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リーン リーンと鈴の音が響く。温かみのある音ではなく、寒空に、より静けさを際立たせる、甲高い冷たい音だ。
もっとも、鈴の音に温かみや冷たさなど感情がこもっている筈はない。受取手の気持ち次第だろう。そう、私がこの音を忌々しく思うが故のこと。酷く冷たい音の輪が耳を劈いている。
少女はだだっ広い板間の一番奥、一段高い畳の上に鎮座している。梁一つ見ても、質素ながら造りは手の込んだものであり、細かい文様や丁寧な塗りが目に入る。
しかし、この場は異様に暗く、冷たい。窓を見やれば朱塗りの格子が二重に組まれている。前方にある襖は唯一の出入り口であるが、内からは開かない。ただの襖に見えるそれは、外から見れば鉄の扉であり、内側に襖を張り合わせて部屋の体裁を保っている。そして、外から鍵をかけられているのだ。
だからどんなに取り繕っても敵わない。
この場が彼女にとっての牢である事実に。
少女は女雛のような姿をしている。格好ではなく、姿と形容するのは、表情なく虚ろな瞳をしているからだ。赤の打掛には金の桜の刺繍が施されている。また、黄金の冠、は月光を反射している。その豪奢な姿がひとりぼっちで物悲しい女雛の様を際立たせている。