呪われた者たち
前のを出してから一週間ほど経ってしまいました。
これから一気に登場人物が増えていきます。
「紅様。私はここの管理を任されている椿と申します。何か御用がありましたらお呼び下さい。」
俺は屋敷に入ると綺麗に整理された座敷へ案内された。そこまで来ると男はここで待つよう言い、部屋から出ていった。
待っていると40代位の着物を着た女性が一人で入ってきて言った。
「呪いについて大体のことは聞かれたと思いますが、まだ何か分からないことはありますか?」
「あ、ありません。」
ほとんど勢いで来てしまったが、これからどうなるんだろ・・・。
俺はこの時になって緊張し始めていた。
「そうですか。今ここには11人、呪いを持つ者たちがおります。さっそくですが彼らの所へご案内します」
そう言って椿さんは立ち上がり部屋の襖を開けた。するとそこには一人の男が立っていた。顔は俺の位置からじゃわからないが、背丈や雰囲気から先ほど俺を連れてきた男とは違うことだけはわかった。
「戒さん・・・どうしました?」
椿さんが戒と呼んだ男が部屋へと入ってきた。
黄色・・・?
まず目に入ったのは鮮やかな黄色の髪の毛だった。その辺で見るような金髪ではなく自然な色。色づいた銀杏の葉に近いだろうか。次に目に入ったのは髪と同じ、それよりも幾分か濃い黄色の瞳だった。その瞳が今は少し細められ俺を見ていた。
男、戒さんは野性的な顔立ちで、見た目の年は20代半ば位そして服の上からもわかる無駄のない体つき。細いわけではなく、しっかり筋肉は付いている。髪は短く、身長は180以上ありそうだ、俺にとっては羨ましい限りの身長だった。
それにしてもこの人じっと俺のこと見てるけど、なんなんだろ?
「あなたが新しい‘主’ですか?」
目の前に立っている戒さんが少し低めの声で言った。その言葉は見た目に反して丁寧だった。彼から少しの警戒心と困惑があるのがわかった。
「一応、そうなるかと」
「・・・・・本当に男なんだな」
「っえ?」
「いえ、なんでもありません。」
その声は小さくて俺には聞こえなかった。
何て言ったんだろう?
「俺がこれから案内します。俺は寅の戒といいます。よろしくお願いします。‘主’」
そう言って戒さんは頭を下げた。けれど俺は違和感を覚えた。
彼が呪いを持つ人・・・本当に見た目は普通の人と変わらない。
それより主という言葉を強く言われたような気がする。話し方も硬い感じだし・・・・警戒されているんだろうな。
そりゃそうだ、いきなり連れてこられたやつが主だなんて、しかも男。俺が同じ立場だったら、すぐに信用することはできないだろう。
母さん、ここは俺の居場所じゃないみたいだよ。・・・やっぱり俺は
「どうかしましたか?」
何も言わない俺を不思議に思ったのか戒さんが声を掛けてきた。
「っ、いえ。・・・案内よろしくお願いします。」
「・・・・こちらへ」
戒さんは廊下を奥の方へ歩き出した。俺もそれについていった。
歩いていくと、ある部屋の前で足が止まる。
「ここの部屋には、私たちのなかでも年齢の低い者達が居ます。」
戒さんが引き戸を開けるとそこは電気がついているはずなのにどこか暗い雰囲気があり、中には見た目は俺より幼い男の子と女の子が合わせて4人いた。4人とも部屋と同様に暗い表情だった。
その中で一番幼いだろう女の子は肌も髪も真っ白で、髪は肩まで伸ばし綺麗にそろえている。
その体は小さかった。4人とも座っているので正確にはわからないが、その中でも一際小さく感じた。それはたぶん雰囲気もあってのことだろうと思う。何より彼女の白に近い水色の瞳が俺を視界に捉えた瞬間、その目にあったのは恐怖だった。
全体的に儚げな彼女を、触れたら壊れてしまうのではないかと俺に感じせた。
その隣の男の子は年はさっきの子より少し上くらいでクリーム色の髪を短くそろえていた。
瞳は夏の空のように澄んだ青で、その子も小さく2人とも身長は100前後だろう。
そして反対側には2人より年上の女の子と男の子が座っていた。
一人は全体的にとても細く、背は140位、茶色の髪を上でふたつに結び肩まで垂らしている女の子で、ルビーのような真赤な瞳が印象的だった。
一番右の男の子は背は150前後、髪は女の子より明るい茶色で、それはどこか雑に切られたように見えた。
その子もまた瞳が印象的で右目は深海のような藍だったが、左目は薄いエメラルドグリーンだった。
そして、もう1つ俺が気になったのは、首に何かで絞められたような跡だった。
それぞれ見た目は6,7才と13,4才位だと思う。
でも、実際はもっと上なんだろうな。もしかしたら俺よりも上かもしれないな。
俺が4人を見ていると戒さんが口を開いた。
「彼が新しい‘主’だ。・・・右から戌の犬、卯の茜、未の七、子の雪葉です。」
彼らは名前を呼ばれると、ビクッと反応して俺を怯えた目で見た。その態度に不快を感じることは無く、俺は彼らに一歩近づく。いっそう怯える彼らにそれ以上近づくことはなく、そこで立ち止まり座っている彼らと同じ目線となるようにしゃがんだ。俺の行動に一々反応する彼らにこれ以上不安を与えないように俺は微笑んだ。
「初めまして、俺は紅。今日から君たちのあ・・・」
主と言おうとして止め、言い直す。
「今日から君たちとここに一緒に住むことになったんだ。よろしくね。」
そんな俺を4人は呆然と見ていた。後ろに居る戒さんも顔は見えないが気配で同じ様な状態だと思った。
「次に行きましょうか。」
「あ、はい」
はっとして戒さんは4人をチラッと見てから出て行く。
紅が廊下へ出た時、先ほどの笑みはなく寂しく悲しげな表情になっていたのは、背を向けていた戒もそしてそんな後ろ姿を見ていた4人にも見えなかった。
「ごめん」
引き戸が閉まる時に俺は小さく呟いた。
普通ならば聞こえないであろう呟きは獣の呪いを持つ者達には、しっかりと聞こえていたことを紅は知らない。
ごめん。俺のせいで恐がらせて、俺の居場所ではないのに・・・・。
それでも俺には、もうここしか。
「・・・」
戒さんは何も言わず次の部屋へと向かい出した。
読んでいただきありがとうございました。
まだまだ説明文みたいな文章が続きますが、もうしばしお付き合いお願いします。