ラディンの場合 8
「まったく、キミはいいよねぇ。可愛いお世話係がいるなんて……」
レナードが言い出す。ここは、ラディンも予想をしていた反応だ。
「なら、会ってみるか? アディセと二人きりになれるように手配をしてやるぞ」
「そうだな……」
ラディンが言うのに、レナードは困ったような顔をしてそう言った。
「まあいいじゃないか。あの子には会ってみたいだろう?」
続けてラディンは言う。
レナードと仲良くするのためには、ここでレナードとアディセを会わせてみるのがいいだろう。自分は、かわいいだけのメイド一人の事なんて興味がない。
「そうだね……どうしようかな?」
レナードの様子は、『行きたい』と言っているような感じだ。
『さっさと決めろよ……どうせ、行きたいんだろう?』
心の中でそう考えるラディン。
「レナードとラディン。訓練中だぞ、口を慎め!」
隊長からそう言われ、ラディンとレナードの二人は敬礼をして、同時に言った。
「はっ……! 失礼しました」
忌々しそうな感じの隊長。それを見て、ラディンは隊長のご機嫌を取るためにはどうすればいいか? 考えた。
「キミにとっては、彼女はただのお世話係なのか?」
昨日と同様、ラディンとレナードの二人は、一緒になって王宮の巡回をしている。そこで、レナードは言い出した言葉だ。
「ああいう子は好みのタイプじゃなくてな……」
とりあえず、そう言うラディン。メイド一人が可愛いなどとか、そんな事には興味がない。だが、それを口にすると、またレナードがへそを曲げそうなので、そう言った。
「なら、どんな子が好みなんだい? ボクがいい感じの子を探してきてもいいよ」
さらにそう言ってくるレナード。
『ここは本心を言ってもいいところだろう』と、考えるラディン。
「あの、隊長のお気に入りの……」
「レクステの事かい?」
あの子の名前はレクステというのか……
そう考えながら、次の言葉を探すラディン。興味のない話に合わせるのは苦しい。などと考えているくらいだ。
「あの子はやめたほうがいい。『上司の女に手を出す』なんて、出世の道を捨てる行動の典型的なものじゃないか……」
レナードが言う。
「そこが問題なんだよな……」
容姿がどうとかという事には興味がないラディンとは、レナードとの会話は合わない。だが、レナードはそんな事を感じていないようで、さらに聞いてくる。
「ボクとキミの仲じゃないか。あの子よりも、もっといい子を探してきてもいいよ」
肩を組みながらそう言ってきたレナード。だが、すぐに肩から手を離してレナードは先にまで歩き始めた。
「とにかく、アディセと一緒になれるようにセッティングをするのだけは忘れないでくれよ」
そう言い残したレナード。嬉しいのが態度に出ている感じで、軽やかな歩き方で先に向かっていく。




