ラディンとフルータの戦場 20
「いい匂いとは言い難いですが、料理の匂いがしますね」
「へぇ、君は気づいたかい?」
サリルは、フルータの言葉を聞いて、「何をですか?」と言って小首をかしげた。
手を洗い終えたサリルは、フルータの作っているシチューを覗き込む。
「こんなの、犬の餌にもならないんじゃ……?」
サリルの相変わらずの言葉に、フルータは、答えた。
「敵に食わせるんだ! 犬の餌以下で十分!」
「敵に? なるほど、そういう事ですか。それで、いきなり簡易トイレを作れと、私に言った意味が分かりました」
そう言い、ニコリと笑ったサリル。
「正直、イジメかと思っていましたよ。そんな事をさせられるなんて……」
「そんなマネをしたら、怖い君のお父さんに何を言われるか……」
この状況をまったく理解できないレイティは、小首をかしげた。
「それってどういう事なの?」
そう聞いてくるレイティ。だが、そこに『ピィィー』という笛の音が聞こえた。
「敵の襲撃を知らせる笛だ。思ったより早かったな」
そう言い、フルータは、ビーフシチューに何かの粉末を大量に入れた。
グラセランドの駐屯地は、森にかこまれている。その森の木々の間から、ラダヴィッツ王国の兵士達が姿を見せる。
敵の数は多く、その上血走った顔をしている敵の兵達を見て、グラセランドの兵達は、固唾をのんだ。
「囲まれているか……そうなれば、方法はひとつ……」
弱所を付いての一点突破。包囲をされている時の行動なんて、それしかない。
「敵もそれを狙っているようだし……」
王都のある方向には、兵が配備されていない。まるで、そこから逃げていけと言わんばかりの布陣だ。
「数を減らさせてもらうよ……」
そう言ったサーファスは全隊に指示を送る。
「矢を放て! 敵が迫って来るが心配をするな! 敵は重武装のせいで動きが鈍い! 充分逃げられる!」
敵は装備に金をかけられている事が仇となった。重武装をしているラダヴィッツの兵と、軽装をしたグラセランドの兵では、動きの機敏さが、まるで違う。
そして、丘の上に建てられている駐屯地は、敵の矢が降ってくる危険性は無い。敵は自分の足で坂を登ってくるしかないのである。
「作戦通りに動け! 敵の数に飲まれるな!」
陣頭で、そう指示を出すサーファス。
敵の攻撃に、矢を撃って対抗する。槍を持ってこちらに突撃を仕掛けてくる敵に駐屯地の兵達が放った矢がいくつも降りかかる。
矢で撃たれ、次々に倒れていく敵の兵士達。だが、その屍を踏み越えて、次の兵が、迫ってくる。
「まだだ! まだ撤退は許さん! 矢を打ち続けろ!」
サーファスの指示通り、矢は打ち込まれ続けた。次々と倒れていく敵兵。
そして、それに魔術師の魔法が打ち込まれる。
火の玉が上空に浮かび、その火の玉が敵に向けて一気に急降下してくる。
ドゴォン!
大きな音が生まれ、地面に大穴を穿った。




