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余香
初夏の午後 白雨に宿る 書肆の軒
隣り合う肩 微かに触れる
通り過ぎる マルジェラの香り 振り向けば 涼しき瞳 あの時の君
夕暮れに 優しく絡む 長い指
静寂の古道 響きあう、鼓動
マルジェラの 香り溶け出し 絹の泡
鼻先に触れ 吐息かさなる
灼熱の ベンチに座り 二本目の
コーヒー飲み干す 君はまだこない
『ごめんね』の 文字に潜めし 深淵の
影紛らすよう 愛紡ぐきみ
髪にかかる 優しい吐息は 狂おしく
心の隙間 甘くいたぶる
微かなる 指に残りし 細い跡
隣で眠る 知らない君が
マルジェラの 残り香むせぶ ワイシャツに
そっと忍ばす シルバーのピアス
秋の風 吹き抜けていく 書肆の軒
あの温もりが 肌に残りぬ




