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不条理の修復者  作者: 麿枝 信助
第二章 舞い咲く恋慕は蝶の如く
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幕間 『陽乃と輝樹の反省日誌 その1』


 『四月六日 入学式』



 暖かな春の日差しと空気に身を包まれる。ぽかぽかと心地よい風が髪と心を躍らせる。


 そう、今日から私は高校生なのです。


 ざっと今日の流れを確認してみるけど、そんな大したことはやらないらしい。入学式と、簡単なオリエンテーションだけ。


 教科書だけ先に配られるから、持ち帰る人は何かしら入れるモノを持ってくるといいと紙に書いてあったけどそれも大丈夫。


 三回ほど今日のシュミレーションをしてから、行ってきます!と言って元気よく玄関を出ました。


 ……高校生、かぁ。


 未だにちょっぴり信じられない。時が経つのは思ってたより早いものでした。


 今までオトナな存在で、雲の上だと思ってた高校生に今自分がなっている実感が未だに湧きません。


 電車の中で新しい制服姿の自分を見て、『雲陰くもかげ陽乃ひの』と刺繍がされた制服の内側を見て、にへ、と頬がつい緩んでしまう私なのでした。




 駅から十分ほど歩いて、ようやく校舎に着いた気がします。


 最近造られたってだけあって結構豪華で大きい!装飾だったり雰囲気だったり、やっぱり中学の時見た印象とはまた違ったものを感じました。


 そして着いた教室。廊下に案内表示があったので割とすんなりと着けました。(迷わなくてよかったぁ…)


 駅から学校までは周りの生徒達の後にくっついていれば良かったけど、この時ばかりは皆クラスは別々だし、そうはいかなかったから少し心配でした。


 私の出席番号は十一番。席はなんと一番前の真ん中らへんでした。……つらみ。


 私が着いたのが八時少し前。集合が八時半なのでまだ時間に余裕はありました。ちょっと早く来すぎたかな、と思ってもクラスに人はちらほらいたのでそうでもなかったようでした。


 …私に他のクラスメートに話しかける勇気なんてこれっぽっちもなく、その三十分はスマホ見てるか今日の事や今後について考えてました。


 いやだって!ムリムリムリ!話しかけられたら話すけどそんな人初日にまずいないし!


 同じ中学の子もいるらしいけどクラス違うし、そもそもあんま知らない子だったし…


 何人かはグループがもうあって、そこに集まって喋ってました。


 そんなこんなで、新しい教室の空気に一人わたわたしてる間に八時半になってたと思います。ビシッとした、ちょっと怖そうな眼鏡の先生が入ってきてすぐ出席取ってました。


 私も普通に返事したけど、人によってその返事の仕方でどんな人か分かるから面白いよね。私の前の番号の人…確か、なんとかライト?君はオイッスって言ってた。ライトって珍しい名前だよね。


 あとオイッスって…絶対チャラい人だよね、うん。気を付けよう……。顔は割とかっこよかったけどね。


 あ、そうそう。入学式の日なのにギリギリ遅刻してくる人もいた!名前は…忘れちゃったけど。髪ぼっさぼさだったのだけ覚えてる。


 入学式初日で遅刻とか…ちょっとないよね。こういう大事な日こそ、三十分は早く来るよう見積もらないとね。


 そして、つつがなく入学式を終え、クラスに戻る私。


 思ったよりスムーズに進んで、あれ?こんなもん?って思ました。


 校長の話が少し…いや、普通に長かったけどそれもまた一興なのかなと、この身体のだるさに無理やり理由をつけてみたり。


 少し先生が来るのに何故か時間がかかったような気がするけど、その先生を見てそんな事はどこかへ吹き飛んでしまいました!


 そう、滅茶苦茶綺麗だったの!入学式でも挨拶してたけど、やっぱり近くで見るとホントに綺麗。


 しかも雰囲気いい先生で、すぐに仲良くなれそうな感じだった。名前は百合菊愛海先生。


 私も将来、あんな感じになれたらなぁ…ってちょっと思ってしまった。ちょっと、難しそうだけど。




 その後、帰宅。


 思ったよりあっさりしてました。まぁ、初日はこんなもんかぁ。


 帰る途中、入学式に来てくれたお母さんとちょっと遅いお昼ご飯を食べました。予定より一時間も遅れていたらしいんだけど、そんな経ってたっけ?


 連絡するのも遅くなっちゃって、お母さんも時間潰してる間若干不安にさせちゃったっぽい。きっと新しいことで無意識に緊張しちゃってたのかもね。


 お母さんと、お昼ご飯食べながら色んな事を話しました。これからの事とか、新しい高校についてとか、……やっぱり聞かれるお友達の事とか。


 友達は……そうですね。意外と、出来ませんですよ。そんな簡単にはいきませんですよ。ってか初日で出来るかっての!


 友達出来た?って聞かれて出来た場合はいいけど、出来なかった場合はまるで自分コミュ障ですねって間接的に連想しちゃうから実はその質問自体あんまり好きじゃないんだよね…


 ざっと見た感じ、クラスの子の第一印象は割と皆普通でいい人そうな人ばかりでした。いい人そう……って、信じたい。


 あ、そうそう、出席番号一番の人!滅茶苦茶カッコよかった…!すっごい清潔感あって爽やかなのに日焼けしててワイルド味も出ててなんかすごかった…


 入学式の時、新入生代表って前に出て話してたし!ああいういかにも王子様系の人、高嶺の花って感じだよねぇ…あんまり男の人にはこの表現使わないけど。


 やっぱりついつい目がいっちゃうよね。周りの女の子もそわそわしてた気がする。


 でも、私にとって一番印象に残ったのはそのイケメン君じゃなかった。


 一目見たとき、ビックリしちゃって数秒その人から目が離せなかったもん。あ、褐色のイケメン君もそうなってたんだけど、彼とは別の意味でね。


 ……ウチのクラスにもいたんですよ。マジのヤンキーが!


 ウチの学校偏差値もそれなりに高いし、いないよねって高をくくっていたけど、いちゃいました…しかも私のクラスに!


 髪はちょっと長めでギンギラの金髪!ピアスもしててうひゃあ…って感じ。


 なるべく関わりたくないよね…ああいう見た目の人って…


 あ、でも実は、そのヤンキー君、私より早く来てたんだよね。意外な事にね。


 悪い姿勢で足組んでヘッドフォンしててずーっとスマホいじってたけど。こわ。


 これからの高校生活、ちょっと心配だけど…いい友達、できるといいなぁ。


 頑張れ!ファイトだ明日からの私!


 楽しい高校生活になるかは、自分次第なんだから!


 …少しはイメチェンとか、した方がよかったかなぁとか、最後に思ってみたりする陽乃でした。




 ○○○




 『四月六日』


 パネェ。


 パネェよ。


 今日から日記を語学の為に付けようと思ったんだけど、今日はもうなんか色々ヤバかった…!


 …まずね。身が持たない。


 いやいやいや、聞いてませんから。え、てかなんなの?皆高校生になったらイメチェンするんじゃないの?


 そもそも金髪に染めてるの俺だけってどういう事だよ!友達の話だと皆髪染めまくってて最低五人は何かしら染めてるヤツいるってそれ嘘じゃん!茶髪は二人くらいいた気がするけど、緑とか赤とかが普通だって話だったじゃん!


 まだ金は無難な方だったって言ってたじゃん!!


 悪友に『イメチェンしてみたい』なんて、そんな相談をしたら乗せられて、髪を金髪にしてしまった。それが始まりだった事を知らなかった俺こと、保井輝樹なのだった。


 確かにイメチェンしてかっこよくなって、今までとは違う世界を見て見たいとは思っていた。


 そしてどうせやるなら、と髪型を変えるだけではなく色まで変えるという暴挙を冒してしまった自分。


 本当の間違いとは、やらかした後から初めてそれが間違いだ、と気づくらしいと誰かが言っていた気がする。


 髪を染める高校デビューが悪い方向に走っているのでは?と疑問を持ったのはクラスの面々を見てから。それが確信に変わったのは、その夜友達に問いただしてからだった。


 彼奴曰く、『俺の高校では』らしい。


 ヤツと俺の高校では偏差値に大きな差がある事は既知ではあったものの、どれも皆同じようなもんだろうと高をくくっていたのが自分の責だった。


 思えば、中学の卒業式の辺りから奴の作戦は始まっていたと見える。それっぽい雑誌を見せ、お?これカッコいいのでは?というイメージを持たせる。加えて高校見学の時の話題を持ち出すことで信憑性を上げ、それが見事俺を変える最大の要因と成っていた。


 完全にハメられた……


 しかしこうなっては仕方がない。


 明日から黒髪に戻す訳にもいかないし、しばらくはこの髪型でやっていくしかなさそうだった。


 ……とはいえ。


 そう、鏡を改めて見て見る。…………意外と、悪くないのでは?


 むしろいい感じなのでは?別に似合ってないとかではなく、むしろ前より似合ってる節もよくよく見て見たらあるかもしれないぞ俺。


 最初はただ自分の新たな容姿に慣れておらず、戸惑っていただけで案外第一印象としては寧ろ前よりはいいのではないか?


 雑誌の通りにしてくださいと美容師に頼み、流行りのロックバンドをおニューのヘッドフォンから音量大きめで垂れ流す。


 …うん、なんかカッコいい臭いがする。


 今まで出来なかった事とか、なんか出来るかもしれないぞ!


 …そう思うと、何だか結果オーライな気がする!よし、明日から高校生活頑張るぞ俺!



 ※自分の知らない領域ほど、憧れを抱いて余計な先入観を持ちやすくなってしまうものだと輝樹君は気づいてません。彼の中で美化されつつあるその像は世間一般ではヤンキーと呼称するのですが、いまいちその概念自体をまだ掴めていない輝樹君は一人勝手に思い上がり、突き進んでいくのでした。



~自己紹介シート~

『雲陰 陽乃』

Q:好きな食べ物は?

A:クレープ…かなぁ。チョコ&ストロベリーは王道だけど一番美味しいよね。


Q:趣味は?

A:読書とラジオ聞く事。恋愛小説と推理小説が最近のトレンドなの。


Q:得意科目は?

A:数学。条件を当てはめて解答するのはパズルみたいで面白くない?


Q:好きなタイプとかある?

A:えっそれ聞くの?んー…、恋愛的にタイプかどうかは分からないけど、自分の気持ちに正直な人とか、そういう私に出来ない事が出来る人、すごいなぁって思う。


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