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剣と厨房。二人の成り上がり。  作者: 岩戸 勇太
ラディンの場合 5
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ラディンの場合 23

「騎士様なら正々堂々と戦うべきではないんですか……?」

 こんな卑怯な手を使うなんて、許せないと思うアディセ。

「十分正々堂々さ。勝負を前にして、決闘の前に事前の準備をする事の何が卑怯だと言うんだい?」

 そう、詭弁を使うシャムロック。

 シャムロックは、にやりと笑う。自分がさも上手いことを言い、自分の行為を正当化した事に対して、自分で酔っているといった感じだ。

「こんな卑怯なことをして勝って嬉しいんですか……?」

「勝つためには非情な手段をとる事なんて、十分あり得る事だよ。明日の勝利もその努力の賜物だ」

 シャムロックは、また詭弁を使う。

「ですが……」

「もういい、君の意見なんて、最初から聞いてない。この王宮をクビになりたいのか?」

 そう言われては、もう何も言えないアディセ。

「わかりました……」

 アディセがそう小さく言うのに、シャムロックは頷いた。

「それでは、手はず通りに頼むよ」

 シャムロックは、そう言い残して先に歩いて行った。

 アディセはその後ろ姿を見ながら、小さな薬袋を、ギュッ……と握った。


「また……こんな事ばかり……」

 レクステは言った。

 またも隊長の下着を洗わされているレクステ。

「こんな姿、父さんや母さんには見せられないな……」

 黄ばんだ、隊長の下着に嫌悪感を感じつつも、その汚れを落とすために、必死になっで汚れた部分を擦っている自分が、とても惨めに思えた。

 周囲にいるのは、使用人ばかり。使用人達は自分の事をまるで腫れ物に触るかのような扱いをする。

 こんな所で親衛隊の騎士が働いているのは場違いなのだ。

 周囲から向けられている視線には、どのような気持ちがこもっているのだろうか? 自分を邪魔だと思っているのか? それとも哀れなものを見る目で見ているのか……?

「あいつだったら、こんな事でも上手くやるんだろうか……?」

 自分に赤っ恥をかかせた、憎い敵の事が頭に浮かんだ。隊長に嫌われているという話を聞いたときは『自分と同じなのか』と、思って親近感なども沸いたのであるが、自分の事をさらし者にした事で、隊長に気に入られたらしい。

「結局私が損をしただけじゃないか……」

 そう考えると、悔しくてたまらなかった。

「こうなったら、恥も外聞も関係ない……」

『あの、不謹慎で、腹黒くて、生意気にも庶民の出で親衛隊になったというあの男についていこう。自分の身分なんかをエサにすれば、あいつだって乗ってくるだろう』

 これが、今のレクステに思い浮かぶ、最大の『策略』であった。

『こんなの、お粗末な策略に見えるのだろうな……あいつにとっては……』

 あいつ自身には、恥をかかされた恨みがすこしばかり残っているが、今となっては、あいつの懐に飛び込むしかない。

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