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剣と厨房。二人の成り上がり。  作者: 岩戸 勇太
ラディンの場合
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ラディンの場合 5

「どうしたもんか……」

 ラディンは、自分にあてがわれた寝所で考えた。

 この上流階級の世界では、こういった、権謀術数や、個人の想いなどが、複雑に交差するものであり、その波に上手く乗った者が、出世をしていく。

 仕事ができるだけでは、評価をされないのだ。

「そんな事は、前々からわかっていたが……」

 まず、自分は隊長からよく思われていない。だから、隊長のご機嫌をとる必要がある。

 横に見える、本棚を見て、ラディンは思う。

 この部屋は、元々は倉庫だったが、そこを急いで片付け、ラディンの部屋にされたのだという。

 小さな窓があり、そこからの光が床を照らしている。カビ臭く嫌な臭いが立ち込めている。小さなカンテラが置いてあり、それに火をつける事ですら、この真っ暗な部屋では難儀をする。

「いきなり入隊したのだから、部屋の用意まではされてなかった……といえばそこまでだが……」

 この、部屋をあてがわれたのも、隊長の嫌味のように思えてならなくなってくる。

「これは、考え過ぎか?」

 そうつぶやくラディン。

 頭の中を整理しよう。そう思い、考え始めたラディン。

 あの名家の娘なのだというあの子。あの子を上手く口説き落とすことができないだろうか? もしできたらいいだろうが、あの隊長のお気に入りなのだ。むやみに手を出すのはマズい。

「もっと、いろんなコネを作らんとな……」

 今日、接触をした者といえば、レナードくらいというもの。

 他の隊員達の事は分からないが、これから接触して、心象を確かめていかねばならない。

 今のところ、理想の形といえるのは、自分は隊長から気に入られてシャムロックの腰巾着にでもなるくらいのつもりでいいかもしれない。

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