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振り返り(仮題)

 暗闇の中で男の意識がふと目覚める。

 あたりをキョロキョロと見回している男の年齢は20歳位だろうか?

 衣服は酷くボロボロとなった軍服に身を包み、左腕の肩から先の袖はちぎれたように破られている…。 どこかの戦場で戦ってきたと思われるが、不思議な事に男の体は何一つ傷を負ってはいなかった。

 すると、男の真横でスポットライトの光が当たるように場所の一部がさらけ出される。そこに悲しそうな男の子が現れ自身に向かって話かけられる。男は自分の身に何が起きたのかを理解し、冗談交じりに半分皮肉を込めて言葉を返す。


「そんな顔すんなよ。知ってるって…、死んだんだろ?俺…」


 男の子は返された言葉に対し、少々ムキになった表情をし顔を膨れ上がらせ、じっと男を見つめている。男はなだめるように言葉の続きを話す。


「冗談!冗談!分かってるって、言いたい事はさ…、覚えてるよ。たしか最初に会ったのは3、4歳位の時だったよな?」 


 小さくうんと頷くと男の子はその場からスゥーと消え、男はその場に一人取り残される。

 自分は戦争の最中死んだのだ、敵と撃ち合いになって…。しかし、男の子が伝えたい事はそんな事ではない。自分には良く分かる、何故なら…。


***

 

 ひっそりとした標準的な公園に年端もいかない男の子と女の子が二人時間を気にせず砂場で遊んでいる。女の子の方が姉のような感じで男の子の面倒を見ているような雰囲気だった。その内砂場にも飽きてきて、設置されてあるブランコに足が向かう。女の子は男の子を止めようと声を掛けるが、良い所を見せたいのか遊び方を知らないブランコに足を掛け転び、更には反動で動いたブランコに頭をぶつけその場で泣きじゃくる。女の子は男の子をあやすように慰めると笑顔でスベリ台を指さし二人で向かう。ブランコにうまく乗れなかった男の子は悔しかったのか、大人ぶった表情でふてぶてしい表情で女の子の後をついていき、まだ目にはうっすらと涙を浮かべていた。

 楽しく遊んでいた時間も終わり、夕暮れ時になった頃に二人の母親が迎えに来る。母親同士何か色々と喋ってはいるが何分まだ年齢が小さいため内容は良く分からなかった。それぞれの親に手を引かれ二人の子供は帰路に着く…


***


「悪いな…、最初の頃の記憶ははっきりと覚えてないんだ。しょうがないだろ?だって半分自我が無かったんだからさ…。」


 音一つしない暗闇の世界で男は言い訳じみた様子で話す。残念そうな表情を浮かべた男の子に対し期待を込めるように明るい表情で答える。


「そんな暗い顔すんなよ。次だ、次に行くぞ!次は良く覚えてるはずだからな…」


 差し掛かった光が静かに消え、少し離れた場所で再びスポットライトの様な光が映し出される。

 男はゆっくりと歩きだしその場所へと向かう。今度は8歳位のわんぱくそうな少年が男を出迎えた。

 

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