第四話
引き続き、狂気と夢の世界をお楽しみください。
ふがしは「食事」という行為其の物が嫌いだった。
何かを食み、口の中で噛み砕き、飲み込む。其れを幸せそうな笑顔と共にいとも容易くやってのける周りの人間が理解できなかった。
其の為幼少期からご飯の時には常に怒られより一層食事が嫌いになる。悪循環である。
食べ物を「美味しそう」と思うことも無く、其の味覚は他人の其れとは常にズレていて、所謂ご飯と言われる物は何れもグロテスクな下手物に見えた。
「はやく食べなさい!」「ほら、はやく!」「ね!美味しいでしょう!?」「美味しいの!不味いはず無いんだから!」「もっと美味しそうに食べなさい!」「私の作った料理が不味いって言うの!?」
「……ごめんなさい。」
ああ、食べても食べなくても結局怒られるなら、
もうご飯なんて要らないと。
思うのだが、どうも其れは許されないらしい。
ふがしは今まで一度も食事を楽しいと思ったことが無かった。
まぁ、つまりは其れ故今回も「食べ物」を一切口にしていなかった。
其れだけの話だ。他意はない。
「ふがしちゃん、?」
声をかけられハッと意識を此方へ戻す。
「ぁ…、ごめん、何?聞いてなかった。」
申し訳無さげに苦笑いを浮かべ平謝りした。
「いえ、…何だか心此処に在らずって感じだったから。心配で。」
「あはは、大丈夫だよ。ちょっと考え事してただけ!ごめんね?」
「ううん、好いのだけど、ほら、此れから如何しましょうって話よ。」
ふがしが「?」を顔に浮かべると、漆深が割って入って説明する。
「今見てきた限り…貴女は見てなかったでしょうけど、…幾つかドアが在って、この先は行き止まりみたいじゃない?だから二手に別れて出口を探すか、其れとも皆離れない方が好いのかって話。」
「俺は二手に別れた方が好いと思うぜ。だってその方が早く見つかる可能性在るだろ?」
「ぇっと、…ぼ、僕、は、……みん、皆、、一緒がい、い、………かな。ほ、ほら、はぐれて、……な、何、か、…在ったら、厭、…だし………。」
柘榴と死桜も意見を述べる。
「うーん、…寝娘ちゃんと漆深ちゃんはどっちがいいの?」
「私は別れた方が手っ取り早くて好いと思うわ。」
「私は、あんまり離れたくないかな。皆一緒の方が安心じゃない?」
見事に半々な意見だ。多数決を取るのならふがしの意見にかかっている。
(厭だなぁ。責任とか嫌いなんですけど……)
うーん、うーん、と悩んでいると、遂に廊下の端まで来てしまったらしい。行き止まりだった。
薄暗い其の廊下。ぽつり。人影が見える。
「ねぇ、あれ…」
いち早く気付いたのは漆深だった。
例の少女だ。
「あーそーぼっ!♪」
ニタァァ。微笑んでいる。其の手には、少女の身体ほども有る大きな鉈。
一歩、一歩。近付いて来る度に鉈を引き摺り、独特の音を奏でる。
ズズズ……ズズズ……
引き摺る音からして、とても重いことは明らかだ。如何やって少女独りの力で運んでいるのだろう。
ふがしは皆が一目散に逃げて行く様子を不思議そうな目で見ていた。
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