愛を積み立てろ
「愛を積み立てることで複利効果が発生して最終的にはすごい愛になるから60年後まで待ってて」
うん。振られた。
婉曲に振られた。
僕はもうインデックスつまり索引されないと出てこないクラスメイトAになるだろう。
「60年も待てるかーっっっっ!!!!!!」
「うわっ、びっくりした。それぐらい我慢できないの。じゃあ、やっぱり嘘なんだ。好きとかその程度なんだ―。口だけだよねー、わたしの若さが目当てなだけでしょ」
内面が時間で磨かれるものなら待つけど。そうじゃないでしょ。外面と内面の総合火力。二刀流だって、両方合わさっての評価なわけです。
60年後のスポーツ選手として経験た技術が上がっても、肉体能力が追いつかないでしょ。
つまりはそういうことなのよ。
「俺の愛はこれ以上ないものなんです」
「ハイハイ。今がピークと。減点三億」
ちょっと待って。そこまでひどい減点方式は日本人でも寛容になれませんよ。加点でいこう。加点で。
百尺竿頭一歩を進むで、ベストの先まで頑張るから。山頂でジャンプするから。
「そんな三億とかいきなり減点されると積み立てても破産しそうなんだが」
「そこで保険に入ります」
「おい、生命保険に入れて、生きていても死んでいても問題ない状態にしようとしているな」
「愛があれば入れるよね」
「愛があれば、一緒に墓場に入水してくれるよね」
「男のメンヘラはちょっと。マイナス5億」
「もう減りすぎてマイナスの数が気にならなくなりました。これが、ギャンブルに負け続ける心理。もう、君に愛されなくてもいい。一方的でいいんだ」
「あっ、推してくれるんだ。」
「推しの概念ってそれでいいんだっけ」
「わたしに貢ぐと幸せでしょう。推しの幸せが自分の幸せ」
さて、次の推しを見つけよう。もっと清楚で可愛くて、裏表のない素敵な人を見つけるんだ。
俺は、翻って去ろうと、カッコつけた。
「あ、その程度なんだ。愛とかリスク無しで何言ってんだが。こっちは若さという資産をベットしているのに。空手形オツ」
俺はマンガのキャラのようにピタリと歩を止めた。
「リスクか。いいだろう。愛の証明にリスクが必要と言うならば、俺は君への愛を証明しようと思う」
「どうやって?」
「昔の男は戦争や狩猟で愛の証を立てだろう。その成果物の貴金属とかでも。現代の文明人は違う。年収と地位と制度。それで大体の人は愛を信用させるだろう。学生の俺には、そんなものはなく、平安貴族のような言葉だけが武器だ」
「ああ、やっぱり、口先で懐柔するんだね」
「だが、しかし、言葉とは、制度を作る母体だ。法律だって言葉で書かれている。言葉には力がある。それは、その言葉が広く知られていることによるんだ。みんなが知っているから、言語は通じて、語用は守られる」
だから、よって、しからば――。
「俺の愛を証明しよう」
今、俺のスマホはネットという大宇宙に繋がった。
動画が、ライブで配信されてネットというアーカイブの海に流れている。
「わたし、〇〇は生涯、目の前にいるクラスメイトの少女と愛を誓うことをここに約束します」
知っているか、結婚というのは、周りに宣言することで守られるんだ。秘密ではなく公然の関係だから。
そして、女子のプライバシーは守る。動画には俺しか映っていない。
「これを破った場合、わたしは、切腹します」
「嘘だ。絶対、お腹は切らないでしょ」
「屋上から紐なしバンジーします」
「でも、二人目の愛人が増える可能性があるよね」
「浮気したら、指を一歩落とします」
「あ、ひよった」
「浮気したら、標高5000m以上の山に弾丸登山します」
「うーん、まぁ、いいか。あと、一ついいかな」
「はい。なんなりと」
「結婚して1年経つまで、お触り禁止です」
「すぐに結婚しよう。今、ナウナウナウ」
「まだ高校生です。大学卒業まで待ちましょう」
「俺の性欲の複利効果で、すごい初夜になるが構わないか」
「少しずつ切り崩していこうね」