兄の思惑はまだわからないが、若い男が標的だったのだろう。
私の殺戮がどう変化するか、私の為という名目のただの実験で、様々な者が標的となった。
老若男女、辛かったのは幼子が連れて来られたことだ。
食べ物を盗んだとかそんなのだったが、幼子を死罪にする理由にはならない。
今、私がこの男を迎えるということは、実験は成功していないのだ。
何度か、事の記憶を無くしていて良かったと思った。自分を慕っていた幼子を無惨に殺すことなど、意識があっては心が耐えられない。
私がどのような者なら殺戮をしないのか、殺戮をせずに満月を越えられるかが、最大の目的である。
ならば、大した罪など無い、特に幼子には、私が殺戮の兆候を見せた時点で結果は分かってるのだから助けてやって欲しかった。
手にかけるお前が悪いと言われればそれまでだが。
私の部屋には天井などに、忍びが見張っている。なので、その者たちが手を加えることは造作も無いことなのだ。
現に、私を脅かそうとした罪人は天井からの刀で殺された。
しかし、兄は罪人としてここに入れた者を赦しはしなかった。実験を続けたいという思いもあるのだろうが、秘密を守るためが大きい。
国王の姫は殺戮を行い、それに国ぐるみで人をあてがっているなど、最大の機密事項である。
故に、この部屋の実情は、忍び数名とおふさ、そして一部の大臣以上しか知らない。
片付けは、おふさが一人で行う。忍びは見張っていないといけないからだ。
血の海など、大変だろう。落としても落としても消えない。
そんな、おふさは、この職に就くのに、相当厄介な試験を超えたらしい。
守秘力を計られたそうだ。そんな精鋭のみしか扱えない事案であり、
守りたい秘密。
作られた砂の箱庭はいつか、崩れるだろうと思う。




