ラディンの場合 28
『これはキツい……』
ラディンは薬の効果で腹が痛んでいる。
ラディンは調子が悪いのを隠すことができず、重い足取りで王宮の中をパトロールしていた。
「どうしたんだい? カゼかなんか?」
『これって、カゼに見えるのか?』
腹を押さえているラディンは思った。レナードも、少しぐらいは察してくれてもいいのではないか? と思うが、これは、自分で下剤を飲んだ結果であるのだ。
レナードの事を怒るのはお門違いだ。そう思い直し、ラディンはレナードに向けて言う。
「ちょっと胃腸カゼみたいだ……」
ラディンが言うと、レナードは顎に手を当てて考え出した。
「今日の正午の決闘は……大丈夫か……?」
ある意味準備は万全である。調子が悪いのは、シャムロックの策略によるもの。シャムロックは、この状態のラディンを見てほくそ笑んでいる事だろう。
「騎士ラディン。そんな様子で大丈夫か?」
その声をした方を見ると、顔をニヤつかせたシャムロックがいた。その後ろにはアディセもいる。
『アディセと一緒に、俺の様子を確認に来たのか……』
大体そんなところだろうと考えたラディンは、シャムロックの陰険さに、少しイラついた。
だが、そんな事は顔にも出さず、シャムロックを見つけたレナードとラディンは、敬礼をした。
「その様子じゃ、正午の決闘は、無理そうだな? 棄権するか?」
『正直、そうしたい……』ラディンの本心はそれであった。
一瞬、『棄権をすればそれでシャムロックの勝ちになるから、それでもいいかな?』などと考えそうになったが、すぐにその考えを振り切る。
シャムロックは勝負に勝ちたいのではなく、ラディンに負けたままなのが嫌なのだ。
シャムロックは、ラディンの事を自分の剣で叩きのめす事を望んでいるのだ。
「決闘から逃げる事は、騎士の誇りが許しません」
ラディンはとりあえずそれっぽい事を言っておく。
「田舎出で、つい数日前までただの庶民だった君が、騎士の誇りなんて語るのかい? 本物の騎士である私から見れば、そんな誇りなんて無いも同じだ」
『ジョークのセンスが無いようだな……何が本物の騎士だ……人に下剤を盛ったくせに……』
腹が痛いと、イライラする。シャムロックの言葉を聞いて、カンに触ったラディン。だが、ここで怒ってしまってはいけない。怒りを抑えながらラディンは言う。
「私はまだ未熟です。ですが、この誇りは本物であると思っています。いくらシャムロック様でも、それを侮辱する事は許しません」
イライラで、視線が鋭くなっているラディンは言う。




