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6.友情の証

 また、リンプーから渡されたパンとハムをかじったみずきは、声を上げる。

「ホントーに美味しいよ。

 お腹が空いているからかな?

 いや、絶対違うと思う。

 あっ、そうだ」


 みずきは、ベルトに付いたポケットをまさぐる。

「あった。これ、美味しいパンとハムのお礼にあげるよ」

 その手には、ネックレスがあった。

 ウインクするネコの顔の飾りが付いている。


「えっ、いいのかい?

 なんだか可愛いし、ちょっと魔法強化エンチャント効果もあるみたいじゃないか」


「うん。

 今、私が持っている一番上等なアイテムだからね。

 友情のあかしだよ」


「友情って、それならアタイも……」


「いやいや、これはパンとハムのお礼だから。

 何か返してもらったら、もらい過ぎになっちゃうよ」


 それを聞いて、リンプーは手に持っていた指輪を引っ込めた。

 すごい魔力を感じたので、もらっておけば良かったかなーと、みずきはチョット後悔した。



 リンプーは、シミジミと話し始める。

「私はさー、中身がないんだ。

 空っぽなんだよ。

 だから、みずきみたいに自分を持っている人に憧れちゃうんだ」


「中身?

 私に中身?

 自分を持っている?

 誰かと間違えていないですか?」


「ううん。

 実は、アタイはみずきのことを前から知っているんだよ」


「えっ、前から?

 私の方は、リンプーを知らないんですけど」

 みずきは、ちょっと戸惑う。


「えへへへ

 ごめんね。

 アタイは、小さなトラ猫に化けることも出来るんだよ」


「そっかー。

 確かに、トラ猫なら触れ合った覚えがあるかも」


「それで納得してくれちゃうだろ。

 アタイの言うことなんかをスッと信じてくれる。

 そういうところなんだよ。

 アタイは、ずっと生きていくのに必死でさ。

 みずきの考え方っていうのかな……、なんか、憧れちゃうんだよ」


 みずきは、そう言われて、自分ではちょっと照れるかと思った。

 でも、真面目な顔になってしまった。

「私は、多分普通じゃない。

 それが中身のせいなのかどうか、分からないけど。

 学校に行っても、クラスの人たちになじめないし……

 なぜだか、昔から人を信じることができないんだよ。

 小学校の頃に大事な人が亡くなってからかな。

 何て言うか、人と分かり合おうとすることが、とてもしんどい気がするの」


「じゃあ、アタイとのこの会話もしんどいの?」


「どうしてだろう。

 リンプーとの会話は、しんどくないんだよ。

 協力できないと、命が危険だからかな?

 それとも、リンプーは普通の人じゃないからかな?」


「ハハッ

 普通じゃないって……

 そうかもね」

 二人は、顔を見合わせて大笑いした。

 みずきは、胸が熱くなった。

 何だか、心が通じ合った気がした。



 リンプーは、ネックレスを付けて顔いっぱいに喜びを表す。

「この友情の証、大事にするよ。

 アタイは、死んでもこれを離さないよ」


「ウフフフ

 大げさだなあ」


「アハハハ

 大げさじゃないよ。

 絶対だからな」


「でも、命は大事にしてね」

 二人は、ガッチリとハグした。


 しばらくして、二人は出発した。

 また、ただただ迷宮の中を歩いていき、階段を登って、また歩いた。

 結構な距離を歩いたようだが、二人で楽しくおしゃべりしながら歩いたせいだろうか。

 あまり長い時間がかかったように思えなかった。





 もう迷宮から外に出たらしい。

 ここは、迷宮の上のお城の中で、みずきが一人で行動してもモンスターが出てくる心配は無い。

 お城の中の入ってはいけないところに勝手に入ろうとしなければ、安全だということだ。


「じゃあね、みずき。

 楽しかったよ」

 リンプーは、バイバイと手を振った。

「でも、リンプーは王様に用があるんでしょ。

 付いていけるところまでは付き合うよ」

 みずきは、微笑んだ。

「そうだな。

 じゃあ、王の謁見の間のドアの前までだけ、付いてきてもらおうかな」

 リンプーは、微笑み返した。



 いよいよ謁見の間が近づいてきたのだろう。

 リンプーから緊張感が漂い始める。

「実は、アタイ、もうみずきに会うことは出来ないかも知れない」


「えっ、どういうこと?」


「国王のご指名で来たっていうのは、前に話したよな。

 国王にお願いがあって来たんだよ。

 でも、奴は非情な王なんだ。

 無事に帰らせてもらえる保証は無いんだ」


「どうしてリンプーが指名されたの?」


「アタイは、大きな虎の獣人だ。

 獣の姿になった時、地獄の山猫軍団(ヘルオセロッツ)の中で、飛びぬけて体が大きいんだ。

 それで目立ったんだろうな」


 そんな会話をしているうちに、謁見の間の扉の前に着いた。

 扉の前には、フルプレートで身を固めた強そうな兵士が二人立っている。

 リンプーは、この兵士の一人を指さして言った。

「こいつらは、それぞれがアタイが10匹でかかったって敵わないような強さだ。

 国王は、こんなのを10人以上側近として引き連れていやがるんだ。

 それで、地獄の山猫軍団(ヘルオセロッツ)のトップは、怖気おじけづいてしまったんだな。

 国王の言いなりになって、地下にこもっているんだ」


 みずきは、背の高い二人の兵士の顔を見上げた。

 フルフェイスの兜をかぶっているので、顔は見えない。

 リンプーの10倍なのかどうかは分からないが、とにかくみずきよりもはるかに強いことだけは伝わってくる。


「要件を述べよ」

 リンプーに指さされた兵士が、無機的に聞いてくる。


「国王に謁見のお願いは届いているはずだ。

 アタイはリンプー。

 地獄の山猫軍団(ヘルオセロッツ)の代表としてやって来た」


「うむ。それで、そちらの小娘は?」


「この子は、違うよ。

 ここまで、ついてきてくれただけなんだ」


「そうか、ではリンプーだけ通って良し」

 扉が、ギイーッという音を立てて開いた。


 歩いていきかけて、リンプーが足を止める。

「あっ、そうだ。みずき」


「何?」


「ここまでついてきてくれて、ありがとう。

 アタイも、これをあげるよ」

 そう言って、みずきに指輪を手渡した。

 リンプーが真剣な表情だったのと、もう会えないかも知れないと思ったみずきは、受け取った。

「ありがとう。大事にするよ」

 魔法強化エンチャント効果もあるのだろう。

 左手の中指にはめてみると、なんだか力が溢れてくる気がした。


 なぜか、みずきの目に涙が溢れそうになってくる。

「なんか、泣きそうです」


「えっ、どうして?」


「エヘヘヘ……

 分かりません」


「ハハハハ、バカだなあ」

 リンプーは、微笑みながら手を振って扉の向こうに消えていった。

次のお話は、9月22日(月)投稿の予定です。

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