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幽樂蝶夢雨怪異譚

双子村

作者: 舞空エコル


 暑中お見舞い申し上げます。いかがお過ごしですか。

 幽樂蝶夢雨怪異譚も過去ネタはあと4つくらいです。

 もちろん、これからオリジナルを書き起こすことも

 できなくはないですが実は私コロナに罹患しまして

 余力も体力も気力もないないシックスティーンです。

 とりあえず残りネタは頑張って全部小説化しますが、

 その先はどうなるか分かりませんのでよろしく哀愁。

 

 ちなみにこれはタイトルこそ「双子村」ですが厳密

 には双子ではないというか、まあそこは読んでみて

 突っ込んでください。ピーナッツでもリリーズでも

 リンリンランランでもタッチでも戦慄の絆でも悪魔

 のシスターでもシュワちゃんのツインズでもないし

 記憶に新しいサブスタンス的なニュアンスでもない。

 放送した時は別の意味で男性リスナーからの反応が

 大きかったです。どこにあるんだ双子村、是非とも

 行ってみたいと…… なぜ男性が行ってみたいのかは、

 読めば分かるかもだ。男子って本当にもうさあ……

 

 挿絵(By みてみん)

 双子姉妹のエコルンとニコルン。

 泣きボクロがあるのがニコルンだよ☆よろしくね♪

 私は登山家でした。ある年の冬山登山で、私たちの

 パーティーは雪崩に遭い、私以外のメンバーは全員

 が死亡しました。しかし、生き残った私が言うのも

 何ですが、世の中には、いっそ死んでしまった方が

 いい場合も間違いなくあるのです。生き永らえて、

 私のような恐ろしい目に遭うくらいなら……


    ×     ×     ×     ×

 

 意識を取り戻したのは、囲炉裏端でした。若い女が

 心配そうに私の顔を覗き込んでいました。


「ああ、良かった。気がつきましたね!」

「ここは?」

「双子村です…… 大きな雪崩があったので、夫が様子

 を見に行ったら、あなたが倒れていて…… 」


 幸運にも、私だけが埋もれることなく、雪の表面に

 体が投げ出されていたようです。


「…… でも、他の仲間は?」


 彼女はつらそうに首を左右に振りました。引き戸が

 開いて男が入ってきました。


「おお、気が付いたかい! 良かった良かった!」


 男は、昔話に出てくる猟師の格好をしていました。


「今日は珍しく収穫があったからな。あんたも山の幸

 をたらふく食って、早く元気になれや!」


 男は丁寧に捌いた肉を、心得顔で妻に渡しました。

 その後は、豪勢な牡丹鍋を囲んで、話をしました。

 男は猪之吉、女は小雪という名前でした。その夜、

 あてがわれた屋根裏の部屋で眠っていると、障子が

 開いて小雪が入ってきました。彼女は衣服を脱いで

 私の布団にそっと潜り込んできました。


「いや、さすがにまずいでしょう!? ご主人が……」

「この村では、これが習わし…… 夫も心得ています 」


 小雪の裸体は、拒むにはあまりにも蠱惑的でした。

 戸惑いましたが、私も男です。そのまま彼女と一夜

 を共にしてしまいました。以来、小雪は毎晩のよう

 に夜伽に訪れました、私は猪之吉に申し訳ないとは

 思いながらも、ズルズルと関係を続けていました。


 ある日、猪之吉が風邪で寝込んだので、頼まれて私

 が家の前の雪かきをしていると、道の向こうを小雪

 が歩いていました。手を振ると、彼女も手を振って、

 向かいの家の角を曲がると、見えなくなりました。

 小雪の様子に、微妙に違和感を覚えました。そして

 すぐに何がおかしいのか気づきました。小雪は……

 小雪は、妊娠していたのです! 思わず私は大声で

 叫んでいました。


「小雪さん! 小雪さーん!」

「はーい! 呼んだ?」


 返事は家の中から返ってきました。出てきた小雪は、

 いつものスレンダーな体を、セーターに包んで……

 では、さっき見た、妊娠した小雪は?


「小雪さん…… 君は…… 君たちは、双子なの?」


 小雪は、私の質問に躊躇して、言葉を探しましたが、

 ほっと溜息をついて、肩を竦めました。


「しょうがないわね…… まあ、いつまでも隠し通せる

 ことでもないし…… そろそろ、頃合ということね」


 小雪は首から提げた呼び子を吹きました。笛の音を

 聞いた双子村の住民が、次々に通りに姿を現します。

 小雪、小雪、小雪、小雪、小雪…… 猪之吉、猪之吉、

 猪之吉、猪之吉、猪之吉…… 女はみんな小雪、男は

 みんな猪之吉でした。まるで鋳型で作ったように、

 寸分違わぬ小雪と猪之吉が、何人も、何十人も……

 中には、妊娠している小雪もいました。


「私たちは、呪われているの…… 」


 昔、過酷な年貢の取り立てに苦しむ双子村の農民が

 決死の思いで企てた一揆を、小雪と猪之吉の夫婦が

 お上に密告して、村人のほとんど全てが処刑された

 そうです。それ以来、殺された村人の呪いで、小雪

 と猪之吉は、双子村から出ていくことも死ぬことも

 できなくなり、ただひたすらに自分たちの生き写し

 を産み続け、今のこの時代になっても、いつまでも

 いつまでも、いつまでも、いつまでも……


「でも、ときどき外から恵みがもたらされるの。食糧、

 それに子種…… 私たちは、それに望みを託して…… 」


 この村の、生殖が可能な年齢の小雪たちは皆、毎晩、

 入れ替わり立ち代わり、部外者の私と関係を持って、

 小雪でも猪之吉でもない、新しい子供を儲けようと……


「ち、近寄るな! そんな汚らわしい因果応報に取り

 込まれるなんて真っ平だ! この罰当たりどもめ!」


 その小雪は、鼻で笑いました。


「あら、あなたが私たちのことをそんな風に罰当たり

 呼ばわりできると思って…… ? 死んだ登山仲間の

 肉に舌鼓を打って精を養い、毎晩のように私と……

 私たちと淫らにまぐわって、子作りに励んでいた、

 色欲の煩悩に溺れた、あなたが?」


 そ、それでは、あの豪勢な牡丹鍋は…… !?


「嘘だ! 嘘をつくな! 嘘だああああ!」

「まあ嘘だと思いたいならば、それでもいいけれど……

 でも、あなたもまたダメだったみたいねえ。私たち

 の因果に取り込まれてしまったみたい…… ほら」


 小雪は手にした鏡をそっと差し出しました。鏡には、

 茫然と私を見つめ返す猪之吉の顔が映っていました。


【ネタバレあり。本編読了後に閲覧推奨玄田哲章】


 夜伽…… それは永遠の男のロマン。夜這いは場合に

 よっては犯罪ですが、夜伽は余程の例外的な状況や

 対象でない限りは、来るものはウエルカムですよね。

 結果がどうなろうと、それはしゃーないしゃーない。

 こういうシチュエーションは、割と昔からSFでも

 ホラーでも多いです。共同体維持のための子種供給。

 ホセ・ファーマーとかティプトリーとか、映画だと

「人類創生」あと最近だと、アリ・アスターの問題作

「ミッドサマー」がやばかった、見るに堪えなかった。

 逆の設定で本当にそういうのどうよと十代のわしを

 辟易させたのが今は亡きSFの巨匠ラリー・ニーブン

 の“ノウン・スペース”シリーズに出てくる異星人:

 ピアスンのパペッティア人ですね。こいつら性別が

 三つもあって、しかもその割り振りが…… 詳しくは

 ノウン・スペースシリーズを読んで、ご自身で確認

 してくんなまし。酷いったらありゃしない。しかし

 ノウン・スペース面白いのよなあ「リングワールド」

 なんか設定だけで視覚的想像力を圧倒して破壊する

 鬼のガチハードSFなんよ。未読の人は読んでみそ。

 

 それはそうとこの双子村にはインスパイア元にもう

 ひとつ重要なあれがあり何かというとラブクラフト

 なのです。猪之吉は(小雪も)インスマウスかもだ。

 あとディックにもあったよな、迷い込んだらそこの

 住民とどんどん同化されていってアイデンティティ

 が破壊されてく話…… パクリとか盗作とか言わない

 でください。同化されたのでぃす(←違うだろ)

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