第二話
引き続き、狂気と夢の世界をお楽しみください。
「と、とにかくっ!はやく出ましょうよこんな処」
寝娘がそう言うと皆同意したのか、我先にと出入口の方へと駆けていった。
「え……?」
先程の女性がドアを開けようとするがびくともしない様だ。
「ああもうっ!見てらんねぇ!!おい!お前も手伝えよ!」
気の強そうな男性がもう一人の男性を半ば強引にドアの前に立たせ、二人がかりで開けようとした。
「……何なんだよこれ!!びくともしねぇじゃねぇかっ!」
暫く皆でドアを開けようと奮闘していたが、いち早く諦めたのはふがしだった。
ふらふらと部屋の中を歩き回り始める。特に行く宛もなく、ただふらふらと暇を潰す様に。
「てめぇ何してんだ?」
男性が聞く。
「だって飽きちゃったんだもん。眠いから今日は何処で寝ようかなーって考えてたの。」
「はぁ!?此の状況で何言ってんだ! !」
「だって出れないなら寝るしかないじゃない。ふわぁあ、おやすみぃ~」
床に倒れている人の一人を抱き枕代わりにし、どうやら本当に眠っているようだ。
「………どーすんだよ、これ…」
「どうしましょう。この子本当に眠ってるわ。」
「ふがしちゃん、お、おきて…?」
寝娘がふがしを揺さぶる。
「んん、…おはよぉ~……」
漸くふがしが起き一同一安心したのも束の間、
ゴトリ
音がした。視線が集まる。
何だろう、見たくない。丸く、黒く長い毛の生えた、ナニカ。肌色の部分が覗いている。
よく見なくても解る。ナニカ。全員が目を反らし……否、一人だけは其れを凝視していた。
ふがしだ。ナニカに歩み寄る。
そっと抱き上げ、優しく優しく、撫でた。
「可愛いなぁ」
ゴトリ。一つ。
ゴトリ。又一つ。
ゴトリ。
ゴトリ。
其れ……人間の生首は人数分。五つ。落ちてきた。
皆で上を、落ちてきた処を見上げる。
天井には一つの穴が開いていた。人一人通れる程度の大きさだ。
「彼処から出られるんじゃね!?」
「で、でも、…どう、どうやって、天井まで、の、登れば、」
ひょっこり。
穴の中から少女が顔を覗かせた。
「あっ…!」
ふがしは思わず声を挙げる。そう、会場でただ独り佇んでいたあの少女だ。
ニタァ。微笑んでいる。
「これ、あげぅっ!」
其の声は無邪気で可愛らしく、言葉を覚えたての子供の様に舌足らずな口調だった。
少女が落としてきたのは首のない人間の屍骸だった。
「ひっ…!!」
何人かの悲鳴が挙がる。
其れの体にはロープが巻き付けられていて、縄梯子になっている。
其れは天井の穴まで続いている。
此れで登れ、と言うことだろうか。
少女は尚もニタニタと微笑んでいる。
縄梯子にはベットリと血が付いていて、誰も登る気には成れないらしい。
一番に動いたのは、やはり、ふがしだった。
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