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S級探索者は推し活のために探索する  作者: 黒井隼人


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S級探索者達は束の間の安息を享受する


ピノッキオと探究者によって引き起こされた探索者襲撃事件。そしてその後に発生した異世界への転移からのライラの保護といった件からおよそ一月の時が流れた。


「みんなーこんみらいー」

『こんみらいー』

『そうか、今日は休憩だから夜の枠か』

「そだよー。まったりお話しようね」


ダンジョン探索は常に危険と隣り合わせ。それゆえに無理せずきちんと休息日を取るようにしている。

そしてその休息日に関しても夜に雑談配信をみらいはしているのだ。といっても、それもたまに休んで完全お休みの日もきちんと取っているのだが。


『そういえばライラちゃんに関してはどう?』

「ライラちゃん?うん、元気にやってるよ。今はまだ家電に慣れてないのか、ちょくちょく失敗してるけど、それでも頑張って家事を覚えているよ」

『あー、あっちの世界じゃこの世界の家電とかなさそうだったもんね』

『ライラちゃんも魔法使ってたし、魔法自体はあるんだろうけど、こっちほど発展してるって感じではなかったもんね』

「だねー。まあ、細かなところはわからなかったけど…そこのところどうなの?クロウさん。記憶見たんだよね?」

『ん?ああ、確かにそこまで発展してるって感じではなかったねー( ˘ω˘ )』

『やっぱそうなのか』

『でも、魔道具的なのはあったよ。といってもランプみたいに魔石を直接光らせたり魔石を燃やした暖炉的なのだったりだけど』

『こっちみたいに魔石から回路ひいてエネルギー取り出すみたいなのじゃないんだな』

『やっぱそのまま使うのが一番楽なんだろうねー』

「そうなの?」

『まあ、魔石ごとに出力違うからね( ˘ω˘ )それを一律化するって結構大変なんよ』

『魔道具作成にはまずその出力の安定から入るって言うほど基礎だからねー。あれはしんどい…』

「もしかして魔道具作成者さん?」

『昔軽くかじった程度よ。どうにも俺には向いてなくてね』

「そうなの?」

『うん。最初の出力安定はできたんだけど、どうにもその先の回路が上手く引けなくてね…』

「難しいの?」

『物によるね( ˘ω˘ )例えばドライヤーだと温風を出すために微量の火属性と調整可能な風属性と二つの属性を組み合わせないといけないからねー』

『回路間違えてドライヤーが火炎放射器になったよ…』

「えぇ!?」

『あぁ…複数属性扱う魔道具だとあるあるなんよなぁ…回路組間違えによる誤作動…』

「そんなことあるんだ…」

『最近の日常の魔道具は複数の属性を掛け合わせるのが当たり前になってるからねぇ…( ˘ω˘ )』

『その分複雑になっているのですよ…』

「そうなんだ…何気なく使ってはいるけど結構大変なんだね…」


そんな他愛もない話を続けていく。そんなまったりとした雰囲気の中でのんびりとお茶を飲みながらクロウは配信を見ているとノックの後で静かに扉が開いた。


「パパー、お風呂出たー」

「おーう」


髪が濡れた六華がトコトコと部屋の中に入ってきた。


「あーもう、髪びしょぬれじゃねぇか。ちゃんと拭かないと風邪ひくぞ」

「?」

「全く、ちょっと座って待ってろ」


首を傾げる六華に呆れつつ立ち上がって脱衣所にタオルとドライヤーを取りに行く。

その間に六華は先ほどまでクロウが座っていた場所に座る。


「あ、ママだ」


スマホに映っているみらいを見て呟く。そしてスマホを手に取り操作していく。六華が外の世界で過ごすうちに、連絡手段が必要になるだろうからとクロウは六華にスマホを渡していた。それゆえにこういった操作も覚え始めている。


『ママー!』

『え!?』

『クロウさん…とうとうその領域まで…!?』

『いやいや、クロウさんに限ってそんなことは…』

「もしかして六華ちゃん?」

『うん!』

『あ、六華ちゃんか』

『クロウさんのアカウントのままだからびっくりした』

『クロウさんがバブみに目覚めたかと…』

『それはそれで見てみたいところはあるけど…いや、怖いからいいや』

「クロウさんはどうしたの?」

『パパは髪の毛乾かすためにどこか行った』

『髪の毛?』

「六華ちゃんお風呂上りなのかな?」

『うん!』

『つまり六華ちゃんの髪を乾かすためにタオルとドライヤーを取りに行ったと』

『その隙に六華ちゃんはみらいちゃんの枠に来たわけだね』

『そう言うこと( ˘ω˘ )』

『あ、中の人戻ってきた』

『バブみに目覚めたクロウさんお帰り』

『どういうことなの?(´・ω・`)』


困惑しつつもリアルの方では六華の頭にタオルをかけてからドライヤーを手近なコンセントに刺して準備だけ済ませてから机の上に置く。

そして膝の上に六華を乗せてワシャワシャとタオルを動かして髪を吹き始めた。


「きゃ~♪」

「楽しそうだよないつも」


ワシャワシャと雑に拭いているのにそれを嬉しそうな声を上げながら六華は受け入れていた。


「そう言えばクロウさん、六華ちゃんの様子はどう?」

『ん?特に変化もなく元気に学校行ってるよ』

『魔素欠乏症とかは大丈夫そうなん?』

『そっちの方はまだ起きる可能性があるからたまに俺がダンジョン連れて行ってる( ˘ω˘ )』

「体調のほうに問題ないならよかった。六華ちゃん学校楽しい?」

「楽しいー!」

『楽しいそうです( ˘ω˘ )』

「それならよかった」

『まあ、最初の一週間でやらかして学園トップに躍り出てますがね…(´・ω・`)』

『何があったし…』

『いやぁ…探索者学園って小学校から大学まで一貫校なわけですよ』

「そうなの?」

『そうだね。行くかどうかは本人の自由だから別の高校や大学に行くのも、高校卒業して探索者になるのも自由だけど』

「へー」

『そしてもともと探索者が実力主義だから仕方ないんだけど、あの学園でもそう言うわけでして…』

『もしかして、いきなり喧嘩売られた?』

『そのようです(´・ω・`)』

「え、大丈夫なの?」

『加減はできているから、相手が子供でも大丈夫なんだけど、まずはクラス一の子に腕試しと称して昼休みに実力を確かめられたんだけど、そこで圧勝しまして』

「ほうほう」

『次に学年一の子が放課後に勝負を挑んできたらしくてそこでも圧勝しまして』

「ふむふむ」

『そしたらその翌日の朝に今度は小学校で一番の子が勝負を挑んできたらしくて、その勝負にも無傷で勝ちまして…』

「えぇ…」

『そしたら噂を聞いたのか、放課後に中学で一番の子が勝負を挑んできたらしくて、そこでも相手に何もさせずに圧勝しまして…』

「うわぁ…」

『また翌日の放課後に高校で一番の子が勝負を挑んできて、時間はかかったらしいけどそれでも無傷で勝ったらしくて…』

「………」

『さらにその翌日に大学で一番強い人が来て苦戦したらしいけどそれでも勝っちゃったらしくて…』

「……………」

『その話を聞いた教師含めて学園一強い人が来てかなりギリギリだったらしいけど勝っちゃってぇ…』

『呆気に取られてみらいちゃん反応すらできずにいるよ』

『だろうね…。そして学園一強くなったのでもう教えることはない!とか言って卒業させようとしてきたんよ…』

「え、それはいいの?」

『よくないからまず一般常識教えろよって言う苦情と共に止めなかった教師陣と高校生と大学生の奴らに説教してきた( ˘ω˘ )』

「ああ…」

『まあ、そんなことがありつつも、今では友達ができて元気に楽しく学校に通っているみたいよ( ˘ω˘ )』

「そっかそれならよかった」


そう言いつつみらいは苦笑を浮かべていた。

ちなみに余談だが、六華が入学する前まで、実力主義である学園の内部では実力不足の子や下級生に対するいじめなどが横行していたらしい。それらに関しては教師も『この程度乗り越えられなければ探索者になっても死ぬだけだ』と見逃していたのだが、六華が来て全員を倒したことでそれらも鳴りを潜めたらしい。

ちなみにその理由は腕試しがこの学園のルールだと思った六華が、いじめをしている人達を見かけた際に『強いの?なら勝負』と言って問答無用で叩きのめし、『つまらないの』といって心をへし折っているからだったりもする。そのことに関して六華はわざわざ報告することではないから言ってはいないし、教師からも報告されることが無いのでクロウは知らないことだ。


「友達もできたんだっけ?」

「ん!」

『友達もできてて楽しんでいるご様子です( ˘ω˘ )』

「それならよかった」

『だねー。子供は元気に友達と遊べばいいのだ』

『そうそう』

「んー…もっといろいろなお話聞きたいな…。クロウさん通話していい?」

『俺は出ずに六華だけ会話に参加するなら( ˘ω˘ )』

「それでもいいよー。じゃあつなげるね」

『普通に通話入るね』

『まあ、相手はクロウさんだし』

『正確には六華ちゃんだけどな』

『ちなみにクロウさんだったらどうするん?』

『俺なら断る( ˘ω˘ )六華だからつなげるんよ』


そんな会話をしている間にクロウもヘッドセットを取り出し、PCとつなげて、クロウ自身はインカムをスマホにつなげる。スマホから聞こえる六華の声が入ってハウリングしないようにだ。

先ほどのコメントも魔力を使って入力しており、その間に六華のドライヤーで六華の髪を乾かし終えたので問題なくヘッドセットを六華につけて、通話を繋げる。


「もしもし?」

「ママー!聞こえるー!」

『音量も大丈夫そうだね( ˘ω˘ )』

「うん、六華ちゃん、元気そうでよかった」

「元気。また今度一緒にダンジョン探索行きたい!」

「そこらへんはクロウさんと相談かな?」

「行っていい?」

『次行くときあたりにでもついていっとけ( ˘ω˘ )』

「やた!」


クロウからの許可を得て嬉しそうな笑みを六華は浮かべる。

その後もたわいない話を二人でしながら雑談枠はまったりと時間が流れていった。



その日の早朝。海のとある場所に浮かぶ一隻の船。

早朝から漁に出ていた漁船の人達は各々で日課の漁を進めていた。


「ふぁ~あ…ねっむ」

「おいおい、大丈夫か?」

「どうせ昨日また夜更かししたんだろ。今度はなんだ?麻雀か?まさか酒飲んでんじゃねぇだろうな」

「飲んでねぇよ。配信見てたら寝付けなかったんだよ」

「配信だぁ?」

「そうそうダンジョン配信。ちょうどやってる人がいてな。何となく眺めてたんだよ」

「俺達も漁の風景でも流せば少しはこっちに人が流れてきてくれたりするかねぇ?」

「最近ではだいぶ良くなったがそれでも電波は弱いんだから配信なんてまともにできねぇだろ」

「それもそうか」


そんな雑談をしながら仕掛けた網を引き揚げていく。そんな中突如大きめの波が船を揺らす。


「っとと…なんだ?妙に船が揺れるな」

「だな。いつもよりか波が激しい気がするぞ」

「おかしいな、天気予報で時化とかは聞いてないんだが…」


首を傾げつつも網を巻き取る機械を動かしていく。そんな折、遠くの方で妙な物が見える。


「ん?なんだあれ」


首を傾げつつ双眼鏡でその方向を見ると、一部分だけ不自然に海が盛り上がっているように見えた。


「あれは…まずい!!」

「ん?おい、どうした?」


突然慌てて船主室へと向かった漁師に声をかけた同僚が先ほどまで見ていた方向を見ると、今度は肉眼でもはっきりとわかるほど海が盛り上がっているのが見えた。


「お…おい、あれって…」

「まさか…」

「魔物だ!全力で逃げるぞ!!」

「救助信号を出す!」


盛り上がった海が割れ、内部から巨大な海蛇が姿を現した。


「うおおおおおおおお!!」


船のモーターをフル回転させ、それだけでなく緊急避難用のブーストの魔石も発動させて全力でその場から離脱しようとする。そんな船を見つめて海蛇は口を開け、そこに水をためていく。その水から細いレーザーのようなものが照射され、漁船へと向かって行く。


「おい、攻撃が来るぞ!」

「わかって…らぁ!!」


ブーストの噴射方向を変更させて強引に急カーブをする。それによっていまだに巻き取られていた網がレーザーによって切断され、網事捕まえていた魚たちが海に放り投げられた。


「ああ!?網が!」

「ほっとけ!命あっての物種だ!」


網が斬れたことによって水の抵抗が減少し、船の速度が急上昇する。


「このまま逃げるぞ!振り落とされるなよ!!」


速度が上がった船で猛スピードでその場から離脱して漁港へと戻っていく。


「…………」


それをじっと見ていた海蛇は追撃することもなく静かにそのまま海に潜って姿を消したのであった。



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