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12.制裁

「お、おい、貴様ら、王を置いて逃げるのか?」

 ダントン王が、震えた声で叫んだ。



 アジサイが、リンプーの方を一瞥してから、もう一人に言う。

「まったく。

 弱者を踏みにじっていた中途半端な強者は、自分より強い者を前にすると、見苦しいほどの醜態をさらすわね。

 ところでカスミ、あなた、魔法の使用禁止ね」


「えっ、なんでや?」


「多分、その王様が塵になって消えてしまうからよ」

 抑揚がなく、冷静そのものだ。


「何を言うんや。

 ウチは、魔法の出力制御は完璧やで」

 カスミと呼ばれた方は、両手を広げてアピールしている。


「そこで倒れているリンプーさんの姿を見ても、同じことが言えるかしら?」


 カスミがリンプーの方を見る。

 リンプーは、顔が血まみれになっていて、四つん這いで立ち上がれない様子だ。

 カスミは、みずきの方に気を取られて気づかなかったようだ。

 リンプーの方を見ながら、みるみる表情がこわばっていく。


 カスミは、頭に血が昇って顔が真っ赤だ。

「ゴッルアー、ダントン王!

 貴様、リンプーに何をしたー?」


 さっきまでの威勢はどこにいったのか、カスミにどやしつけられて、王は縮み上がっている。


 アジサイが、カスミに命令口調で言う。

「それから、グーパンチも禁止ね」


「なんでや?」


「王様の頭が粉々に吹っ飛ぶからに決まってるじゃない。

 もちろん、チョキもダメよ。

 王様の頭が一刀両断されるから」

 アジサイは、当たり前のことのように言い切った。


 チョキで頭が一刀両断?

 王は、さっき吹き飛んだ扉の破片を見て背筋が寒くなった。

 あの扉をあんな風に破壊する力で攻撃されたら、どうなってしまうのか。

 想像するのも嫌になった。



 スー、ハー、スー、ハー

 

 カスミは、深呼吸した。

 しばし目をつぶって、黙ってジッとしている。


「しゃあないなあ。

 パーの掌底しか許されへんってことか。

 そしたら、王様。選択肢を与えたげるわ。

 一つ目は、直ちに黙ってウチの言うことを聞く。

 まあ、その後はチョットどつきまわすくらいにしといたるわ。

 二つ目は、半殺しの目にあってから、もう喋られへんやろうから、黙ってウチらの好きなようにさせる。

 こっちは、ウチらもすっきりするし、二つ目がお勧めかな」


 みずきは、よく分からないので質問した。

「どうして、半殺しなんですか?

 あなたたち、滅茶苦茶強いじゃないですか。

 別に、頭を吹っ飛ばしても、一刀両断しても問題ないように思うんですけど」


「いや、ウチらを率いる女王様から指示を受けたんですよ。

 ダントン王は、この地下迷宮(ダンジョン)のオーナーやから、失礼の無いようにって。

 それで、帰り際に『女王は、あなたに忠誠を誓っています』と伝えるように言われてるんですよ。

 頭を吹っ飛ばしたら、聞こえないでしょ?」

 そう言いながら、カスミはダントン王の胸目がけて掌底を繰り出した。


 ドンッ


 ダントン王は、本当にピューッと飛んで行って、さっきまで座っていた玉座にドシンッと座らされた。

 息が出来ずに声を出せないのだろう。

 口をパクパクさせている。

 カスミのさっきの質問に答えようとしているのだろうか。

 だが、声が出せない。


「どうやっ? ウチのコントロールすごいやろっ」

 カスミは得意げだ。

 もう王にした質問のことは、忘れているようだ。


「まぐれじゃないの?」

 アジサイがそう言うと、ダントン王はまた、カスミの前に立っていた。

 そこに戻ってきたのは、アジサイの転移魔法なのだろう。


「何回やっても結果は同じやで」

 カスミの掌底の結果、またダントン王は玉座に腰を下ろすことになった。


 だが、数秒後またカスミの前に立っている。

「どや? まぐれや無かったやろ?

 さっきのは、ウチらに舐めた口をきいた報いや。

 そんで次の一発は、みずき様に生意気な口をきいた報いや」

 また、カスミの掌底を受けて、ダントン王は玉座に着いた。

 いや、着かされた。



 ダントン王は、玉座の上で立ち上がろうとするが、立ち上がれないようだ。

 大きなダメージを受けているのだろう。


 しばらくの間玉座に座り続けているが、それはカスミの前に転移させられていないだけだ。

 アジサイが転移の魔法を使っていない。

 カスミとアジサイは、王の方を見ていない。

 二人は、距離を置いて見つめ合っていた。


「みずき”様”って、あなた、私の真似をしているの?」

 アジサイがカスミに聞く。

「いんや。ウチは、昔みずき様に会ったことがあるんや。

 しかも、大恩があるんや。

 せやから、ウチはみずき様の味方や」


「あら、そう」

 アジサイは、複雑な表情だ。

 少し考えてから、王の方に向き直った。



 また、ダントン王がカスミの前に立っている。

「次からは、リンプーの分やけど、アンタ、リンプーに何回攻撃したんや?

 うてみいな」

 カスミの質問に、声を出せないダントン王は口をパクパクするだけだ。


「あなたって、本当に容赦ないわね」

 アジサイは、呆れた様子だ。


「えっ、容赦ない?

 成敗するのは、これからなんやけど。

 もっかい聞くで。

 リンプーに何回攻撃したんや?」

 カスミは、王様の首根っこをつかんで、前後に揺らす。


「アー、アアー」

 王様は、口を少し開けて何か言おうとするが、言葉にはならない。

 だが、少し時間が空いたおかげで声は出るようになったようだ。


「なんや、答えられへんのかいな。

 しゃあないから、10発に負けといたるわ」

 そこから、ダントン王は玉座に10回座りなおした。

 腹を蹴られたり、腕や足をもって振り回して投げられたり、色々なやり方で飛ばされて着席した。


「どや、アジサイ。

 どんな攻撃方法でも、ピッタリ椅子の上に着地してるやろ。

 ウチの物理攻撃の力加減も捨てたもんやないやろ」


 王は、もうグッタリしていて意識はなさそうだ。


 アジサイが、ダントン王の顔の前に手の平をかざす。

「まだ呼吸をしてるから、生きてるみたいですね。

 確かに、手加減を覚えたことを認めてあげましょう」



「あ、アンタたち。

 強いとは思っていたけど、これほどとは……」

 みずきに抱きかかえられて起き上がったリンプーは、本当に呆れている。

次回更新は、10月6日(月)の予定です。

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