はじまりの始まり
ども、再び伊藤です。
前回の想武伝とは変わっていますが、元は同じです。
どうか、温かく読んでください。
―時空の狭間に落ちた時、道が繋がる―
―大切なモノを守りたければ強くあれ―
「おはよ~、那津。今日も可愛いネ。」
「ちょっと!急に抱きついてこないでっていつも言ってるでしょ!」
いつものようにふざけ合って笑う日々が一瞬で壊れてしまうなど、誰が思うのだろうか?
平成**年4月*日
九条那津は(一応)親友の信塚琴羽と、ひらひら散る桜の並木道を歩いていた。
「それにしてもナっちゃん、災難だね~。っていうか人災? 高校に入ってもサンタと一緒で。しかも先生の一言が
『男は強くなければ女を守れん。だから九条那津の事が、好きな男は九条那津と俺に勝ってから、九条那津に告白せよ』だもんね~」
琴羽ことコンは面白がる・呆れるような顔で、山本先生ことサンタの真似を熱演した。
「本っ当にサンタは人災でしかないよ...その一言でどれだけ苦労している」
「九条さ~ん、俺と決闘してください!!」
遠くからたくさんの男子達が地鳴りを響かせ、那津がすべてを言う前に叫んでこちらに来た。
那津はイラッとしながらも剣道で使う竹刀を取り出し、高らかに言った。
「遠慮はいらないですから。貴方達の想いはどんなものか見せてください。」
―数分後―
「ふんっ。あんなに真剣だったから骨ありそうだったのに、結局こんなものかぁ。」
琴羽は哀れむような表情で言った。
「勝てるわけないよ...ナっちゃんは全国女子剣道大会に出場してるんだから。」
那津の家は剣道道場で三代にも続く列記とした道場だ。そして那津はそれを誇りに思っている。
「でもコンも負けないと思うよ。」
「フフフ...。本当にあの時はネ。お陰でやる気がでましたとも。それにナっちゃんに惚れ直したヨ~。」
琴羽が熱の籠った目で色っぽく笑った。でも那津はスパンと一刀両断した。
「ごめん、私そんな趣味ないから。それにアリでもコンの家の人が許してくれないんじゃない?家の人が認めた相手じゃないと。」
琴羽の家は日本文化重視の家の家元だ。
故に変な琴羽にも、茶道・歌道・花道・生け花・舞踊という和という和を叩き込ませている。
武道も和に入っているため、完璧にこなしている。
偶然、近所に道場を那津の家があったため、琴羽は小さい頃に九条道場の弟子となった。
―コタエヨ―
那津と琴羽がじゃれあっている時、ふと那津の頭に声が響いた。
那津は声の主を探すため、周りを見渡した。
しかし、どこにも姿は無かった。
サァ...
急に桜吹雪が舞った。
那津が視線を前に戻せば、周りの桜よりも咲き誇っている桜の木が目に留まった。
そして、その木の陰には...
―着物のような服を着た男がいた―
―来い―
その男の口が動けば、那津の頭にダイレクトに声が響く。
那津は男に釘付けになった。
異質な雰囲気を醸し出しているのに、神聖と感じさせる。
(何なの、この男?琴羽は...琴羽は気づかないの?)
那津が琴羽に目をやれば、琴羽は笑いながら話している。
そしてもう一度、男がいた場所に目を移せばそこにはもう。
―男はいなかった。
どうでしたでしょうか?
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