↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と厨房。二人の成り上がり。  作者: 岩戸 勇太
アディラの戦い
PR
71/115

アディラの戦い

  14部 アディラとファラリス


 ラダヴィッツ帝国の前線のテントは疲れた顔をした兵士で溢れていた。

 数少ないテント。そのテントも人が一人横になることができるくらいの広さしかない。そのテントを二人で共用で使っている。

 テントに入って寝ることができるのは順番になっており、二日に一回しかテントで寝ることができない。

 テントで寝れない者は、野宿をして夜を明かす事になる。

 そのため、外で寝転がっている者が多い。

 アディラは、一般兵達がいる区画を見回っていた。まるで、スラム街のような様子が、目の前に広がっているのを見て、アディラは頭を悩ませた。

「こんなので、戦闘に勝てるのか……?」

 ほとんどの兵士は顔色が悪い。それどころか、病気を患っている者もいる。

 ゴホゴホとセキをしている者を見ると、『彼らは野戦病院行きだろう……』などと、ぼんやり考えてしまう。

 ラダヴィッツ帝国は大国だ。いま戦争をしている相手国のグラセランド王国とは国力が五倍も差がある。単純に見れば、これは勝てる戦いであるのだ。

 だが、グラセランド王国は、予想外の反抗を見せていた。ラダヴィッツ帝国とも、三倍もの戦力差があるのにも関わらず、前線を徐々に押し返されているのだ。

「敵の総司令……サーファス……」

 三倍もの戦力差で、戦局が押し返されたのは、その男が、総司令についてからである。

 いまのラダヴィッツ帝国の前線司令部は、そのサーファスを目の敵にしているが、本当の原因はこういうところにあるのだとアディラは思っている。

「よう、アディラ坊。また見回りとはご苦労なこったな……」

 そう、アディラに声をかけてきたのはダウカという老兵だ。

 彼は、何年も前から戦場にいるらしく、この戦場の昔の事を知るためには、この老人に聞くのが手っ取り早い。

「昔からこうだったんですか?」

 ダウカはシワの寄った顔でピクリと目を動かした。

「俺は資金がおりないと聞いているぞ。勝って当然の戦いには、そこまでの投資ができないのだと……」

 そのため、テントは二人で一つ、安い野戦食をかじるだけで食事を済ませてしまう。この兵士達の扱いには問題があると思われる。

 だから兵士たちの覇気が無く、戦闘にも力が入らないのだ。

「どうせ資金をケチっても、ワインを買う金に使うだけだろう……そんな金があるならこっちに金を回して欲しいもんだ」

 最後に皮肉をいい「けっ……」と、言って話を終わる。これはダウカにとってはいつものことだ。

 何年も使い続け、すでにテントの幕もパリパリになってきている。ちょっとやそっとの事でも、破れてしまいそうだ。

 ダウカに向けて安酒のビンを投げるアディラ。ビンを受け取ったダウカは、その中身を一気に飲み干してしまった。

「それじゃあ、今度聞きたい事があったら、いつでも言ってくれ! 酒も用意してな!」

 ダウカから話を聞く代わりに、酒をひと瓶渡す。これは、アディラとダウカの、暗黙の約束になっていたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。