アディラの戦い 10
現場に行くと、腹の調子が悪そうにしている兵士がいっぱいいた。
腹を押さえた兵士たちが、簡易トイレに並んでいる。
「毒ってわけでもなさそうだけど……」
シチューの入っていた鍋は空っぽになっていた。鍋の底にへばりついていたシチューを指ですくい、舐めてみると、アディラはそれを飲み込んだ。
「これ……下剤だ……」
下剤ならば命に別状はない。腹が痛くなるだけの事である。だが、いままでの生活で体力が落ち切った兵士たちに、こんな薬を飲ませて大丈夫なのだろうか? と思うアディラ。
ふと、アディラは、鳥の姿を見つけた。
魔法の力を使って作られた、青く光る鳥である。アディラは、その鳥に向けて矢を放った。
「ちっ……外れたか……」
どうせ、グラセランドの魔術師は、その鳥を使って自分たちの様子を見ているのだろう。
まんまと罠にはまって、トイレに並んでいるところなんて、完全に醜態だ。見られるのは、特に気に入らない事である。
魔法で作られた鳥は、それから、飛び去っていく。
夜になると、兵士達は久しぶりに屋根のある場所で、全員が寝ることができた。昼間には、下剤入りのシチューを食わされて痛い思いをした者も多い。
「こんなんで勝てるのか……?」
今更ながらに、そう思い始めるアディラ。
「勝てないな……どう考えても、一度本国に撤退をするべきだ」
テントの外から、そう声が聞こえた。
「入るぞ……」
そう言い、幕を上げて入って来たのはファラリスだった。
「なあ、お願いがあるんだ……」
ファラリスは、震えた声で言った。
アディラは、その声に固唾を飲んだ。このような夜更けになって、お願いをしてくるとは一体何であろうか? アディラがそう考えると、ファラリスは懐からトランプを取り出した。
「ポーカーで勝負をしないか?」
拍子抜けしたアディラだったが、それに頷いた。




