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不条理の修復者  作者: 麿枝 信助
第二章 舞い咲く恋慕は蝶の如く
37/67

幕間 『陽乃と輝樹の反省日誌 その3』


『四月十六日』


 

 はぁ……。

 

 溜め息つくの、今日これで何回目なんだ…。

 

 高校一年生に進学してから早十日。見事に孤立してるんだがなんで…?

 

 いやね、最初の数日はまだ良かったよ?なんか雰囲気出せてたような気がするし?今の結果もまぁそのオーラ?的なモノが関係してるなら納得はいくんだが……

 

 結論から言おう。ぶっちゃけこれから不安でしかない。

 

 まず、新しい環境で孤立しているこの状況自体良くないよな。何が辛いかって、情報の共有が出来ないこと。宿題だったり連絡事項だったり、まず自分がそういう事を先生から聞き逃すことはそうないだろうが、万が一のための保険がないのはキツイな…。

 

 いや、別に?友達が出来ないから焦ってるとか微塵もないから。ありえねーから。

 

 ちょっと寂しいなーとか思ってないし。

 

 孤高に一匹狼っぽく、かっこよくこのまま学校生活を過ごすのもいいけどな…カッコいいとは、思うけどさ……。

 

 それって今の生活とか、気持ちのままずーっと三年間過ごすって事だよな…

 

 それは、イヤ…だな……。

 

 でもどうやって今更友達作るんだよってのはあるんだよなぁ。この身なり?かわからんけど何でか避けられてるような気がしてならないんだよなぁ……流石にそれくらいはもう気づくって。

 

 やっぱ、俺に金髪って向いてないのかなぁ…ここまで誰からも褒められないってなると、やっぱり自信なくなっちまうよなぁ……

 

 良いにせよ悪いにせよ、もう少し具体性のある反応が欲しい所だよな。

 

 今までの友達からじゃ意味がない。やっぱり新しい同じ環境にいる高校の生徒からじゃないと……価値観も、だいぶ違うだろうし。

 

 んー、あと今日あったことと言えば……あ、そういえば今日の昼休みに見つけた自販機の場所、あそこ絶対穴場だよな。校舎からちょっと離れた倉庫の裏?みたいな所にあったんだけど。

 

 人気もないし、丁度いいベンチもあるしちょっと気を休めるには丁度いい場所だよな、うん。

 

 ちょっと人目を気にしてブラックコーヒーにするか迷ったけど、この時くらい甘えていちごミルクにしてもいいよな、って事でひっさしぶりに缶のいちごミルク買ったわ。

 

 学校で飲んだからなのか、凹んでる時に飲んだからなのかやたら美味かったんだよなぁ、アレ。また飲んでみるかぁ。


……何とか今日の出来事ひねり出した結果、いちごミルク美味しかったですって…どんだけ何もない日常生きてんだよ俺……。悲しくなってきたなぁ……。 

 

 …最近疲れやすくなってきてるみたいだし、割とストレス溜まってんのかなぁ……俺。

 

 ………明日は誰かとちゃんと話せるといいなぁ。

 

 

 

 

 〇〇〇

 

 

 

 

 『四月十六日』

 

 

 …ふふ。

 

 ふふ、ふふふっ。

 

 あー、ダメだにやにやが止まりません!

 

 ついに、ついに……私、友達(?)ができちゃいました!!

 

 いえええい!ヤバい、人生の中で指折りでテンション高いです今。

 

 さっきから心臓の鼓動がうるさいくらい昂ぶってます。アドレナリンドバドバ状態。

 

 えっとね、数学の授業終わりなんだけど、先生にちょっとつまづいたトコ聞いてたら『私も一緒に聞いて良いですか?』って来てくれたの!

 

 やっぱり同じトコ引っかかりやすいよね、って!

 

 先生から聞き終えた後も二人で教室まで話しながら歩いて帰っちゃって!ちゃんと普通に話せてたかな!?緊張で変な声とか顔とかになってなかったかな!?

 

 あ、名前は月ヶ谷美紋ちゃん!すっっごく可愛いの!!普通にドラマの女優さんにいてもおかしくないレベル!

 

 そんな人と肩を並べて歩いたのはちょっと窮屈だったけど、そんなのは瑣末な事です!

 

 すごくすごく楽しかったし何より安心しました…!初めて…高校で初めての友達だよ!!

 

 ……ふぅ、落ち着こ落ち着こ。今だいぶ頰が緩んでだらしない顔になっちゃってるし。書き殴ってるから字も汚いし。

 

 友達って言っても、まだ一回話しただけだし。

 

 …でも、でもでも一回話したって事は絶対もう一回話しやすくなるよね!挨拶も出来るようになるし!

 

 何より数学のクラスの席近いし!ほんっと同じクラスでよかったぁ…。

 

 数学の授業は他クラス合同で結構大きいクラスだから、その場にいる全員が同じクラスじゃないんだよね。

 

 どうしよどうしよ、これから一緒に数学の復習とか出来るのかな?他の事もたくさんお話し出来るようになるのかな……!?

 

 そこからもっともっと、沢山友達出来るかなぁ……!

 

 うわぁ、うわぁあダメだー!にやにやしちゃうー!こんな顔他の人に絶対見せられないよー!

 

 ……ふぅ。これも私の悪い癖なのかな。一回盛り上がっちゃうと歯止めが効かなくなっちゃうタイプ。熱が冷めるまで割りかし早い方だとは思うけどね。

 

 しっかりしなくてはいけませんよ、陽乃。アナタはもう高校生なのです。

 

 いつまでも子供気分ではいられません。特に、高校生からはぐっと大人に近づく時期って聞きますし。

 

 オトナ、かぁ。全然実感ないなぁ。

 

 小学生とか中学生の時とか、高校生や大学生、大人の人達ってすっごくカッコよくて遠い存在に見えたけど、思えばあっという間で、もう今がその高校生なんだよね。

 

 これからも一緒で、あっという間に大学生や大人に気づいたらなってるものなのかなぁ……。

 

 どんな事してるのかなぁ、大人になった私は……。

 

 もう少し大人っぽくなってみたいなぁ……。

 

 そうそう、大人っぽいと言えば月ヶ谷さんはすっごくクールで大人っぽかったなぁ…!あれだけ美人さんなのにカッコいいとかちょっとずるいよね。

 

 そういえば、何で月ヶ谷さんは学級委員に推薦なり立候補なりしないんだろ?あれだけ出来そうで似合うのに……。

 

 一限目の学活の時間で、学級委員が誰か決まれば良かったのに…またあの、誰かやらないの〜、みたいな雰囲気になるのやだなぁ……。


 個人的には委員会には入っても良かったけど、無難なのは全部もう埋まっちゃってたんだよね。本好きだし、図書委員とかちょっと興味あったけどハイ、ご存知手をあげる勇気がありませんでした。

 

 でもやっぱり、今までの自分を変えたいってなるとまずは環境から変えるのが常套手段ってのは良く耳にします。

 

 どこかの委員会に入るのは実はいいきっかけになったのかもしれないけど、時すでに遅し、だよね。

 

 ……学級委員?ないないない!!

 

 そんなの、今の私から一番遠い存在じゃないですか!

 

 やるにしても流石にいきなりそれはハードル高すぎるし、何より私より向いてる人他にいっぱいいると思うし。

 

 今日はもう、友達が出来たってだけで十分かなぁ…。

 

 そう、ここ数日でずっと欲しかったものが手に入ったのです!

 

 たった一人、出来ただけでこんなに世界が変わるなんて。

 

 明日から、いっぱい色んな事話せたらいいなぁ。



ガチャリ。


ドアの開く、音がした。

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