ラディンの場合 16
七部 レクステの言葉。
「これで、約束は果たしたぞ。お前との付き合いはこれっきりだからな」
それは、城下町の喫茶店で、ラディンとレクステが一緒のテーブルに座っている時だった。
「約束? そこだが、レナードはお前に何を言ったんだ?」
ラディンが言うと、忌々しげに「ふん……」と、一回鼻を鳴らしたレクステが言う。
「『一回でいいから、一緒にお茶をしたい』とか言っていたぞ」
レナードはそんなふうに言っていたらしい。これでは、レナードには罪はない。これだけの事で、レクステがあんなに怒るなどとは思わないものだろう。
ラディンは、レナードの事を思い出す。
「お茶をするだけで、決闘に勝たなきゃならんか……お前は一体、どこまでお高く止まっているんだよ……」
「私は、高貴な出だ。田舎から出てきた下賎な男など、私と会話をできるだけ、幸運だと思え」
「その下賎な男に負けたくせに……」
「ふん……」と、鼻を鳴らしながら言うラディン。それを言うと、レクステは、「キッ……」とラディンの事を睨んだ。
「あんな卑怯な真似を使うとは、騎士の風上にも置けない奴だ! あんなものを負けとは認めん!」
「完全に大負けだろう? お前泣いちゃってたし」
「きーさーまー!!」
レクステに、挑発をするラディン。レクステはそれに、ものの見事に乗ってしまっている。
「可愛い奴だな……」
ニヤリと笑ってレクステに向けて言うラディン。
「なっ……何をいきなり……私が可愛いなどと……」
レクステは驚きながら言う。
「そうやって、俺の言葉一つで、泣いたり、笑ったり、恥ずかしがったり。もうちっと、人の煽りに耐性を付けたらどうだ?」
ラディンはまたも笑いながら言う。
「なっ……なんだと! 私をバカにしたのかぁぁあぁ!」
そう言い、レクステは、机越しにラディンの事を殴るために拳を振り上げた。
ラディンはそれでも微動だにしなかった。
レクステの拳は、ラディンにまでは届かず、ラディンの前でとまってしまう。
「この距離で届くわけがないだろう」
ラディンは言うと、ジュースのコップからストローを抜いた。
「こういう物を、何か持たないと」
そう言って、ストローの先でレクステの額をつついた。
怒りは当然覚めていない。だが、これ以上やっても手玉に取られるだけだと感じたのか? レクステは椅子に座った。




