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剣と厨房。二人の成り上がり。  作者: 岩戸 勇太
フルータの場合 3
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フルータの場合14

 あの時のセルダの態度を見ると、何か危険な事でもあるのか? とも思うが、レイティと会うだけのことで、そんなに危険な事なんてあるはずがない。

 それに、フルータだって馬鹿ではない。レイティがフルータに対してアプローチをかけている事は、十分分かっている。

 それに、レイティがいいとこのお嬢だというのなら、それを断る理由はない。

「今日は月夜。星の光を浴びながらなんて……レイティもロマンチストだな……」

 これから、レイティがどのようなアプローチをかけてくるか、楽しみでもある。今日は美しい満月だ。星の光も強く、足元だって、よく見える。

「おまたせー。どうよ、私の自慢のドレスは?」

 いつもどおりに、快活な声で言ってくるレイティ。姿はまるで別人のようであった。

 いつも、後ろで束ねている髪をほどいて下に伸ばし、頭には綺麗なティアラを付けていた。そして、着ているのは、パーティで使われるようなドレスであった。

「綺麗だ……」

 素直にそう言ったフルータ。

 そう聞くと、いきなり顔を赤くして驚くレイティ。レイティは、すぐに恥ずかしげにして顔を伏せた。

「ばか……恥ずかしいじゃない……」

 レイティは言う。フルータはレイティに向けて歩いて行った。

「髪を触らせてもらっていいかい?」

 フルータが言う。それに恥ずかしげにしながら、自分の髪をフルータに向けて出す。

「そうじゃなくて……」

 フルータはレイティの後ろに回った。

 そうして、レイティの髪に指を通した。

「サラサラで触ってて気持ちいい……」

「髪が好みなんて、変態だね……」

「すっごい健全だと思うけど?」

 髪を撫でながら言うフルータ。

 レイティはクルリと振り返った。

「じゃあ、今度はこっちの番だよ」

 そう言うと、レイティはおもいっきりフルータに抱きついた。

「このまま、キスにまでもっていければいいんだけど……」

 顔をフルータに近づけたレイティは言う。フルータの目を見つめながら言うが、すぐに目を伏せてしまう。

「やっぱり、恥ずかしいよ」

 顔を赤くしているのがフルータには見えた。

 フルータにとっては、こういう顔をされると、いたずらをしたくなる。

 ニヤリと笑ったフルータは、レイティの顎を掴んで、顔を上げさせた。

 緊張で唇を引き結び、目を閉じたレイティの顔が目前にあるのを確認すると、フルータは目を思いっきり瞑るレイティの額にキスをした。

「唇にキスでもすると思った?」

 ニヤリと笑いながらフルータは言う。レイティは、それを聞いて顔を伏せて言う。

「意地悪……」

 それを聞いて、幾分マン毒をしたフルータは、レイティの頭をかきなでたのだった。

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