フルータの場合14
あの時のセルダの態度を見ると、何か危険な事でもあるのか? とも思うが、レイティと会うだけのことで、そんなに危険な事なんてあるはずがない。
それに、フルータだって馬鹿ではない。レイティがフルータに対してアプローチをかけている事は、十分分かっている。
それに、レイティがいいとこのお嬢だというのなら、それを断る理由はない。
「今日は月夜。星の光を浴びながらなんて……レイティもロマンチストだな……」
これから、レイティがどのようなアプローチをかけてくるか、楽しみでもある。今日は美しい満月だ。星の光も強く、足元だって、よく見える。
「おまたせー。どうよ、私の自慢のドレスは?」
いつもどおりに、快活な声で言ってくるレイティ。姿はまるで別人のようであった。
いつも、後ろで束ねている髪をほどいて下に伸ばし、頭には綺麗なティアラを付けていた。そして、着ているのは、パーティで使われるようなドレスであった。
「綺麗だ……」
素直にそう言ったフルータ。
そう聞くと、いきなり顔を赤くして驚くレイティ。レイティは、すぐに恥ずかしげにして顔を伏せた。
「ばか……恥ずかしいじゃない……」
レイティは言う。フルータはレイティに向けて歩いて行った。
「髪を触らせてもらっていいかい?」
フルータが言う。それに恥ずかしげにしながら、自分の髪をフルータに向けて出す。
「そうじゃなくて……」
フルータはレイティの後ろに回った。
そうして、レイティの髪に指を通した。
「サラサラで触ってて気持ちいい……」
「髪が好みなんて、変態だね……」
「すっごい健全だと思うけど?」
髪を撫でながら言うフルータ。
レイティはクルリと振り返った。
「じゃあ、今度はこっちの番だよ」
そう言うと、レイティはおもいっきりフルータに抱きついた。
「このまま、キスにまでもっていければいいんだけど……」
顔をフルータに近づけたレイティは言う。フルータの目を見つめながら言うが、すぐに目を伏せてしまう。
「やっぱり、恥ずかしいよ」
顔を赤くしているのがフルータには見えた。
フルータにとっては、こういう顔をされると、いたずらをしたくなる。
ニヤリと笑ったフルータは、レイティの顎を掴んで、顔を上げさせた。
緊張で唇を引き結び、目を閉じたレイティの顔が目前にあるのを確認すると、フルータは目を思いっきり瞑るレイティの額にキスをした。
「唇にキスでもすると思った?」
ニヤリと笑いながらフルータは言う。レイティは、それを聞いて顔を伏せて言う。
「意地悪……」
それを聞いて、幾分マン毒をしたフルータは、レイティの頭をかきなでたのだった。




