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剣と厨房。二人の成り上がり。  作者: 岩戸 勇太
ラディンとフルータの戦場 3
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ラディンとフルータの戦場 21

 それを見たラダヴィッツ王国の兵士達は、顔を青ざめさせた。

「魔術師がやってくるのが間に合ってよかった……」

 つい先日、魔術師がやってきた。魔術師達は、プライドが高く傲岸不遜な者が多い。その魔術師達のご機嫌を取るために、サリルの作ったお菓子やフルータの食事は、一役かってくれた。

「菓子を作るってのも、捨てたものじゃ無いと思いませんか?」

 魔術師達のご機嫌を取った、サリルが、サーファスに向けて、言った言葉だ。

「あの二人も……平和な時代であれば……」

 サーファス自身も、二人の結婚に反対する事はなかった。この戦いは長期化をする。そして、いずれかは、グラセランド軍はラダヴィッツ軍に倒される。

 その時間を、少しでも長引かせるのが、サーファスの仕事だ。時間を稼げば、もしかしたら政略的に、この戦争を止める事もできるかもしれない。

 そこにいたっては王宮にいる王族たちの仕事だ。

 その思考を巡らせるのをやめたサーファスは、敵軍の侵攻の様子を見た。

「そろそろだ……第一時後退! 作戦ポイントに配置せよ!」

 サーファスはそう言うと、駐屯地の奥に向けて走っていった。他の部下たちもそれを追っていく。


「第一次後退の指示が出たぞ! すぐにでも逃げろ!」

 ラディンが、この非常事態になってもいまだに何かを作っているフルータに声をかけた。

「ああ! すぐにでも逃げるさ! これが終わったら!」

 フルータは、後方支援の担当だ。敵の襲撃があった時点で、逃がされるはずである。

「アディセはとっくに逃げているぞ! お前は何をグズグズしている!」

 そう叫ぶラディンだが、フルータは、自分が料理を作っている鍋から、掬って中身の味見をした。

 口の中に入れたものはすぐ近くの洗面台に吐き出す。

「これで上等! レイティ! サリル! 二人共逃げるよ!」

 フルータが言うと、大急ぎで、荷物をまとめ出すレイティとサリル。

「それじゃ、お先!」

 そう言うとフルータは脱兎のようにして逃げていく。

「一人だけズルいよ!」

「こんなに薄情だとは思いませんでしたよ!」

 レイティとサリルは、荷物を抱えてフルータを追っていく。

「一体、何を作ったんだ……?」

 ラディンは厨房のテントの中に入って、フルータが見ていた鍋を覗き込んだ。

「普通のシチューにしか見えないが……」

 おたまで中身をかき混ぜたラディン。

『そういえば……具が少ないか?』

 そう思って、一口シチューを口に含んでみた。

『これは……』

 ラディンは、近くの洗面台に向けて、口に含んだシチューを吐き出した。

「外に設置されているトイレの意味がわかったぞ……」

 そうしてラディンは、前線にまで戻っていった。

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