ラディンの場合 7
次の日、朝の朝礼をする。
ラディンは、朝の朝礼の言葉を、みんなを代表して言う事になった。
隊長から、直々の指名があったのだ。とにかく、ラディンに恥をかかせようとしている隊長の意図が見える。だが、ここで、トチってしまえばただのバカだ。
ラディンは朝礼の言葉を十分に記憶をしていた。
「我々は、この聖都であるグラセランドの平和と秩序を守りつつ……」
ラディンがそう淀みなく言うと、みるみる隊長の顔が険しくなっていった。
『どうすりゃいいんだよ……』
これ以上は、隊長親子の怒りを買うだけだ。だが、トチるようなバカな真似はできないし……
ラディンは、そう考えながら、朝礼の言葉を続けていった。
「初めてだってのに、よくやるじゃないか……隊長も褒めてたぞ」
朝礼が終わり、訓練に入るラディン。そのラディンの隣に立ったレナードが言う。
「人の気も知らないで……」
ラディンは言った。隊長がラディンの事を褒めていたというが、どんな褒め方をしていたのか? それが気になるところである。
「レナード。そういえばキミに朗報があるぞ」
隊長の事は、今考えてもしょうがない。今の狙いはレナードだ。そう考えたラディンは、ニヤリと笑いながらレナードに言った。
レナードは、それを聞くとラディンの事を見た。
「君が昨日ご執心だったメイドなんだが、俺の世話係になったぞ」
「ご執心って……そこまでじゃあ……」
レナードは、ラディンの言葉を聞いてそう言った。
『嫌味くさい言い方になったか……?』
レナードの反応を見て、そう考えるラディン。自分に口の悪さに、ある程度の自覚はあるものの、これを直さねばならないと思うところであった。
「アディセって子が俺の世話係につくことになったんだ。あの時のメイドの子だ」
それを聞くと、レナードは首をかしげた。
「なんで君には世話係なんて、ついているんだい?」
「俺もそれをレナードに聞こうと思っていたのだが……」
レナードの口ぶりから考えると、普通の親衛隊の騎士に、世話係がつく事などありえないようだ。
「ボクの時も世話係なんてなかったよ」
「そうか……」
ラディンはそれを聞いて考えた。
『この特別扱いの理由は……やはり、隊長からのさしがねなのかも……』
ラディンは薄々考えていた憶測があった。
あの世話係は、親衛隊の隊長のさしがねなのではないだろうか? 一人、自分の手駒をずっとラディンにつけ続けて、ラディンの行動を逐一監視をするという事だ。
『そうなれば、あの子のいる前では気が抜けないな……』
今は、アディセには、部屋の掃除を言いつけてあった。ラディンの部屋は、つい少し前まで物置として使われたいたというカビ臭い部屋である。掃除をすれば、少しぐらいは過ごしやすい部屋になるだろうと思ってのことであったのだ。




