8.覚醒
「あ、アンタ、一体どこから……」
飛び出してきたみずきを見て、リンプーが言葉に詰まる。
ダントン王も驚いている。
「馬鹿な。
この謁見の間は、魔法障壁で囲われている。
壁の強度も考えられる限り最強なのだ。
どうやって入って来たのだ?」
「いや、この部屋の後ろに抜け穴があったから……」
みずきは、遠慮がちに答えた。
「だからって、出てこなくても……
アンタのことは馬鹿な奴だと思っていたけど……
ホントにホントにバカな奴だったんだ。
そんなバカな奴が大好きだったんだけど……
ここは、我慢してほしかったよ」
リンプーは、呆然としている。
「ご、ごめん。
でも……、自分だけ助かるなんて……
友達を見捨てるなんて、できなかったんだよ」
「あ……ありがとう。
でも、アタイなんかのために……」
リンプーは涙をこぼした。
だが、気を取り直して忠告する。
「に、逃げて、みずき……」
「えへっ、逃げるわけないじゃん。
友達の大ピンチなのに」
みずきは、親指を立てて見せる。
ダントン王は、みずきを注視する。
「うむ、この部屋に忍び込むほどの者だから、どんなすごい奴かと思ったら、たったレベル6の雑魚娘ではないか」
「雑魚だって分かってるんなら、見逃してよ。
リンプーちゃんも一緒に」
「ただの雑魚なら、この場所にいることが出来るはずがない。
どの程度の雑魚なのか、確かめてやる」
王は、そう言うと杖を近くにいる武者に手渡した。
「確かめるって?」
みずきの質問に、ダントン王はニヤリと笑う。
「レベル6の雑魚を杖で殴ったら、一発で死んでしまうだろ?
死なないように、いたぶってやるんだよ」
ダントン王は、親指と人差し指をパチンと鳴らした。
音と同時に、空気の塊がみずきの顔面を直撃する。
みずきは、訳も分からずに顔を上にして後ろに倒れ込んだ。
鼻血が出ている。
「そう。こんな強烈な攻撃をリンプーちゃんに食らわしていたのね。
許さないから」
相手がすごく強いことは分かった。
だが、バカにされていることも理解した。
ちょっと悔しかったので、勢いよく立ち上がった。
「フンッ、効いてないね。
い、痛くもかゆくもないね」
「フハハハ
効いてるじゃないか。
よろめいているぞ。
ふらついているぞ」
ダントン王は、すごく嬉しそうだ。
そして今度は、歩み寄って直接デコピンを食らわした。
また、みずきは吹っ飛んだが、立ち上がる。
王は距離を詰めると、今度は立ち上がった肩をドンッと押した。
みずきは、クルクルと回転しながら膝をついた。
だが、また立ち上がる。
「みずき、もういいから倒れていなよ。
ダントン、アンタはアタイを殺したいんだろ。
そんな雑魚は放っておけよ!
アタイを攻撃しろよ!」
「フハハハハハ
この娘もいたぶれるし、それを嫌がるネコ女もわめき散らす。
こんな面白いことを止められるか」
「リンプー、私は大丈夫だから。
雑魚には、雑魚の……意地があるんだから」
みずきは、よろけながら立ち上がった。
「フハハハハ、ケンカを売る相手を間違えたな」
王は、本当にうれしそうに笑う。
そして、木でできたであろう扇子を取り出して、みずきの頭を上から叩く。
みずきは、崩れ落ちるように倒れるが、また立ち上がった。
頭頂部にケガをしたようだ。
頭から血が流れている。
「ハッハッハ
しかも、この根性。
いじめ甲斐のあるやつだ」
王は扇子が折れるほど、たたきにたたいた。
もうみずきは、話すことも出来ない。
めまいがする。目が回る。
ガックリと膝をついた。
「残りヒットポイント1、もうダメ
お父さん、お母さん、ごめんなさい。
私、ゲームの中なんかで死んでしまうかも。
でも、私の存在なんて、小さなモノだから。
世界は何も変わらないんだろうなあ」
みずきはつぶやくが、声も出ていない。
『許さない……』
みずきの頭の中に声が響いた。
「えっ?」
『許さない……』
「えっ、何? どういうこと?」
みずきの意識が痛みのせいで遠のいていく。
「雑魚相手に、いたぶるような行動。
王か何か知らないけど、傲慢で不遜な態度。
絶対に許さないから。絶対に絶対に、ゆ・る・さ・な・いーッ」
みずきが叫びながら、体をスッと移動させる。
ダントンの扇子が、空振りする。
「ホホーッ、最後の力を振り絞りましたか。
でも、もう一撃で死んでしまいますね。
覚悟はよろしいですか?」
「いや、アンタの攻撃は二度と当たらないよ。
つまり、私が死ぬことはないってことだ」
みずきは、よろけながらもハッキリと言い切った。
「何を下らんことを」
ダントンは、再度折れた扇子で殴り掛かる。
だが、すべて空振りに終わる。
「ウフフフフ、ケンカを売る相手を間違えたね」
みずきが、不敵に笑う。
次のお話は、9月26日(金)投稿の予定です。




