一章終了までの用語集
※本編でも言及はしたため、目を通して頂かなくても本編を楽しんでもらう際には支障はない仕様にはなっております。
ただ、確認されたい方や、もっと『異跡』、『異怪』を知りたい…あるいは、そもそもなんだっけそれ?ってなった方は、参考までにササッと目を通して頂くだけでも充実するかと思います。
本編をお楽しみいただく際に、少しでもこの用語集が貴方様の助力となってくれれば幸いです。
麿枝 信助
~用語集一覧~
☆これだけ覚えていればオッケー!基本編
・『異素』
→『異なる元素』。
『異素』が含まれる空間にいると肌に纏わりつくような、ぬるっとしたような感触に顔をしかめる事となる。
・『異元』
→『異能の元』。魔力やエネルギー源といった概念。
持つ者の『異元』により、周囲の『異素』が影響される。器の大きさのようなものでもあり、その大きさには個人差がある。
しかし訓練すればその器を大きくする事も可能であり、『異元』が大きい程強大な存在と成りうる。
・『異跡』
→『異能の軌跡』。魔術や妖術といった概念。
空気中の『異素』を取り込み、身体の中の『異元』と組み合わせる事により行使することが出来る。その跡は個人によって異なり、原則として一人一つである。
・『異元展開』
→『異元』を自身の精神体に纏わせた状態。
これにより身体強化が施され、超人的な肉体を得た事と同義となる。
精神体であるため筋肉等、身体を縛る制限がそもそもなく、加えて腕力、体力、耐久力が軒並み高く向上する。
どの部分にどれだけの『異元』を展開するかによって強度も異なり、また人によって強度の適正が異なる。
例えば脚を強化するのに適性がある人の場合、『異元展開』をし、ジャンプするだけでビル数階分の距離を跳ぶことも出来る。
また、身体強化の副産物かある程度痛覚から来る痛みを軽減することも可能。
・『異怪』
→『異世界から来た怪』。
『異怪』によってランクが異なり、Ⅰ~Ⅻまである。
ランクの後に、『α』等の文字がある種は何かしら特殊な性能を持っている事を意味する。非常に稀。それらは『文字持ち』と呼ばれる。
一概に『異怪』と言えど様々な種族や階級があり、芯一が召喚する『厄虫類』もその一種である。
・『異元感知』
→名の通り、『異元』を感知するスキル。
どのくらいの『異元』強さなのか、『異跡』の攻撃のタイミングなどを感じ取ることが可能。
また、感知できるのは『異元』に限らず、物体の材質から建物の構造まで実際に目にしなくても把握できる。用途は様々。
『異元感知』は大きく『感知』、そして『解析』の二種類に分けられる。どちらが得手なのかは人それぞれ。
基本的に感知の次のステージが解析だが、最初から解析の方が得意という者も少なからずいる。
『異元感知』は戦闘の際の要と言っても過言ではなく、相手の『異跡』、『異元』をいかに感知、解析するかによって戦局が大きく変わる。
同じく『異怪』にも『異元感知』は習得でき、ランクが高い『異怪』ほど『異元感知』を持つ傾向にある。
習熟度を上げる事によってアドバンテージはより大きくなる。感知や解析の速度、種類の幅も増す。
・『裏側』
→世界にできる異空間。昔からポツポツと出現している。神隠しの一種とも。
出現するとその中からは色彩が徐々に失われていき、モノクロの建物や風景だけの世界となる。
空気中には大量の『異素』が含まれており、その中には『異元』を持つモノ、いわば精神体でしか存在することが出来ない。なので一般人は存在できない。
『裏側』が出来る原因は『異怪』が迷い込んだ人間を喰らうときに発生するか、自然に出来るか、何者かが意図的に発生させるかの三通りがある。
仮に戦いなどで傷がついたとしても、大抵のモノは『なかった事』にされ、世界によって矯正される。
・『元の世界』
→そのまんま、現実世界。『裏側』とよく比較され、対照的に捉えられる。
・『迷走者』
→『裏側』に迷い込んでしまった人間の総称。その大半が各々、不条理に対する憤りや悩みを抱えている。その原因は『異怪』によるケースもある。
一度『裏側』に迷い込んでしまった人間は異常なまでに気持ちが沈み、著しいネガティブ思考となり一時的に身動きが取れなくなる。
特徴として全身真っ白い幽霊のような身体になり、細部はぼやけたり透けたりする。
・『新芽』
→『裏側』に迷い込んだ人間の中で、元々『異元』を持っている稀有な存在の総称。『迷走者』のように気分が激しく落ち込むことはない。
燎平達や祓間は正しく『新芽』。原則として、まだ『異元展開』や『異跡』が使えない、初心者のような者の事を言う。
☆登場した『異跡』解説!編
・『異跡』の種類
主に、豊富な種類を持つ『異跡』は五つに分類される。割合が多い順に、『生成型』、『召喚型』、『結界型』、『改変型』、そして『特殊型』だ。生成型が七割を占め、一割ずつが『召喚型』、『結界型』。その他が『改変・特殊型』に分けられる。
現象の元となる『異跡』の方が比較的出来る事が多く、また伸びしろも大きい傾向がある。
→『生成型』…ほとんどの『異跡』がこの型。シンプルで扱いやすく、『異跡』のスタンダート。
自分の『異元』から『異跡』を直接『生成』する。一から自分で生成するので、他と比べるとどちらかと言えば総じて燃費は良くない方。悪くはないが、良くもない。
中でも四大元素と呼ばれる火、水、風、土の『異跡』が最も多い。どんな『異跡』を使っていようと『召喚型』、『結界型』以外はまずは『生成型』を疑う。
→『召喚型』…全体の約一割がこの型。『召喚型』の『異跡』を使う者は『召喚士』と呼ばれる。
自信の『異元』を糧に、主に『異怪』を召喚し使役する。召喚士の『異元』が強大になればなる程、呼び出せる『異怪』のランクが上がる。
呼び出せ慣れていなかったり、特別に気性が荒い『異怪』を使役する時には御するためにより多くの『異元』が必要になる。
『召喚型』は極めて分かりやすく、『異跡』を使ったら一発で判明する。しかしその召喚する『異怪』の系統により対策を変えなければならないため応用性が求められる。
燃費は使役する『異怪』に依るところが大きい。勿論呼び出す高ランクの『異怪』や希少な種類等は多く『異元』を使う。
基本呼び出しに応じた時点で、召喚分の駄賃(召喚者の『異元』)を貰っているため、ブーストなどしない限りは召喚後、『異元』を消費する心配はない。
また、一度に大量の『異怪』を召喚する事も可能で、『多重召喚』と呼ばれる。群れごと召喚する場合はいくらか燃費が良くなるそうだ。
→『結界型』…『召喚型』に同じく、全体の約一割がこの型。『結界型』の『異跡』を使う者は『結界士』と呼ばれる。
空間を自分の『異元』に影響された『異素』で満たす事により、一時的にその空間を『自分のもの』として扱う事が出来る『異跡』。
例外的に結界士は『異元』を初めから複数持ち、それらを組み合わせる比率や濃度から生じる微妙な変化に元づき、作り出す結界の効果を変える事が出来る。
中には攻撃用、防御用、移動用の結界等種類は様々。結界士が持つ『異元』の豊富さによって作り出せる結界の種類は異なる。
通常、結界は構造が複雑なため即席で作るものではなく、予め幾つか結界のパターンを事前に用意するのが定石である。結界を作るのと使うのとでは違うという事だ。
即席で作ろうものならよほどの腕がない限り暴発し、効果も期待できない上にもれなく自分の『異元』を想定以上持っていかれる。
だが戦闘時には予めパターン化して決めてある結界を発動させるだけで良いので、コスパは『異跡』の種類の中でもダントツにいい。
ただ、自分の結界を準備、作成、実用に持っていくまでたった一つの組み合わせでもかなり時間がかかり、人によっては大変。中には数年かけて数個しかパターンがない結界士もいる。
また、発動時には自分の『異元』で染められる範囲の空間内でしか発動できないため、範囲指定の枷がある。
才能や、いかに自分のパターンを持つかで大きく差が開く『異跡』。
→『改変型』…希少なためあまり広く知られていない型。ある物事を『異元』を用いて改変する『異跡』。
改変するものは人それぞれ。そも、改変するものが決まっている者と決まっていない者で二分される。
決まっている者は決まってない者と比べて燃費はいいが一パターンなため汎用性が薄い。
決まっていない者はその逆で、改変するものによって使用する『異元』の量が異なる。
だが元々形あるものを捻じ曲げるので、普通の『異跡』と比べて総合的に燃費は悪い。
→『特殊型』…前述した四つのどれにも属さない、稀有な特性を持った『異跡』の型。
『改変型』も元は『特殊型』の一つとして分類されていた。
・薫の『異跡』~生成型・波~
『音』ではなく、『波』。音の媒体、その根幹の一つとされるモノ。
用は可能であることの範囲の問題で、『音』の『異跡』ではできないことが『波』の『異跡』で出来るという事になる。
『音』が『波』の部分集合、『音』の完全上位互換が『波』だと言い換えてもいい。
例えば、『音』の『異跡』ではただ音自体を作る事しかできないが、『波』の『異跡』だと音を作れるのは勿論、人には聞こえない超音波だって自在に創造し、操る事ができる。
無論、違いは可聴域の範囲内であるか否かと言っても差し支えはない。最も、何も『音』だけが『波』ではない。
『光』も『波』の一種だとされている。要は波長の問題であり、ガンマ線の波長からマイクロ波の波長まで薫は送受信することが可能である。
つまり、薫ができることは非常に多岐に渡る。
→『音』の側面での波。
彼女はあらゆる『音』を出すことができ、相手の忌み嫌うような音から見方を不安や緊張から和らげる音、興奮させたり鼓舞するような音まで。
さらには音を用いて相手の脳に干渉、幻聴を聞かせ操る事ができる。デバフやバフをかけると言えばより伝わりやすいか。
→『光』の側面での波。薫の場合、『対象者が見ている視界の一部を誤認させる』という点で相手の視覚にまで手を伸ばすことができる。
網膜に届く光をコントロール、つまり像を結ぶ焦点を変更し(相手が見ている自分の位置をずらすとも言う)、自分の幻影を相手に見せることも可能である。
→最後に『波』本来の能力。これが最も薫が使用している能力であり、薫の『異跡』たらしめてるもの。
薫が『異怪』に使っていた、電子レンジのマイクロ波はあらゆる分子を激しく振動させ、多量の熱をもたらし、破壊する。
怪物たちが華麗に爆散し、面白オブジェに成り果てたのは電子レンジに生卵を入れた時と似たような現象。
また、日常生活で『波』が使われているものとして例に挙がるであろう、魚雷探知機のような事も彼女は行使できる。
つまりはレーダー。敵の位置、死角からの攻撃すらもを自らが発するマイクロ波によって感知し、未然にかわす事が出来る。
さらにレーダーということは、当然通信機の役割も果たせる。
受信機という端末を用いなくても、薫は受信者の脳内に直接メッセージを独自の波長で送信することができる。
まだある。彼女の『異跡』を使えば見ただけで対象の構造、または身体の状態を把握できる。
これは現代社会において誰もが一回は受けたことがあるであろう、俗に言う『レントゲン』や『CTスキャン』という奴である。
それらも用いているのはX線という一種の波であり、薫の能力の範囲内だ。
因みに燎平達と出会った際に、彼女が指を鳴らしたのはその音をX線に変換しCTスキャンをするためだった。彼女なりの健康診断というわけだ。
そして、薫最大最強の武器が『放射能』。
薫が出せる放射能の量は少量ではあるが、普通の放射能とは異なり、自らの『異元』を練り込むことにより効果は数段跳ね上がっている。
…実のところ、通常ならば戦闘時の短い時間の中で放射能の被ばく効果が出る事は少ない。
そも、被ばくの影響は少なくとも即効で現れるモノではなく、数日や数週間、あるいは戦後数十年してから突発的に症状が現れるという事もある。
だが、薫の場合は別である。相手の体内に直接送り込まれた彼女が操る高濃度な放射線は、即座に体内で放射性物質(放射線を発する物質)を生成。
外側から放射線を浴びさせ被ばくする外部被ばくと、体内に送り込んだ放射性物質から放射線を浴び被ばくする内部被ばく、その両方を同時に行う。
言うなれば外、中からの同時攻撃。外に爆弾を設置するだけでは飽き足らず、身体の中にも爆弾を仕込んで身体の内外を同時に爆破し続けているようなもの。
加えて体外に漏れる放射線も彼女の能力で再び内側へ鏡に反射するように戻されるよう設定されている。
結果、対象は連鎖的かつ爆発的に、DNAや細胞を破壊する大量の殺人光線という猛毒を体の内外からネズミ式で浴びる事となるのだ。
但し強力なのは間違いないが、消費する『異元』が著しい、狙いを定めにくい、比較的長時間発し続けていないと効果が出にくい、等のデメリットはある。
いきなり全員の『異怪』に放射能を用いて手を出さなかったのはそのため。加えて、当時は背後には燎平と来飛がいたため容易には使えなかった。
総じて、薫の『異跡』で出来る事は非常に多い。
しかし、その分それらを戦闘中は必要に応じて同時に行わねばならず、相当な体力と集中力を要する。
一つ一つの『異跡』に用いる『異元』はそうでもないが、持続時間、量を含めるとやはり多いと言える。また、俊敏性、防御面には欠けるのでそこも課題。
あ、でも言い忘れていたが勿論薫の攻撃は全部『音速』。やっぱり攻撃に全部ステータス振り分けてる。
やられる前に殺ればいいじゃん!とは本人の弁。……お、恐ろしい子…!
○『音速必滅波』
→薫の通常攻撃その一。
音速のマイクロ波で脳をレンチンする。相手は死ぬ。コスパもいい。
最初に燎平と来飛を襲った蛇型の『異怪』然り、大量の『異怪』をこの一撃で屠った。
○『薫レーダー』
→薫がマイクロ波を用いて常に展開している攻撃探知機。
制度は抜群に良い。察知も早く、正確。でも避けられるかは薫次第。
最高にロックでしょ!と満面の笑みで薫は言う。
作中では、広場での戦いの際、『異怪』の攻撃を避けたり数を把握するのに用いた。
○『共鳴調律』
→薫の通常攻撃その二。『死』の恐怖を拡大し、共鳴させるもの。
『音速必滅波』で一匹殺した死のショックを、同種の皆さんにおすそ分けをする。いわば波という媒体を用いたショック死を共有させる一種の洗脳。
基本ランクが低い『異怪』用。だが一回の『共鳴調律』でえげつない量の『異怪』があの世行きのチケットを手にする。
また効果範囲も『音が聞こえる範囲まで』と、かなり広い。音が聞こえた瞬間死ぬとか、雑魚の『異怪』にとってはこれ以上ない不条理な一撃。
可愛そうなことに目玉型の『異怪』は尊い犠牲となったのだ……。
○『地獄門の施錠音』
→メジャーな薫の持ち歌。これで獲得したファンは数知れないが、残念な事にそのファン全員がもうご臨終なされている。
広場での戦いで、大半の『異怪』がこの曲を聴いてる間に黄泉へと還った。
○『超高濃度放射線集中投射』
→かおるんとっておきの必殺技その一。放射線ぶっぱする。相手は死ぬ。
数分もしないうちに大量の薫特性放射能で内蔵ぶっ壊す。普通は絶対に助からない。こわい。
その威力は、この『異跡』の餌食となったネコ型の『異怪』が一番よく知ってるだろう。
○『大圧迫破壊声』
→かおるんとっておきの必殺技その二。ただの大声。恥ずかしいので滅多に使わない。
圧倒的なまでの『異元』を乗せた声で相手を吹き飛ばし、周囲のモノを破壊する。
効果は前方をメインに周囲全体に及ぶため、薫の他に味方が近くにいない事が基本の発動条件。
……いきなりこれ使われたオベルガイアもびっくりしたんじゃないかな。
ちなみに薫のネーミングセンスは割と壊滅的。かなり適当、安易につけるため、その名前が他の事に関連する事はまずない。
……ないったらない。
・芯一の『異跡』~召喚型・厄虫類~
『厄虫類』という種類の『異怪』を召喚する。
『厄虫類』の召喚を『厄虫召喚』と呼称する。
芯一の厄虫類に関しては、後述する『異怪』まるわかり辞典其之一を参照。
一般的な召喚士は自分が使役する『異怪』を使い捨ての道具として認識するのが定石だが、芯一に関してはその認識がやや甘い。
戦闘時以外でも『厄虫類』を呼び出してよく一緒に遊んだり何か話したりする。
・翔璃の『異跡』~改変型・霧~
改変型と呼称される、稀有な型の『異跡』の持ち主。翔璃は自らの身体を霧に改変する事が出来る。
まず、その霧は優れた『異元感知』を持っていなと見つける事すらできない。霧にする自らの体積が小さければ小さい程感知されにくく、奇襲の成功率は上がる。
また彼の場合、自分の武器も『異元』を流し込む事により、自身の身体の一部とみなし、霧に改変することが可能。
翔璃の基本戦闘スタイルは暗殺。
『異元感知』される前に、霧で相手を覆う事により水分子レベルの精密さで動きを止め、相手の急所を一突きで沈める。
彼の身体の一部である水分子の粒一つ一つが意思を以って対象に圧力をかけるため、一度捕縛されたら力のみで拘束を解く事はほぼ不可能
そして彼の『異元』の最大の長所の一つとも言えるのが、防御無視。
大気に漂う水分子、その大きさは滅茶苦茶小さい。なのでその物体が『何かを通過できない』ことは極めて少ない。
つまり、物体を構成するほぼ全ての組織より小さいそれは大抵のものであれば容易に通過できる。
どんなに硬い盾鎧だろうが何だろうが、霧の水分子が通れる隙間さえあれば、その組織をかいくぐり貫通することが可能なのだ。
見えない霧に自分の武器を忍ばせ、どんなに守りを固めようとそれを嘲笑うかの如く無効化し確実に息の根を止める事が出来る、それが翔璃の『異跡』だ。
ただ奇襲にはめっぽう強いが、戦闘が長引いたり『異跡』の相性が致命的に悪いとその限りではなくなってしまう。
自分の身体を霧にする、というのは自分の身体の体積を増やす、という事。言い換えれば、自分から的を大きくしているようなモノだ。
さらに言ってしまえば、広範囲攻撃の『異跡』は彼の弱点。特に火系統の『異跡』の相性は最悪。
下手をすれば、水分子である自分の身体を蒸発させられ、組織ごと持ってかれるという事態もあり得る。そんな事故は滅多にないが、なくはないという点では考えさせられざるを得ない。
○『錯乱霧』
→本来は、特定の場所でごく稀に発生するか、特定の『異怪』にしか作り出すことの出来ない霧。
翔璃は、少量ではあるがその霧を独自で作り出せることが出来る。
その効果は大きく、自分の『異元』を霧を通して相手に干渉させることで対象の『異元』を乱れさせるというもの。
『異元』を乱れさせるというのは、『異元』の生成を阻害するという事。
つまり、人であれば一定時間『異跡』を使用できなくさせ、『異怪』であれば『異元』は存在の源であるため、それを乱れさせられれば激しい混乱状態、最悪死ぬこともある非常に危険な霧である。
作中では、一時的にオベルガイアの動きを止め、花蓮による『異跡』の準備の隙を作った。
・花蓮の『異跡』~特殊型・促~
植物そのものを『生成』するのではなく、植物の生長を『促』す『異跡』。
自分の『異元』を植物が摂取しやすいエネルギーに変換、装填する事が主なため、『生成型』ではなく『特殊型』に分類される。
花蓮単体では効果はなく、『異跡』を行使するには周囲に、あるいは事前に用意してある『災害種子』と呼ばれる植物の種が必要となる。
その育てる『災害種子』の種類によって消費される『異元』は異なる。また、一度使った『災害種子』は基本使い捨て。
そして、込める『異元』によって大きさ、性質、強度、成長の速さどれも自由自在なのがこの『異跡』の特徴の一つ。
だが、総じて彼女の『異元』は『災害種子』の育成のみに当てられるので、コスパはいい。
加えて状況に応じ育てる『災害種子』を使い分けて対処できるため応用力は生徒会随一。
毒、酸、束縛、打撃、串刺し、丸飲み、果ては回復までなんでもござれ。
花蓮は『災害種子』の『育成場』を持ち、育成、種の増量、さらに品種改良まで独自にやってのけているため、今もなお彼女の『災害種子』の種類は更新され続けている。
~花蓮の『災害種子』図鑑~
○『絡縛蔦』
→最初に不審者を縛りあげた、植物を生む『災害種子』。
『異元』を込めれば込めるほど際限なく成長し、拘束力も増す。
建物や城を丸ごと侵食しているモノもちらほらあるという。
○『刺突苗樹』
→十メートルもの距離を、一瞬で詰める事の出来る槍を生む『災害種子』。
その長さ、強度、大きさは込める『異元』によって変わる。
コスパもよく、使い勝手もいいため花蓮のお気に入りの一つ。
不審者には『異怪』の壁であと一歩届かなかった。
○『噴苗林』
→地面から噴出する竹槍のような植物を内包する『災害種子』。
地雷のように、そこに何かが通った際に成長するようにもセットできる。
その威力はランクⅣの、ネコ科の『異怪』の棟梁格をも即死させた。
『異怪』の集団相手に使う事が多い。
○『噴苗林・促成』
→『噴苗林』の『災害種子』をさらに育成させたもの。
地面に生えた竹槍が今度はその茎から新たな槍が幾つも生える。
それが連鎖的に繰り返されるので最大限に成長させればそこらの空間が大小異なる竹槍で埋め尽くされる事となる。
『促成』というのは、花蓮が追加で『異元』を与え、成長させたという意。
『促成』を行うと『災害種子』はより強力になり、効果、耐久、攻撃力もろもろが軒並み向上する。
作中では数多の『異怪』を串刺しにし、空中に縫い付けた。
○『四刃裂葉』
→地面から出る、五メートルは優に超える巨大な四枚の葉の剣を生み出す『災害種子』。
特徴的なのはその大きさと成長速度で、他の『災害種子』と比べ少しの『異元』ですぐに成長するため、トラップや不意打ち等にも有効。
二対の刃が交差するように対象に襲い掛かる。花蓮はこれをオベルガイアの動きを止めるのに作中で用いた。
○『刺毒混根』
→対象に毒を注入するためだけにあるような植物を生む『災害種子』
大きな茎の先端が針のように鋭く尖っており、付け根には大きな袋が三つぶら下がっている。
また、その根元にはまだ成長過程なのか、小さな針をつけたメインの大きな茎と同じような蔓が蠢いている。
対象の『異元』を『異元感知』で感じ取り、その対象に合わせて最も効く毒を三つの袋の中から調合し、ぶっ刺して注入する。
実はオベルガイアに最も有効だったのがこの『災害種子』だった。
○『暴食刻花』
→花蓮の中のとっておきの一つであり、最強の一角である『災害種子』。
見た目は禍々しい緑と橙が混ざったような体表。そこに散らばる赤と黄色の斑点模様。
食虫植物のハエトリグサを彷彿とさせる歯がずらりと並んでいる口は少し透けていて、うっすらと中の様子が窺えるようになっている。
その威力はランクⅤ相当の『異怪』もこの『災害種子』にかかれば数秒でドロドロになる程。
どうやってそうしたかはまず、相手の真下の位置に種を配置。そこからじっくりと『異元』を与え続けて数刻後、地面の陥没と共に対象を捕食する。
対象の大きさは関係ない。それに合わせて成長し、花蓮もまたそれに見合った『異元』を供給する。
次に、自分の口の中を高濃度の消化液で満たす。それだけでも十分脅威だが、さらに恐ろしいのは口の中にあるミキサーのような刃。
それが数百、獲物を切り刻むためにびっしりと敷き詰められている。この『暴食刻花』に捉えられたが最後、断末魔を上げる暇もなく液状になっている事だろう。
花蓮の持つ『災害種子』の中でもトップランクに強力だが、その分コスパも高く、育成する時間も通常の『災害種子』と比べややかかる。
作中のオベルガイアに関しては残念ながらあまり効果はなかったようだが、確実に沸点を下げる要因にはなっていた。
○『二刃草』
→『四刃裂葉』の下位互換。四枚の刃が二枚になっただけ。
当然『四刃裂葉』より威力は下がるが、成長の速度とコスパの良さは段違い。
作中では、発光するオベルガイアの触手から逃れるのに用いた。
○『跳飛草』
→しなる短く、強靭な茎によって跳躍を助ける事のできる植物を生む『災害種子』。
大きな葉が先端に一枚ついていおり、それに飛び乗って、バネよろしく瞬時に跳躍し距離が取れる。
咄嗟の脱出や回避に有効。
吹き飛ばされた広いグラウンドの端から中央近くまで、再び直ぐに戻ってくるために本編では使われた。
○『貯元種』
→あらかじめ地面に埋めておくことで隠蔽していた、花蓮のとっておきの一つ。
中には大量の『異元』が内包されており、育成させる事により負傷者の傷を癒すだけの『異元』を注入する。
但し傷を回復させるにはあらかじめ傷を負った当人の『異元』を入れておかなければならない。
この『災害種子』のおかげで腹に穴が開いた重症でも、花蓮は何とか一命を取りとめられた。
・『G,1』の『異跡』~結界型~
結界の『異跡』において、世界に彼の右に並ぶ者は五人といない程の実力。
彼の両腕のグローブが発光した瞬間が『異跡』発動の合図。
彼の結界の特徴はそのバリエーションの豊富さ。常識では考えられない程の『異元』を所持し、出来ない事はないその一歩手前の域にまで達している。
『G,1』の結界の術中に嵌ったら最後、命運は彼の手の中にあると言わざるを得ない。天才が努力したら案の定最強になったパターン。
ただ、本人は怠け癖があるためよっぽど大事ではない限り本気を見せる事はない。
だが、前述した通り結界士は自分で結界を予め作らなければならない。そのため彼の実力の背景にあるのは、並々ならぬ努力と自前のセンスの融合である。
デフォルトで怠け癖こそあれど、いざという時の準備に余念はない彼であった。
因みに普通の結界に彼のオリジナル要素が施された場合、○○式と名前の後に続く。
○『移動結界』
→本編では触れなかったが、燎平と出会った際に彼を『裏側』の外に出し、学校まで送った結界。
極めてシンプルで、普通の結界士も使えるのが移動結界だが(しかし習得するには厳しい条件と結界を組み上げる努力が必要)、『G,1』程の腕前ならば数百キロの距離をも瞬時に移動出来る。
○『索敵結界・栞式』
→索敵の結界。彼のオリジナル結界で展開すると翡翠色の幕が三百六十度に展開する。
『G,1』は得意ではないため、なるべくやりたくないとほざいてはいるがその効果は絶大。
『異元感知』の数倍もの情報量を獲得でき、建物の構造は勿論どこにどんな敵、さらにはどんな『異元』を持っているかすらも判別できる。
当然、普通の結界士ではそもそも索敵結界を取得すること自体が難儀であり、『G,1』はそれにさらに独自の改良を加えているため実力の差は明白。
このおかげで、ルダの道中の『異怪』の解析も済み、スムーズに倒せたとも言える。
○『空間結界・換式』
→空間を操作する結界。主に空間の交換に特化している。
通常、空間結界を用いるには一つの結界につきどれくらい、とリソースが決まっている(例えば並みの結界士なら一つの空間結界につき一体の『異怪』など)。
しかし、『G,1』の場合はそれに縛られる事はない。どれだけの『異怪』がいようと、どんな大きさの建物だろうと、『一つの空間』として扱うよう再定義されたのが彼の結界である。
故に彼が決めた空間内であればどれだけの質量、体積であっても自在に移動、交換が可能。
ランクも種類も異なる大量の『異怪』を一瞬で別の場所に移動できたのも彼ならではの芸当。
○『多重攻性結界・斬爆型・刻式』
→作中では名前は言及しなかった数ある『G,1』の結界の中でもよく使う彼のお気に入り。
この結界内に捕らわれたモノは刹那の間に数万、億ものミクロ単位での斬撃、爆破により細胞ごとに刻まれ、塵も残さず消し去られる。
主に雑魚掃除に持って来いの結界。大体の相手はこれで片付く。恐ろしい。
作中ではエントランスホールで大量の『異怪』がこれで灰燼と化した。
○『束縛結界・封式・異元』
→名の通り相手の何らかの特性を束縛し、封じる結界。
今回は『異元』を封じる事に特化している。この結界に入ったモノはうまく『異元』を生成できず、『異跡』を発動できない。
効果は翔璃が使う『錯乱霧』と似ている。だが『G,1』の方が遥かに強制力は強い。
不審者がもし同じ空間内にいたならば、きっと効果は出ていただろう。
・アミュール(愛海)の『異跡』~特殊型・操~
『異元』を用いて、自由自在に自分に合った特定の『物』を動かす事が出来る『異跡』。
アミュールの場合は、その『物』に最も適している媒体が『紙』だった。
捻動力のように、自分の『異元』を織り込んだ大量の紙を用いて戦う。
その紙も特別性で、紙一枚一枚に召喚型の『異跡』のマークが施されている。アミュールが『異跡』を発動させると連鎖的に紙自体が召喚を繰り返し、数瞬の間に大量の紙が現れるという仕組み。
それらの紙はアミュールが込める『異元』の量によって性質が異なってくる
また、彼女は数多の種類の紙を持ち、戦況や自身の状況に応じて使い分けている。
○『封縛紙』
→対象の動き・『異跡』を封じる特殊な紙。
札ぐらいの大きさの赤い紙であり、ランクⅤ程度なら一枚で束縛出来る優れもの。
無論、アミュールの『異元』が込められているからこその効果である。
最初にアミュールと対峙したオベルガイアの幼生は、成す術もなくこの札で封じられた。
○『抗毒紙』
→対毒用の紙。主に治療に使われる。
込める『異元』の量によりその対抗力が変わる。
これがなかったらアミュールも燎平も危なかった。
○『療紙』
→アミュールの紙に特殊な加工を施した治療用の紙。
一定量の『異元』が込められており、軽傷の類なら患部に貼るだけで傷が癒える。
アミュールは使ってはいなかったが、暁や芯一、美紋は傷の治療に用いていた。
・マーズ(校長)の『異跡』~改変型・令~
自分の言葉の通りに世界そのものに干渉し、事象そのものを改変する。強制的な命令、侵略…呪いの一種とも言われるほど強力な『異跡』
その強大な力は改変型の『異跡』の頂点に君臨するモノ。
但し、当然代償としていくつかのリスクはある。
まず、『異元』の燃費が馬鹿にならない。改変する事象にも寄りけりだが、一つの物事を改変するのに、およそ生成型の『異跡』発動の数倍から数十倍の『異元』を持っていく。
また、無茶な命令や、具体性に欠ける曖昧な命令は特に『異元』を消費するが、効果は薄いと使い勝手に頭を悩ませる部分もある。
例えば、ある対象に『動くな』、『立て』、『食え』等の行動を示唆するような命令は効きやすい。明確な目標や行動原理に基づいたモノも然り。
しかし、ただ『死ね』、『やめろ』、『爆破されろ』等、至極曖昧なモノや、その結果にすぐにたどり着くのにいくつか過程を必要とするモノ、現在の状態ではその結果に辿りつく要素が不足しているモノなどは悪手である。
しかし一度その命令が実行され、きちんと働いているのならばその効果は絶大である。
いかに抵抗しようと逃れる事はできず、そも受け入れた時点でその命令を聞く、という『因果』が既に確定したようなモノ。
例で言うなら『この学校の二階の便器の水で窒息しろ』という命令を聞き、抵抗もなく受け入れてしまったならばどこに逃げようが何しようが、その『因果』からは逃れられない。
最終的に、どのような過程を踏もうとその対象は『この学校の二階の便器の水で窒息』してしまうのだ。
例え本人にその意思が無くとも、他のあらゆる事象が『そうなるよう』に動くようになっている。
使い勝手と燃費は悪いが、一度効けば事象、運命、世界そのものが動く改変型最強の『異跡』。
・不審者の『異跡』~召喚型・空~
『空間召喚』、と呼ばれる召喚型の最上位の一つとされるモノ。
一度訪れ、マークをつけた空間であればその空間ごと召喚できるという強力な『異跡』。
かなり大掛かりな『異跡』なため、『異元』の消費は他の『異跡』と比べて激しい。
環境そのものが変わるため、まず召喚を許してしまったならその環境にまず対応するところから始めなければならなくなる。
また、別の世界…空間にいながら他の空間に干渉することも可能。
本編では、実際には不審者自身は別の空間に居ながら、燎平達の学校の校舎に多数の『異怪』を召喚した。
あの巨大な謎の『線』は、彼の『異跡』の残滓。その場に優れた『異元感知』を持ったアミュール等がいればそれもすぐに判明したかもしれない。
その場に本人が『居る』ように見えるのは元々自身がいた空間に、カモフラージュとしてその校庭の空間を二重に召喚していたから。
不審者が召喚先の空間の事を把握しているのも、あたかもそこに居るように自分の『異元』を流しているのも独自の細工があってこそ。
『G,1』や校長の攻撃が通らなかったのも、そもそも別の空間にいるので空振るのは当然の話だった。
さらに、空間を召喚するのと同じ要領で『異怪』も種類問わずある程度までならば召喚できる。
手なずけ、事前に服従させることが前提だが、一度マークを付けたモノ、それも強力な個体や群れまでも召喚可能。
この不審者に至ってはランクⅨのルダやⅧαのオベルガイアまで事前に捉え、マークを付け襲撃のために準備していた。
その目的は不明。
☆『異怪』まるわかり辞典・其之一
・『ピガル』――ランク・Ⅱ
→【序章・不条理の修復者】で登場した記念すべき初『異怪』。
体長は三メートル半ば程。頭がピラニアのような肉食魚、身体が二足歩行の蛙の初っ端からキモい怪物。人間で言う髪の部分に相当するのは長いヒレ。モヒカンの如く頭から伸びているソレと、もみ上げの如く顔の両端から垂れているソレは何とも見てるだけで不快感を催す。
何故か常に小刻みに震えており、その度に口端から零れる唾液が周囲に飛び散るからやめてほしい。顔の六割を占める鋭い歯を持つ口と、若干飛び出た目も相まってかなりのキモさとなっている。あと色が何とも言えない緑と青。テラテラと湿っている身体の表面はイボだらけで、触るとヌチョッとする。キモし。
口を開くと実はその舌もカメレオンが如く、獲物を捕食する立派な道具と成りうる。加えて敏捷性も高く、ピョンピョコ逃げ回る。水耐性を持ち、皮膚が濡れると活発になる。美紋がドジった(燎平のためにあえてそうしたともいう)のはこのため。
主な攻撃は噛みつき、ヌチョッとパンチ、ヌチョッとキック、ヌチョッとわしづかみ、ベロアタック等。
・『ザンドス』――ランク・Ⅱ
→【一章・3 起き始める異変】で登場した蛇型の『異怪』。
燎平と来飛をストーカーした。本篇では書かれなかったが、実はこの蛇、大きさが可変するのである!最初は普通の蛇サイズでこっそりトイレの窓から侵入し、来飛の背後で大きくなってドッキリ大成功させた。
サイズの可変域は三十センチから三メートルほど。あとキショイ変な声で鳴く。
口には普通の蛇とは異なり、獲物をすり潰す用の歯がある。頭には二つのの触覚、尻尾は槍のように尖っていて地味に危ない。
犬歯のような尖った歯が二対、上下にあり尻尾とその牙には毒がある。毒で動けなくなった獲物をパクリというのがいつもの捕食方法。
主な攻撃は噛みつき、締め付け、薙ぎ、尻尾でグサー等。
・『アルドーツ』――ランク・Ⅱ
→【一章・4 バンド系女神のお節介】から登場した熊型の『異怪』。
体長三メートルを超える、緑色の毛皮に関節が二つある大きな手を左右二つずつ持つ。鋭い眼光、鋭い牙と爪も特徴的。首周りは特に毛深く鬣のようになっており、頭には山羊の様な角が生えているが悪魔ではない。
気性は非常に荒く、空腹時には目に見えたものから片っ端に襲い掛かる。左右の腕のの長いリーチを生かして獲物を狩る。壁や木を登るのも得意なため、学校の絶壁も美紋達のいる教室まで登って行けた。
移動時は熊のように四足…この『異怪』の場合は六足歩行で移動する。割と早い。背中に乗ったら気持ちよさそう。だけどその分体重も重いので俊敏には動けない、パワー型。
主な攻撃は噛みつき、ひっかく、乗っかる等。
・『ホゥケ』――ランク・Ⅰ
→【一章・6 前奏の下準備】から登場した目玉型の『異怪』。
地面から植物のように生え、茎の部分は楕円が連結したような形になっている。その茎の先端には大きな一つの目玉が乗っかっている。その上にまつ毛にあたる三角形が三つ浮遊している。
体長は個体差がある。四十センチほどの小さなモノから二メートルを超えるモノまで。平均は一メートル付近。身体の色は赤紫色で瞳は黄色。
その胴体の地下部分、根に当たるものは一種の連絡手段、あるいは成長したモノだと新たに個体を増やす種となる。ん?ジャガイモかな?その根を通して連絡して仲間を呼べる生態は燎平を大いに苦しめた。
当然目からビームが出る。なお連発は出来ない模様。その根に当たる部分を用いて、地下から『異素』を吸収する。やっぱりジャガイモだコレ。
敵に倒されると罰目になる。あとやたら感情的。よく泣くし笑うし怒る。あれ、なんかそう思うとやたら愛着が湧いてきた。かわいい。
主な攻撃はビーム、体当たり。……え、それしか出来ないの?やっぱり可愛くない?
・『ロド』――ランク・Ⅰ
→【一章・6 前奏の下準備】から登場したスライム型の『異怪』。
色は種類によって様々。最も多いのは青紫色。特にこれと言って身体の形状が決まっている訳ではなく、もぞもぞと常に蠢いている。
目に相当する部分は存在し、はっきりとした輪郭はないがぼんやりと光って見える。体長は個体差があるが五十センチから百七十センチほど。人間とそう変わらない。
一回捕まって本格的に取り込まれると抜け出すのに大変。だが消化スピードは遅く、せいぜい服が溶ける程度。
主に二本の触手を持ち、それを伸ばして攻撃する。でも長さが短くて相手に届かない事も多く、困ってるところをよく見る。……やっぱりランクⅠ『異怪』可愛くないか?
あとちょっと異臭がする。まぁ名前反対に読み返したらそうだし仕方ないね。
主な攻撃は触手アタック、服溶かし。薄い本が厚くなるゥ!
・『ナインガ―』――ランクⅢ~Ⅳ
→【一章・7 冥府への案内人】から登場したネコ型の『異怪』。
体長四、五メートルは下らない巨体を誇り、サーベルタイガーにも似た大きく、鋭い牙を両の口端に持つ。また顎や両肩にも骨の一部なのか、鋭く尖った槍が生えている。
全身は白い毛皮で覆われているが、例外として背中の部分はハリネズミの如く黒い棘が所狭しと並んでいる。それらは矢のように射出する事ができ、獲物を串刺しに出来る。
最も特徴的なのはその異様な尻尾。そこには第二の口とも呼ばれる器官が存在し、寧ろ尻尾の方が食事に用いる回数は多い程。
自分と同程度の大きさの獲物でも飲み込めるほどの伸縮性があり、一度噛みつけば死ぬまで離さないとまで言われる。まぁ作中では毒で死んじゃったけどね。
個体によって優劣や体躯の差が激しく、中にはランクⅣまで至るモノも。
主な攻撃は噛みつき、ネッコパンチ、爪でニャー、背中の針シューティング、尻尾でパクリ等。
・『ルダ』――ランク・Ⅸ(幼生)
→【一章・8 曖昧な窮地】から登場。現段階では最高ランクの『異怪』。
周囲の建物や風景をコピーし、それらを自らの身体の中に投影。容易には気づかれない完成度のミニチュアを作り出す。
そして自身の周りに特殊な結界を独自で展開。獲物が気づいた時にはもう既に身体の中。その結界の精度たるやあの『G,1』でさえ即座に気づけない程。それが高ランク最大の原因である。
実際、この『異怪』は今まで謎に包まれていたのだがそれもその筈。捕らわれた者の大半はルダの中から脱出出来ず、その余生をルダの体内で過ごす事となるのだから。
ルダの中から脱出するのは極めて困難である。
まず、具体的な脱出方法をまず事前として持っていなければならない。そして持っていても獲物を強制的に召喚、転送させる『鳴動』を始め、自分より下位の『異怪』の大量召喚、さらには体内で『異素』の働きを変える霧を生成する事までできるので大変だ。(但し、これは『異元』を用いた通信を阻害する程度のものであり、翔璃の『錯乱霧』もその系統とされる)
体内に誘われた者達は消化され栄養にされるか、体内の『異怪』に殺されるか、ワープを繰り返す体内を無限に彷徨うか好きな死に方を選べるが、もし万が一脱出できたとしても生還することは難しい。待ち構えているのは、数百メートルにも及ぶ巨大な『本体』との決闘なのだから。
そして、再び万が一にもその決闘に勝利できたとして、そこから先の道も険しい。寧ろ最大の壁と言っていい。それは、もしルダが外ではなく、自分の巣の中にいた場合の話である。
ルダは、基本身体の中に作るミニチュアを取り込む時か、獲物を誘う時にしか外に出ることはない。それ以外の時間は、完全に他の次元と隔離された異次元とも呼べる空間に巣作っている。
そこから脱出する事はほぼ不可能であり、次元を跳躍でもするかルダそのものを手なずけるか、その二択しかない。それも高ランクの第二の要因だ。……というか次元跳躍とか自分でも何書いてるか分からなくなってきた。
本体はツチノコの様な容姿。身体の三分の一は尻尾で、身体の色は山吹色。作中に登場するルダは、まだ幼生なので体躯が成体のそれに比べてかなり小さい(五十センチほど)。
また、ルダの中には特殊な『異素』が充満しており、その異様な『異素』を吸収した『異怪』は通常のそれとは強さの桁が異なる。
今回、幼生のため取り込みたてだったのか、取り込んだ『異怪』達の強さにそこまでの変化はなかったものの、これがもし成体であったなら、蠱毒よろしくたっぷりとルダ独自の『異素』を吸って育った強大な『異怪』達が猛威を振るう事となる。
実のところ、本来人間、『異怪』問わず取り込むのがルダの性質なため特に人間を食べるだとか、そのようなアグレッシブな感情を元から持ち合わせている訳ではない。
獲物を取り込むのはそれらが自らの体内で生活し、そこに発生する『異素』や『異元』をちょっぴり分けてもらうため。体内でどのような殺生が起きようともその者達にとって『世界そのもの』であるルダには知った事ではないのだ。
なので、寧ろ人間は興味の対象に成りえるかもしれない。ルダがまだ幼い子供ならば尚更である。良かったな校長、懐いてくれそうだぞ。…最後の記憶がなければの話だが。
・『オベルガイア』――ランク・Ⅷα
→【一章・9 下り坂への分岐点】から登場。現状、作中唯一の『文字持ち』。
不審者がラスボス、ルダが裏ボスという体ならば、オベルガイアはラスボス一歩手前の大ボスと言ったところ。
例えて言うならば、上半身は蟷螂、下半身は鰐、二つに分かれた尻尾は蠍。顔には口と呼べる器官しか存在せず、体中強力な酸で覆われている。
加えて形、性質がそれぞれ異なる触手を複数持ち、身体の大部分は白い鎧を纏っている。
また、【3 起き始める異変】から登場し【12 目覚めし者】でアミュールが倒したのはオベルガイアの幼生。
成体と比べ、所々未発達であるが容姿や生えている触手から、どこか面影が見られる。
成体は五対の計十本の鰐のような足や上半身の大釜、蠍の尻尾を持つが、幼体にはまだそれらは生えていない。それ故身体はナメクジのように地面に直接触れている。ランクはダウンし、ⅣからⅤ程度(それでも十分に脅威)。
巨体なぶん動きは鈍いが、桁外れな再生力と多種多様な触手の攻撃で前に立つ敵を圧倒する。並み大抵の『異跡』では白い装甲にヒビを入れる事すら叶わない。
もし鎧を破壊したとしても、数分あればすぐに元に戻ってしまう。強力な酸は服はおろか身体の組織も容易に溶かす。一度捕まったら簡単には抜け出すことは出来ない。
さらに厄介になるのは、怒らせる事。一度オベルガイアの堪忍袋の緒が切れると皮膚が真っ赤に染まり、攻撃的になる。
体中に付着している強酸の粘液は気化性を持ち、その場に留まるだけでも呼吸器官や皮膚の表面が危なくなる。触手も一気に禍々しさ、パワー、スピードが跳ね上がり対処が段違いに困難となる。
そして、ここまでがランクⅧのオベルガイアの話。ここからは『文字持ち』としてのオベルガイアの解説となる。
何故オベルガイアが『文字持ち』と称されるのか。それはそもそも、オベルガイアという『異怪』は魂を司る『異怪』と呼ばれているからだ。
オベルガイアの身体は『魂を自身の身体にストック』することが出来、形態を変化させることで現せる特殊な触手を用いて魂を扱うことが出来る。
具体的には、『魂の交換』。
元々自分の中にあった魂を他者の魂と触手を通じて交換できる。その時、魂の分離に用いられるのが戦闘では使われない二対の大釜だ。
オベルガイアには通常時とは他に、皮膚が真っ赤に染まる怒りの形態とあともう一つ、魂を扱う時専用の形態を持つ。
皮膚は蛍光色のような淡い緑色に染まり、触手も大々的にチェンジ。皮膚を湿らせている強酸も乾き、背中の部分には腕に似た柱の様なものが生える。
その大きな柱も触手の一種で、身体の機能としては最も重要な部分。何故ならそこ自体が魂の保管所であり、魂を交換する小さな触手へのパイプの役割も果たしているからだ。
魂の交換には一人二本の触手を要する。一本が相手から魂を抜き取る用、もう一本が相手に魂を送り出す用だ。
花蓮達から魂を抜き取る際、翔璃のも含め計四本の触手が必要とされた。
基本的に、オベルガイアに直面して即座に魂を抜かれるという事はない。人と状況にもよるが、その相手にオベルガイアの持つ魂のストックの中で適してるモノを選ぶにはある程度相手の情報と時間が必要になる。
それ故に戦闘はデータを取るのに不可欠であり、 相手の『異元』も交換する魂の相性を考慮して『異元感知』で読み取る必要がある。
…ちなみに、オベルガイアとルダが戦った場合、ルダが勝つ。というかオベルガイアは耐久力と多彩な触手による攻撃法が高ランクの原因である故、初めに取り込まれたらもうその時点でアウト。というかオベルガイアでなくても大抵アウトだなコレ。
~芯一の『厄虫類』~
・『ベイアーク』――ランク・Ⅲ
→【一章・5 危険の整理は慎重に】から登場した蜂型の『異怪』。
サイズは一メートル前後。赤や黄色の斑点模様が身体に刻まれている。翅は合計六枚存在し、超高速で動かす事によりトンボの如き空中機動力を得る事が出来る。
他の特徴としては顔の半分を占める顎、三本の触覚、俊敏に動く獲物も捕らえる複眼、八本の鋭い爪がついた脚。
そして、蜂ならではの最大最凶の武器である臀部の毒針。やや大きめのアイスピック程の大きさのそれが身体に刺さったらと思うだけでその恐ろしさが分かる。しかも毒付き。
その毒は致死性が極めて高く、それは『異怪』とて例外ではない。高い耐性や抵抗がない限り、体躯の大きい『異怪』でも数秒のうちに黄泉へと誘ってくれる。
比較的機動力もあり、武器も豊富。防御に関してが薄いのは欠点だが、それを加味してもランクⅣに近いであろう優秀な『異怪』。
従順で扱いやすく、割と何でもお願いを聞いてくれるので芯一は重宝している。
・『スキアグラム』――ランク・Ⅳ
→【一章・7 冥府への案内人】から登場した百足型の『異怪』。
全長およそ二十メートル。大きさの割に敏捷性が高く、素早い動きをする。
姿は百足と酷似しており、一つ一つの体節がはっきりとしている。身体の表面は合金のように固く、ちょっとやそっとじゃ傷つかない。
スキアグラムの特徴は大きく分けて二つ。一つは神経毒。強い刺激を与えられると即座に毒を噴射する。成分はフグやヒョウモンダコが持つテトロドトキシンという成分に似ており、神経を麻痺させて大ダメージを与える。
その毒は即効性であり、強い耐性がない限り即座に身体の自由を奪われる。処置をしない限りは数分苦しみにのたうち回った挙句、呼吸や心臓が機能しなくなる。
そしてもう一つの特徴が、実はスキアグラムは軍にして個という存在である事だ。一つ一つの体節が一つの生命として活動している。
つまるところ、スキアグラムの身体は一つであるように見えるが、実際は一メートルほどの小さな『異怪』達が連結しているのだ。ちなみに一個体のランクはⅡで、頭部の個体がボス。
連結している時は仲間との連帯感がそうさせているのか強気で攻撃的だが、逆に一匹ずつの時はかなりおとなしい。裏返されるとじたばたしてしばらく起き上がれない。一つ一つの体節の腹の裏に毒針がある。
・『レムス』――ランク・Ⅲ
→【一章・7 冥府への案内人】で登場。
両手に収まる程度の大きさで、一見青白いタンポポのような綿毛のようでもこもこしているが中に入ってるのがヤバい奴ら。
一綿毛に三、四匹セットで詰まっているのは平均全長三~五センチ程度の寄生虫。色は紫で先端は針のように鋭く尖っている。
獲物との距離が一定以上近くなったら綿毛から相手目がけて回転しながら発射し、皮膚や体の組織を貫通しながら内部へ侵入。
侵入する際、レムスは自身の身体をミクロ単位まで小さくすることが出来、毛穴程度の大きさがあれば余裕で体内へ入り込める。
その後、循環器に身を任せ相手の重要な器官に潜入、そのままそこを蹂躙した後、脳に移動しゾンビとして意のままに操る。
寄生できない例として、まず体表が鎧の様なもので覆われて侵入できない、そもそも俊敏すぎてレムスが当たらない、そして体内自体が危険な状態(血液が毒であればレムスは死んでしまう)のケースがある。
基本それ以外であればランク関係なく体内に侵入し、寄生できるのである意味ダークホース的な存在。
だが見た目の割に獰猛、攻撃的で隙あらば例え主でも寄生しようと威嚇してくる。同時に扱う数が増えれば増える程扱いが難しくなる。
綿毛の中にいる時は、お互いに場所の取り合いでオラついてる光景がよく見れる。
・『ガムレス』――ランク・Ⅲ
→【一章・13 迷走の果て】で登場。
全長二メートル強の、ひし形の四角推ような『異怪』。
中は空洞になっており、防御力に特化した黄土色の身体の壁は中にいる者を物理攻撃から守る。
防御態勢に入る際、新たに足を生やして地面に固定させより守りを固める。なお守れる適正人数は一人。
大抵の物理攻撃や『異跡』は防ぐ高度な防御性能を誇るがガムレス事態は攻撃手段を一切持たないのでランクⅢ止まり。
なお、ガムレスの中に入る時はガムレスは自分で動けないため、自力でガムレスを持ち上げ、中に入らなければならない。割とそこは面倒くさい。
現段階での『異怪』のランクの危険度
ランクⅠ……正直雑魚。目を瞑ってでも勝てる。
ランクⅡ……これもまだ雑魚。生徒会メンバーなら一撃で仕留める。
ランクⅢ……ここから戦闘の幅が一気に広がる。弱いものもいれば意外と強いものもいる。 生徒会メンバーも気は抜かないがまだ余裕がある。
ランクⅣ……もう雑魚じゃない。結構倒すのに苦労する個体もちらほら。
ランクⅤ……またここでランクの差が一気に増す。これまでとはレベルが違う。
またⅤの中でも種によって優劣の差はあるが、一様に皆一癖も二癖もある。生徒会メンバーも一人で相手にしようとは思わない。
ランクⅧ~……ここからはアミュール、校長、『G,1』が本気で対処するレベル。またⅧから『異怪』の強さのレベルががらりと変わる。
『異怪』の強さで大きな区切りがあるのはⅢ、Ⅴ、Ⅷ、Ⅹ。




