はじまりの出逢い
プロローグってどこまでがプロローグなんだろう...
その後、那津は琴羽に男の声や姿について質問したが、
琴羽には、声は聞こえていなかったし、姿も見えていなかった。
(あの男は何だったんだろう?)
朝から男子と格闘していた那津と琴羽は急いでいた。
いつもは余裕で学校に間に合うのだが、今日は時間がかかり遅くなってしまったのだ。
そう、
二人は今、遅刻するかしないかの瀬戸際に立っている。
「ぎ、ぎりぎりセーフ...?」
「ゼェ...」
「残念だったね、今日はアウト。」
那津と琴羽が息を切らして校門を潜ると、校門の横から男子の声が発せられた。
「...見逃してくださいよ、桐妻先輩。」
「後輩のことを思って、ね?会長ー」
声の主は、
那津と琴羽が通っている学校、華香崗高校の生徒会長である桐妻 泉矢だった。
彼は容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能という完璧な人で、男女問わず好かれている。
...しかし、昔は名の知れた不良だったという噂が流れたことがある。
当時の彼は「さあ。九条さんたちはどう思う?」と氷の笑みを浮かべあやふやにしたが、
その笑みとドスの効いた声では、真実は明確だった。
二人が「逆らうまい」と決めたのは、この時である。
「だーめ。この後にだって、また九条さんに倒された男子生徒たちがボロボロになって登校するんだよ?減点が少ないことに感謝してほしいよ。」
「...すいません。」
那津は思わず謝ってしまった。
試合を申し込まれたとは言え、完膚なきまでにたおしたのは那津である。
琴羽も気の毒とはいえ、どうしようもないので苦笑いするしかない。
「さてさて、二人とも早く教室に行くんだ。もうすぐ先生たちが教室に向かう時間だ。」
「!!分かりました。」
「傷ついた男子には優しくお願いします。」
那津と琴羽は再び急ぎ足で教室へと向かった。
「...もうすぐ、だな。」
那津と琴羽の姿が見えなくなると、体育館の物陰から白衣の男性が現れた。
「今は職員室で会議では?神院教諭。」
泉矢は男性に少し視線を送ったが、すぐに校門へと戻した。
男性は少し口を緩ませる。
「酷ェな、従兄なのによ。」
「知りませんよ、ここでは教師と生徒の関係。だろ、大智。」
神院 大智は笑う。己と従弟と、走り去っていった那津と琴羽の運命に。
「やっと、運命の歯車が動き出す。危険な人(虫)からお姫様を守るか。」
―運命の幕は上がったばかりー
「てめ、呼び捨てすんな。」
「誰もいないんだからいいだろ。めんどくせェんだよ、敬語とか。」
この後、二人が言い合いになったのはまた別の話。
どうでしたでしょうか??
前作とは全く異なっていますが、桐妻はご健在!!
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