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不条理の修復者  作者: 麿枝 信助
第二章 舞い咲く恋慕は蝶の如く
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4 隠匿された事後の結末 Ⅰ



 「……ん」


 ゆっくりと、目を開けた。視界に広がるのは知らない天井。


 「……あれ、俺…は」


 ぼやける世界を、瞬きを繰り返す事により鮮明にしていく。


 あの怪物を見た後、自分はこのベッドに運ばれたらしい。病室に似た造りなのか、部屋には他にも簡易なベッドが並んでおり、特殊な機器のようなモノもちらほら見える。


 …この身体のだるさから鑑みて、どうやら今まで自分は寝ていたようだ、と燎平はぼんやりと意識同様にこの状況を把握する。


 「…ッ!起きてる!大丈夫!?」


 ふと、声の方に視線を向ける。そこには、窓ガラスを割って校舎に入ってきた、あの女性の姿があった。


 「佐倉燎平君…だよね?大丈夫?気分は…どこか、悪いところはない?」


 「はぁ…はい」


 何となしに、質問に答える。若干身体が重いが、それは疲労から来るものだろうと燎平は口にしなかった。実際、何の問題もないように彼は感じていた。


 「…ッ!はぁ……ッ、良かったぁ……」


 目の前の女性は心の底から安心したのか、一気に身体から力が抜けていた。


 巫女服のような、所々露出が見える、かなり際どい服を纏った彼女はその豊満な胸を撫で下ろしながら、言葉を続ける。


 「私は愛海。百合菊愛海って言います。ええと…この場合、どう言えばいいかな。今はアミュールだけど、立場的には先生というか……」


 いきなりわたわたとし始める彼女。赤紫色の髪を後ろで二つに結った愛海と名乗った女性が慌てふためいているのを見たせいか、それで少し落ち着いた。


 「燎平!」


 声と共に、ガラッと扉が開く。その甲高い声の主は、燎平がよく知るポニーテールの少女だった。


 「大丈夫なの!?ずっと起きなくて心配したんだから!」


 彼女に前のめりに顔を覗き込まれ、多少ドギマギしてしまう燎平。大丈夫だよ、とぎこちなく返すと愛海と同じく、肩の力が一気に抜ける美紋であった。


 「…なんか、心配かけたみたいだな。悪い、美紋」


 「そうよ!燎平だけ起きるの遅いんだもん!心配にもなるわよ!」


 未だに若干の緊張を残す彼女の表情に、燎平はありがとな、という事でそれを取り除く。


 「……あー、ええと、イチャイチャしてるトコ悪いんだけども、ちょっと来てくれるかな?燎平君」


 ヒロインの登場で完全に空気と化したアミュールがおずおずと切り出す。途端、イチャイチャしてません!と全力で美紋が否定に入るのにちょっとばかり心に新たな傷が出来る燎平であった。


 「ええ、それはいいですけど……愛海…さん?は一体…」


 「先生よ、先生。私たちの担任」


 「へぇ、先生だったのか。担任………え、担任!?」


 美紋からの答えに思わず声を荒げてしまう。だってこんな…こんな破廉恥な格好をした人が先生だと!と、今の学校の教師の採用制度に疑問が生じる燎平。


 「そうそう、今日ホームルーム行けなかったけど私、一年三組の担任なの。宜しくね、燎平君」


 ベッドに座る燎平目線までかがんで合わせ、にこっと微笑むアミュール。その仕草にドキッとした下心を誤魔化そうと、燎平は何とかしどろもどろになりながらも返事をする。


 「あ、よ、よろしくお願いします……」


 とびきり美人の先生の笑顔に、間違いなく赤面していた。そんな燎平の態度を見た、アミュールの横にいる美紋の目が少し細くなっている事を彼は知らない。


 「…ああ成程、だから俺の名前知ってたのか…」


 いきなり知らない人に自分のフルネームを呼ばれた、最初に時感じた違和感の正体がようやく分かった。そして寝起きと目が合った先程で、計二回自分に迫った肌色の谷間。


 「うん。あれは…いいモノだった……」


 おっぱい万歳。寧ろ、彼女の双丘を拝めたからこそ回復したのかも知れないまである。嗚呼哀しきかな、何とも男という生物は単純であった。


 「…なにうんうん頷いてるのよ」


 ふと、目の前の少女が映る。先程の表情とはうって変わり、いささか温度が下がっている眼差しに燎平は肩をすくめた。


 「………大丈夫、美紋。まだ高校生だからチャンスあるって」


 「……何の話?」


 いえ何でも、と貧しい彼女のそれらを憐みの目で見てしまう燎平。口に出したりなんかしたら、せっかく今起きたというのにもう一度床に着かなくてはならなくなってしまう。


 と、その時、再び新たな人影が燎平の顔を覗きに来た。


 「おっ、調子はどうだい?少年。おぉ、アミュが運んできたより良くなってるな。その顔色、六十三点ってトコか」


 着ている白衣から察するに、この人も先生っぽいなと燎平は思った。茶に染まった前髪を左右に分け、額には赤渕の丸眼鏡が乗っている。白衣の中に来ている黄緑色のニットのトップスの上には、『梅雨川つゆかわさち』というネームプレートがあった。


 「起きて早々、見た目麗しい女の子二人に囲まれて幸せ者だねぇ君は。おっ、私も入れると三人かな?」


 少し低めのトーンではっはっはと笑う白衣の女性。そして彼女の視線を捉えた瞬間、ゾッとするような、何か奇妙な感覚に襲われた。


 「どう?サーちゃん。彼の様子」


 「んー……うんにゃ、視た感じ(・・・・)、特に異常はないみたいだぞ、アミュ。良かったな、少年よ」


 「え、何が……?」


 彼の語彙力ではうまく形容できないが、何かを見られているという感覚が確かにあった。言うなれば、自分から出る気配…の、ようなモノが捉えられているとでも言うのか。


 アミュールたちからすれば、その気配は『異元エナーク』と呼ばれるモノであった。燎平も『裏側ミラ』にいる以上、自分の『異元エナーク』くらいは何となく分かるらしい。


 燎平がそれに気づかず、違和感に眉根を寄せているとアミュールが彼女の事を紹介してくれた。


 「サーちゃん…ああ、この人は梅雨川幸って言うんだけどね。そうだね、所謂お医者さんみたいな感じかな」


 「どもー、お医者さん兼保健室の先生やってまーす。幸って言いまーす。サーちゃんでもサッちんでも、メス犬でも肉便器でも、好きなように呼びたまえよ少年」


 突然発せられる過激なワードに思わずえっと驚きを声に出してしまう燎平と美紋。一方その隣の真面目な方の先生は、笑みを浮かべながらも額に青筋を立てていた。


 「……あの、一応貴女も先生なんだけど?サーちゃん…」


 「おっ、怖い怖い。いつから冗談が分からなくなっちまったんだアミュ?それに保健室の先生ってそういう事だろ?」


 「どういう事だよ!?つかどっからそんな教育に悪い事を持ってきた!?」


 「まぁ、つまり私は下ネタ枠という事だよ少年。おっ、いいね驚いたその表情、七十六点だな」


 驚いているというか、呆気に取られているというか。燎平と美紋が二人の会話についていけずにいると、幸の方から爆弾が投下された。


 「そういやさっき彼女の方が元気よく少年に駆け寄っていたけど…君達付き合ってるの?もうヤった?貫通済み?」


 「ッ!?」


 ぼふん!という擬音が美紋の顔から聞こえてきそうだった。あまりの衝撃に否定するのも忘れて絶句してしまう。ピカピカの高校生になんて事聞くんだこの人は、と燎平も頬を赤らめつつ俯いた。


 「……………サーチス。弁えて」


 突如、アミュールの方から並々ならぬ『異元エナーク』が溢れ出る。幸はおっ、と若干青ざめた後、即座に謝罪した。


 「悪かった、悪かったよアミュ。今のはやりすぎた。自覚はある。二十点だ。それにこんな状況だ、私も妙にテンション上がってたんだよ。それ、抑えて抑えて。分かるだろ?私には視える(・・・)んだから。目に悪い」


 そう言い、幸は愛海をなだめながら額に乗っていた赤渕の眼鏡をかける。一方アミュールは、軽い溜息と共に彼女の扱いに対して額を指で押さえていた。


 「あの…梅雨川先生?さっきから視える…って、何がです?」


 確か私も視てもらったような…と美紋が後に付け足しながら、彼女に問う。


 「ん?あぁ、私のコレのことか?……アミュ、説明頼んだ」


 「そうやって貴女はまた……はぁ。えっと、彼女の目はちょっと普通じゃなくてね。『異眼エイ』って言って、君たちの症状を見れる能力を持った特異な目……なんだけど、分かんないよね。んー、そうだなぁ……あ」


 そう彼女が言葉を選んでいると、再度ドアの向こうから声が聞こえた。


 「……アミュさん、そろそろ」


 「翔璃君ごめんごめん、今行くから!」


 おそらく先輩であろう少年が部屋の向こうにスッと現れた。どうやら、自分たちの事を呼びに来たらしい…と思った際、ふと疑問が燎平の中で生じる。


 「あ!来飛!それに暁と……他の生徒たちはどうなったんだ!」


 今まで無意識のうちに気づいてはいたのだが、中々聞くタイミングが掴めなかった。覚醒し、ようやくこの空気に馴染んできたからこそ、ずっと心に残っていたわだかまりを吐き出す燎平。


 「安心して、来飛君と暁君はこっちにいるから」


 兎に角、ついてきてねとアミュールは催促する。その一言を聞いて、込み上がった緊張が一気に緩んだ燎平だった。


 病室のような部屋を出て、アミュールの後ろをついていく一行。廊下に出て、彼は気づく。


 燎平がいた病室や廊下もそうだが、全体的にこの造りは質素と言わざるを得ない。必要最低限のみの電力に、設備。


 雰囲気からして、割と最近造られた事は予想できるが、現代っ子の燎平からすれば何か物足りない感は否めなかった。こと廊下に至っては装飾も何も一切ない。灰色の壁に、天井や床にLEDが点々としているのみである。


 そんな殺風景の中、一番燎平と置かれている状況が似ている美紋に歩きながら状況を簡単に説明してもらう。


 「私も最初驚いたけど、ここは学校の地下にある施設らしいのよ。生徒会室から直接繋がってるみたいで…」


 「えっ、地下!?」


 地下と言われて妙に納得がいってしまった。成程、地中であれば設備を充実させるのも困難になるというもの。


 「そう。それもかなり深いところらしいよ。って言っても、私たちもついさっき起きたからあんまり知らないんだけど……今、この先の会議室?みたいな所に皆集まってるの。その皆っていうのは先生や生徒会の人たちなんだけど……あ、ちなみにあの人も生徒会の人なんだって」


 美紋が視線を投げる先には、先程呼びに来てくれた少年。


 男にしては長い髪を持ち、その色と同じ灰色をした双眸。特殊な柄のマフラーで口元は隠れており、服も灰色や白を基調とたものとなっている。


 そして目を奪われたのが、今の季節ではやや暑そうなロングコートの中にある武器。薄い紫色の鎌と槍はその持ち手の部分が鎖で繋がれており、それらの光沢や質感はそれらが偽物でない事を悟らせる。


 「…なぁ、あの人ホントに大丈夫なのか?あんなの持ってるしちょっと怖いんだけど……」


 「こら、失礼でしょいきなりそんな事言って……多分、大丈夫な人なんだろうけど…」


 二人でひそひそと話していると、少し後ろを歩いていた筈の彼が、いつの間にか燎平と美紋のすぐそばまで来ていた。


 「………二人とも、気分は大丈夫か」


 「うわっ!」


 いきなり知らない声が聞こえ、思わず声を上げてしまう燎平と美紋。その反応にに翔璃も驚いたのか、少しびくっと身を震わせて一歩下がる。


 「す、すまない……驚かせる気は、なかったんだ……」


 「い、いえ。あの…大丈夫です」


 ぼそぼそと話し、目を伏せる彼に対し何とか言葉を拾い、返す美紋。一方燎平と言えば、驚きすぎてバックンバックン鳴る胸を押える事が精いっぱいで何も言えないでいた。


 「はっはー、いい加減君もその態度、何とかならないかね?それだとこの先大変だろうぜ?霧の少年よ」


 「……善処します」


 幸が翔璃をからかっていると、前方にいるアミュールが割って入る。


 「いいのよ翔璃君、真に受けなくて。貴方は貴方のままで、無理して自分を変えようとしなくていいんだから……って、言ってるけどぶっちゃけそれが正解かも分からないのよね、私。だからあくまでそれは私の意見として頭に置いといてね。翔璃君がどうするかは、貴方自身が決めたことが貴方にとっての正解になるんだから」


 「…はい。ありがとうございます」


 そんなやり取りをただ燎平は聞いてる事しかできなかったが、横にいる美紋はカッコいい…と、前を歩いているアミュールに対して目を輝かせていた。


 「よし、着いた。ここが会議室よ、燎平君」


 あの病室から少し歩いた所に、その札が書かれた部屋はあった。アミュールがその扉の前に行くと、無音で扉が横にスライドする。


 「皆、起きた燎平君連れてきたよー」


 「し、失礼しまぁす…」


 燎平がアミュールに続き、おずおずと部屋に入る。すると、やけにハリのいい声が燎平の耳に刺さった。


 「おーっ!やぁっと来たか!新人の最後の一人!えっと名前は…佐倉燎平君?で、いいんだよね?」


 見ると、大きな机の一番奥に桃色の髪をした少女が椅子から立ち上がっていた。


 瞳と同じ桃色に染まったその前髪には白い花のヘアピンが二つ止まっており、頭の右側には大きな花のアクセサリーが乗っかっている。髪の後ろは横の髪同様に三つ編みになっていて、彼女もアミュールと同じくこれまた若干目のやりどころに困る露出度の服を着ていた。


 そして、見渡すと大きなガラスのような長机の横側には麦わら帽子を被った少年と、何故か制服を着た薫が座っており、その近くにはよく見知った暁と来飛の姿もあった。


 無事だった彼らに声をかける暇もなく、奥にいる桃色の少女は燎平に問いかける。


 「さーて最初のクイズだよ、燎平君。かくいうこの私は一体誰でしょうか?」


 「え…?」


 会った事もない人に私は誰でしょうとか言われても分かるワケないでしょうが!と内心突っ込みを入れつつも数秒思案してみる燎平。


 よくよく見れば、どこかで見た気がしないでもない彼であったが、残念ながら彼の解答を彼女は待ってはくれなかった。


 「ぶーっ!時間切れでーす!え、てか、そんなに私って認知度ない感じなの?それはそれでショックなんだけど!あんなに印象に残りやすいスピーチしたのに!」


 むくーと頬を膨らませる彼女。スピーチという単語が聞こえ、脳内検索をかけたところ目の前の少女の姿に似た人物がヒットした。


 「あ…もしかして、生徒会長……?」


 そう燎平がつぶやいた瞬間、その少女の顔がパアッと明るくなる。


 「そう!その一言を待ってました私!私こそが生徒会長こと、藤萩花蓮です!よろしくね!」


 花蓮が自己紹介を終えると、部屋の奥から燎平のほうまで駆け寄ってくる。その間、彼は髪の色も服も違ってしかも一回しか見たことないのに一発で分かるかよ!と内心愚痴っていたが、それも花蓮が燎平の手を取った事で遮られた。


 「え?」


 「はい、握手!これから長い付き合いになるかもだからね!」


 生徒会長は笑顔でそう言うと、燎平の意図はお構いなしにぶんぶんと手を振る。それにしてもこの少女、さっきまでは遠かったため分からなかったが、近くで見ると中々に整った顔立ちをしている。笑顔の花蓮の破壊力は、燎平の心拍数を上げるのには十分であった。


 「……花蓮、そこまでにしておけ。彼も戸惑っている」


 「え、やぁん翔璃君嫉妬しちゃってる?ごめんごめん!」


 「…………」


 元々仏頂面だった翔璃の顔が明らかに不機嫌な表情になる。それに燎平は同情したのか、何か似たものを感じたのか、何故か彼との距離が縮まった気がした。


 「まぁまぁ、気にしなくていいよぉ燎平君。会長はいつもこんな感じだけど、今はなんか特にテンション高いみたいだからねぇ」


 麦わら帽を被った少年が話しかけてくる。誰かを問う前に、彼自ら話してくれた。


 「あぁ、俺は会長みたいに意地悪しないよぉ?俺は才蜂芯一って言うんだ。生徒会では書記やってるよぉ」


 よろしくねぇ、と朗らかな雰囲気の芯一は燎平に向かって手を振る。どうも、と燎平も一応会釈だけ返し、アミュールに促されて適当な空いている席に座った。


 「はーい!じゃあこれで全員揃ったね!それではこれより、『修復者リセッター』の新入生に向けたオリエンテーションを開催しまーす!わー!」


 「いえええええい!!」


 会長の掛け声と共に、パチパチパチパチ!と謎の喝采と拍手が会議室に鳴り響く。主に声の主は女性陣で、生徒会の男性陣はもうこのノリに慣れているのか、何とも言えない表情で拍手だけしていた。燎平達も雰囲気に流されて、拍手だけをする。


 「はい、じゃあまずは改めて自己紹介をば!私は生徒会長兼、今の第二期天峰(そらみね)支部『修復者(リセッター)』のリーダーでもあります、三年生の藤萩花蓮です!はい次翔璃君!」


 「え、……は、初めまして。錐村きりむら翔璃です……同じく三年の生徒会副会長です」


 「んー、声が小さい!もう一回!…って言いたいけど時間ないから次!」


 「はいはーい!次は薫ね!そこの二人は会ってるから知ってると思うけど、夜葉やば薫です!二年生で生徒会書記!あ、そうそう薫ファンクラブ会員には次回ライブの時に豪華特典がつくの!さらに今なら会場チケット優先で回してあげr」


 「はーい薫ちゃんそれ長くなるからまた後でねー。次!芯一君!」


 「まぁそうなるよねぇ……あ、どもぉ。今さっきも燎平君に言ったけど才蜂芯一でぇす。職業は生徒会会計だよぉ。あ、特に言う事ないから次お願い会長」


 「宜しい、じゃあ最後アミュっち!」


 「へ?…あ、そうよね。私もやるのよねこれ…おほん。えー、こっちではアミュールです。学校の先生の時は百合菊愛海って名前でやってます。基本、この姿ではアミュールで通してるから、普通にアミュールって呼んでね……まぁ、あの二人みたいに変でなければ愛称なんかつけても構わない、ですよ?」


 よっ、アミュっち!アミュっち~!と花蓮と薫から謎の黄色い声援が送られる。そう呼ばれてまんざらでもなさそうな彼女を見て、あ…なんかつけて欲しいんだな…と新入生四人は察した。


 「えーと、あと先生方がもう少しいたんだけど……ってあれ?サッちんは?」


 「サーちゃんはマーズさんに呼ばれてたから今いないの。ちょっとしたら戻ってくるって言ってたけど……」


 花蓮の問いにアミュールが答える。そっかぁ、じゃあまた後でだね~と会長は呟いた。


 「じゃあ次は貴方たちの番ね!はい、端の君からどうぞ!」


 ビシッ、と指を来飛に向ける花蓮。今、燎平達は花蓮達から見て右から来飛、暁、燎平、美紋の順に座っていた。


 「俺か!えー、苗字は黒澤、名は来飛!好きなものは食う事とサッカーッス!オナシャス!彼女募集中!」


 「…あ、あぁはい、僕ですね。隣の来飛君と同じく、一年三組の暁暁です。名の暁は、苗字と同じ字の暁と書いてさとしと読みます。宜しくお願いします」


 「…お、おっ、俺か。あーっと、えー、さ、佐倉燎平です。…あ、一年三組ッス。あ……、えー、あっ、好きな事は寝る事ッス。あ、……えー、あ、よ、よろしくお願いします…」


 「……同じく一年三組の月ヶ谷(つきがや)美紋です。好きな事は空手と書道です。宜しくお願いします」


 一人一人、終わった後に拍手が鳴る。何やら美紋の自己紹介が終わった直後、花蓮が難しい顔でぶつぶつと呟いていたが、それは数瞬の間だった。


 「よっし、皆ありがとね!そして改めて宜しく。…じゃあ自己紹介もお互いに済んだ事だし、そろそろ本題に入りますか!」


 パン!と手を合わせ、花蓮は話を切り替える。その音が合図だったのか、会議室の空気が少し変わった気がした。今までの明るいテンションの彼女とはうって変わり、真剣な顔つきと声になる。


 「そうだね…まずは、やっぱりこれかな。うん、これから始めるべきだろうね……私たち、『修復者リセッター』について」


 

花蓮「やーっと全員一か所に揃う事が出来たわね!遂に!」

薫「今まではずっと離れ離れだったからねぇ~」

芯一「やはりというか、なんというか。安心感がすごいなぁ。帰ってきたぁって感じする」

翔璃「……確かにな」

花蓮「実家のような安心感が売りの生徒会であります!」

薫「今回新しいメンバーも増えそうだしね!ますます盛り上がっちまうぜ!」

芯一「…目を付けてる二人、まともな人そうで良かったねぇ錐村先輩」

翔璃「良かった…、うん、本当に良かった……」

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