決戦 2
フルータとラディンは、それぞれの敵に相対した。お互いの相手の剣の間合いの外に立つ。
だが、相手に時間はないはずだ。隊長の方の騒ぎは、そのうち収束する。それが終わったら、こちらの方に、敵がなだれ込んでくる。
「仕掛けてくる様子はないな……」
そう、ラディンが考えたところ、敵の背後に人影が見えた。
大きく剣を振りかぶり、敵の背中を、レクステが剣で切りつけたのだ。
「かかれ!」
ラディンがそう合図をすると、レクステとフルータとラディンの三人が、同時に残った敵にかかっていった。
三方向から、剣を向けられた敵は、あえなく倒れていった。
「まだです!」
その声と同時に、サリルはテントの中から出てきた。魔術師の手を引いている事から、どうやら、テントの中に敵が入ってきたのだろうと推測するラディンとフルータ。
サリルはテントの入口に矢を向けて、クロスボウを構えた。テントの中から、人影がでてきたのを確認すると、すぐに矢を放った。
腹に矢を受けた敵は、膝をついて倒れていく。
クロスボウを下ろしたサリルは、周囲を見回した。
「終わりですかね……?」
魔術師に怪我はなく、敵も続いてはやってこず、これで、一旦敵は抑えられたはずである。
「みんな! 今終わったの!」
最後にレイティがやってきた。
「まったく……のろまなグズですね。今更来ても遅いです。もう全部終わりましたよ……」
サリルがそう言う。だが、レイティはその言葉を無視してフルータにかけよった。
「あなた……どういう……」
そうサリルが言うが、レイティはフルータの胸に飛び込んでいった。
だが、フルータは盾を前に出してそれを阻む。
そして、レイティには見えないようにして、サリルに目配せをした。
「感動の再会は後だ……僕らも隊長の護衛に向かうよ」
フルータはレイティに、先頭になって隊長のテントに向かうように促した。
「なんで、私が先頭に……?」
レイティは言うが、フルータとサリルはそれでお互いに目配せをした。
「司令官のテントの場所がわからないのかい?」
レイティはそれを聞き、フルータの事を見つめた。
「分からないわけが……」
そう、唸るようにして言うレイティ。サリルとフルータの二人に睨まれたレイティは、後ずさりをしていった。
フルータはレイティの前に出る。レイティの手を取り、左手の裏に隠しているナイフを取り上げた。
サリルが、おもむろにレイティの髪を掴む。
「やっぱり……」
サリルが力を込めて引き剥がすと、レイティの髪がカツラであった。
レイティの持たない、ブロンドの髪が、カツラの中から出てきたのだ。
そして、ラディンが懐から手錠を取り出す。レイティのフリをしてやってきた、最後にやってきた敵は、縛ってその場に転がしておき、ラディン達は隊長のテントに向かっていった。




