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4.地下迷宮のラスボス

 みずきは、確認する。

「あのー、敵対しないということは分かりましたけど、これから上に上がるんでしょうか?

 それとも下に潜るつもりですか?」


 リンプーは、少し困惑した表情を見せる。

「上に上がるつもりだよ。

 そうか。みずきは冒険しに来たんだったら、下に降りるのか?」


「ち、違いますよ!

 迷い込んじゃったんですから、上に上がって、一刻も早くこの地下迷宮から逃れたいです。

 じゃあ、一緒に行動しても良いですか?」


「もちろんだ。

 元々そのつもりで声をかけたんだからな。

 下に降りるって言われたらどうしようかって、思っちゃったよ」


「そ、そう?

 じゃあ、安心して良いんですね?」


「任せとけ」

 リンプーは、親指を立てて見せる。


 みずきは、少し安心した。

 ちょっと、ゲームの演出っぽい。

 冒険の仲間?


 やっぱりゲームの中にいる気がしてきた。

「じゃあ、リュウ、ニーナ。

 もう大丈夫みたいだから、帰っても良いよ」

 みずきに言われて、二匹は霧の中にスーッと消えていった。



 二人っきりになると、リンプーが聞いてきた。

「あいつら、リュウとニーナって言うのか?」


「うん。ゲームの中でのペットだけどね」


「ゲームの中?

 何言ってるのかよく分からないけど。

 アンタ、クロとシロ……じゃなくてリュウとニーナってネコを飼ってるよな」


「うん。NPCのはずなのに、よく知っているね。

 もしかして、現実の私を知っているプレイヤーなのかな?」


※NPC:ゲーム上でプレイヤーが操作しないキャラクター

(Non-Player Character)



 リンプーは、キョトンとしている。

「NPC? プレイヤー?

 何だ、そりゃ?

 とにかく、ネコのリュウとニーナは大事にしてやってくれよ」


「うん、分かった。

 ところで、リンプーさんは強いんだよね」


「そうだな。

 自分たちの実力が分かっていない冒険者集団以外には、この地下迷宮ダンジョンでアタイに襲い掛かってくるバカはいないだろうね。

 ただ、別に『さん』は付けなくていいよ。

 リンプーって呼び捨てにしてくれ。

 アタイとアンタは対等だって、認めてるんだからさ」


「じゃあ、リンプーさ……

 リンプー。

 そんなに強いって、あなたは何者なの?」


「ああ。アタイはさ、この迷宮の地下50階に住んでいるんだよ。

 ちょっと用事があって、迷宮の入り口の近くにいる王様に会いに行くんだ」


 迷宮の入り口の近くにいる王様?

 もしかして、地下迷宮ダンジョンを冒険するクエストを出す国王ダントン・ダンツィッヒだろうか?

 そんなことよりも、もっと気になることがある。


「地下50階って、もしかしてダンジョンのラスボスの地獄の山猫軍団(ヘルオセロッツ)の関係者?」


 リンプーは、少し考えこむ。

「うーん。

 関係者っていうか、構成員かな?

 アタイは、渉外担当って言われてる」


「ええーっ?」

 みずきは、一瞬後ずさりしてしまった。


 ゲームの公式サイトの情報によると、この地下迷宮ダンジョンに入るには、レベル20以上の5人パーティーが推奨されている。

 つまり地下一階なら、このレベルのパーティーでも生き残れるチャンスがあるということだ。

 逆に言うと、地下二階に降りたら、このレベルでは生存の保証は全くされない。

 そしてラスボスの地獄の山猫軍団(ヘルオセロッツ)は、地下50階にいる最悪最凶の敵だそうだ。

 レベルを最大まで上げた五人パーティーが、最低5つは協力しないと瞬殺されると発表されている。


 ここが地下何階か分からないが、リンプーは、地下迷宮には彼女に襲い掛かる者はいないと言っていた。

 お供を連れている様子もない。

 一体、リンプーはどれほどの強さなのだろう。


 ただ、リンプーが大げさに言っている可能性もある。

 ラスボスの一員が、迷宮内をウロウロするのはおかしい。

 本当にラスボスだったとしても、自分の味方をしてくれるラスボスなんておかしい。

 色々な可能性を考えて、油断しきるのはまずいと考える。

 だが、たとえリンプーが弱かったとしても、完全な味方じゃなくても、一緒にいたいと思えた。

 自分は、ゲームスキルだけは人に負けないと思っていたが、それを初めて認めてくれたのがリンプーだったから。



 みずきは、ゆっくり前に進んでリンプーの手を取る。

「リンプー。強いのに、こんな私を認めてくれて、ありがとうね」


「どうしたんだよ、急に」


「いや、なんか、嬉しかったんだよ」


「そう?

 まあ、それだったらいいんだけどさ」


「さっきまで、いつ死んでもおかしくないような状況だったんだけど、リンプーと出会って安心出来たってこともあると思うよ」


「アタイなんかが、みずきの助けになれるんなら、アタイの方こそ嬉しいけどね」


「アタイなんかって、ダンジョンのラスボスの言葉じゃないよ」

 みずきが、プッと吹きだす。


「ラスボスって言っても、百匹以上集まってこそなんだけどな。

 一匹一匹は、それほどでもないよ」


「でも、さっきのオークとかも逃げていったし、このダンジョンを一人で歩いて、襲われることも無いんだよね」


「まあ、この地下迷宮(ダンジョン)には、アタイより弱いモンスターしかいないってだけさ」


 自信満々の言葉に、みずきは感心してしまう。

「やっぱ、本物の強者は違うねえ。

 なんちゃって」


「アタイが本当に本物の強者だったら、よかったんだけどね」

 リンプーは真面目な顔になって、ため息をついた。


 あまり褒められることが嫌なのかと思ったみずきは、話題を変える。

「ところで、リンプーは地下迷宮(ダンジョン)の外に用事があるんだよね?」


「ああ、そうだよ」


「じゃあ、一緒に行けば帰ることができるんだ」

 みずきは、嬉しくてたまらない。

 さっきまでの緊張感がウソのようだ。


次のお話は、明日投稿の予定です。

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