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剣と厨房。二人の成り上がり。  作者: 岩戸 勇太
フルータの場合 2
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フルータの場合8

 料理長が言うには、この宮廷にはパティシエが居る。だが、そのパティシエは職人気質の人物で、お菓子を作ってほしいという注文が来たものの、それを拒否したのだという。

 注文をしたのは、親衛隊の騎士の一人だと聞いたとき、そのパティシエは、こう言ったのだという。

『私の菓子は、高貴なものだ。剣を振り回して遊んでいるような奴らに、私の菓子は作らない』

「職人気質と言うか、ただの言いがかりに聞こえますが……」

「君もそう思うかい? なんかパティシエの彼は、昔から戦士の類が嫌いらしいんだ。なんでも、息子が徴兵をされて戦場に行ってしまったとかで……」

 そういう事情があるのであれば仕方がない。

 そう考えたフルータは、潔く言う。

「私はお菓子を作ることはできます。作るお菓子に注文などはありますか?」

 その事を引き受けたフルータ。料理長は『ほっ……』と胸をなでおろした。

「なんでも女性が喜びそうなものがいいらしい」

「親衛隊が女性をおもてなしねぇ……」

 それを聞くと、フルータもやる気が削がれた。王宮の安全を守るための親衛隊が、業務中に女をはべらせるのか……などと考えてしまう。

「下世話な考えは無しにしよう。君は、お菓子を作ってくれればそれでいい」

 料理長が、フルータの考えていた事を読んだようにしてそう言った。

「失礼しました……」

 そう言い、小さく頭を下げるフルータ。『素直なのはいいけど、君は堅物すぎるな』などと、料理長が言うのを聞き、フルータは固まった。フルータは、気を取り直して言い出す。

「パティシエの厨房は使っていないんですよね?」

 オーブンなどの機材はそこにしかない。そこに行けば十分な量の材料もあるはずだ。

 お菓子を作るには、小麦粉や砂糖が必要になるのだ。厨房にも砂糖や小麦粉くらいはある。だが、お菓子を作るとなると、専用の小麦粉なんかも必要になってくるので、どうしてもパティシエ用のキッチンが欲しいのだと、フルータは言う。

 そう言って、料理長をいいくるめたフルータは、パティシエ用のキッチンを使わせてもらうことになったのだ。

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