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S級探索者は推し活のために探索する  作者: 黒井隼人


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S級探索者は今後について話し合う


ダンジョン内で冒険者を襲撃していた犯人である六華を保護した翌日。

一通りの検査を終え、その結果を待つためにその日は施設に泊まり、その結果を受け取って翌日の昼頃に自宅へと帰宅した。


「ただいま」

「?」


言葉と共に家の中に入るクロウを六華が首を傾げて見上げる。


「んあ?今日からお前もここに住むんだ。ここに来たらただいまって言っておけばいいぞ」

「ん。ただいま…」


理解はしていないようだが、それでもクロウの言葉に素直に従って六華もただいまと口にする。


「ん?おかえりー、遅かったね」


声が聞こえたのか、リビングの方からひょこりとシェルフが顔を出した。


「そうか?検査結果受け取ったりいろいろと話してたからな」

「それもそっか。じゃあほらこっち来て、皆待ってるから」

「皆?」


シェルフの言葉に首を傾げつつ、六華と共にリビングへと入るとそこにはシェルフとマーサの本来の住人とは別にみらいとリル、詩織とフィンの二組がいた。


「あれ?みらいちゃんに詩織さん…それに兄さんと姉さんも…どうしたんだ?」

「どうしたも何も、その子の事が気になったから様子を見に来たんだよ」

「シェルフちゃんから昨日は帰ってないって聞いたからね。たぶん今日の昼頃に帰ってくるよって聞いてたからお邪魔させてもらったんだ」

「…聞いてないんだが?」

「言ったらマスターから行くじゃん。それにギルドのほうで話済ませるでしょ」

「そりゃそうだが…」

「六華ちゃんだって今までダンジョンで暮らしてて、検査が終わってすぐにギルドのほうでお話するよりか、ここで話したほうが落ち着けるでしょ」

「まあ、そうかもしれないが…」

「と、いうわけで…六華ちゃんはこっちにおいで。それとマスターはお茶の準備よろしくー」

「おう、主敬えよ」


ケラケラと笑うシェルフにため息を吐きつつ、クロウはリビングの近くのキッチンへと向かう。六華は戸惑いつつクロウをちらちらと見ながらシェルフの方へと歩いていった。


「あ、クロウさん手伝うよ」

「いいよいいよ二人はお客さんなんだから」


声をかけ、立とうとしたみらいと一緒に立ち上がろうとした詩織へと声をかけ、座らせる。


「コーヒーと紅茶、お茶、どれがいい?」

「私紅茶―」

「あ、私も紅茶で」

「それなら私も紅茶でいいですよ」

「ういうい。六華は…ジュースのほうがいいか。なんか買ってあったかな…」


お湯を沸かしながら冷蔵庫を開けて果物のジュースを探す。


「それでマスター、検査の結果はどうだったの?」

「準備中に聞くのかよ…まあ、良いけど。とりあえず健康面には問題ないぞ」

「そっか…」

「健康面ってあれだけの戦いをしておいて懸念する事なのか?」

「あー…魔物にとってはそうなんだろうが、俺達人間にとっては懸念することがあるんだよ」


フィンの疑問に答える。


「そうだな…軽く説明するとこの世界にはもともとダンジョンというものは存在しなかった。そしてそれに付随する魔素…魔力というものも存在しなかった。だからか、この世界の人間には魔素に対する適応力ってものがほとんどなくてな」

「そうなの?」

「そうですね。ダンジョンから漏れ出ている魔素が地上にも漂っていますので、それによって多少の適応力が手に入ったりはしましたが…中にはその魔素の適応力が一切なく、過剰に反応してしまう人もいるみたいで、そう言う人は専用の施設にて治療を進めているという話も聞きます」


フィンの疑問に監督者としての知識を持っている詩織が答えた。


「へー…この程度の魔素で影響出るなんて人間も大変なんだな」

「やっぱり魔物からしたら地上の魔素って薄いの?」

「そうね。かなり薄いわね」

「大丈夫?薄すぎて体調崩したりしない?」

「さすがにずっとだと体調を崩すことも有るけど、たまにでもダンジョンに行けばその時に回復するから問題ないわよ」


フィンの言葉に魔物についてあまり詳しくないシェルフとみらいが心配そうな表情を浮かべるが、リルが問題ないといった様子で答えていた。


「話を少し戻すが、あれだけの戦いをできたとはいえ、産まれた時からダンジョンにいるようだったらその魔素の適応力が逆転して魔物と同じような形になる」

「そうなの?」

「ああ。俺もそうなんだが魔素に対する適応力が高く、かなりの長い期間濃い魔素に触れていると体がその魔素に適応するように変質して名、魔物と同じような体質になる」

「具体的には?」

「体内に吸収される魔素を魔力へと変換する効率が格段に跳ね上がる。具体的な数値は人によっては違うが…一般的な平均変換率が6割くらい。俺や六華に関しては9割以上なんだ」

「そんなに違うの?」

「ああ。それ故か、その分体内に宿る魔力の量も変化する。俺の魔力がかなり多いのもそれが理由だな」


魔素から魔力に変換された際の変換されなかった部分が残りかすのような感じで体内に入り込み、容量を狭めているのではないかというのが魔力変換効率による魔力量の差が生まれる原因だと推測されている。

まあ、その残りかすに関しても魔力を放出する際に一緒に放出されているのか、それともそれ以上に保有できる魔力量が増えているのか、その残りかすのせいで保有できる魔力量が減るといった報告はない。


「マスターがそうなったってことは六華ちゃんも?」

「おそらくな。だからあまり長い間ダンジョンから離れると魔素欠乏症になるからそこらへんは気を付けておかないといけないが」


そう言いつつ紅茶等を淹れ終えたのでそれぞれの前へと持っていく。六華にはリンゴジュースがあったのでそれをコップに入れて渡した。


「長い間って具体的には?」

「ん~…そこらへんは魔力量にもよるが…六華くらいならば半年は大丈夫だろう。まあ、魔法をあまり使わなければの話だが」

「そっか、それなら安心かな」


笑顔を浮かべてみらいがジュースを飲んでいる六華の頭を優しくなでる。当の本人に関しては首を傾げつつも嫌がってはいないようだ。


「…あれ?」


そこでふとシェルフが疑問の声を上げる。


「マスター前に魔力解放して魔力枯渇したよね」

「ああ」

「その時ギルドの方で魔力回復させてたけど、あれ大丈夫だったの?魔素薄いよね」

「ん?ああ、そのことか。問題ないぞ。というか、さすがに俺がダンジョンから出て10年以上経ってるんだ。とっくに問題なくなってるよ」


苦笑を浮かべながらシェルフの問いかけに答えた。


「さっき言った魔素欠乏症って言うのは、魔素を魔力に変換する際、変換速度を上げすぎることで体内に吸収された魔素が不足する状態なんだ。そうなると必要な魔力を補充するために魔素を変換できず、代用品として生命力を変換しようとする。それによって体調を崩すのが魔素欠乏症のカラクリだな」

「ちなみにそれは死ぬことは?」

「放置すればそうなるが、それに対しても時間はかかる。魔力変換されることによって生命力は減るが、生命力が減ることで魔力を生命力へと変換させようともする。つまり魔力と生命力の引っ張り合いが起こる。そしてそれぞれの変換率は100ではない。つまり相互に変換し続けて減少していき、最悪死ぬってわけだ。まあ、それに関してもかなりの時間がかかるけどな」

「直すには」

「定期的なダンジョン探索による魔素接種。そして地上での生活によって変換速度の変更。それをすることで時間をかけて慣らしていくんだよ」

「それで魔素欠乏症にならないの?」

「ああ。といってもそれらはかなり時間がかかる。それをやるにしても、まずは眼前の問題だ」


そう言ってクロウは目を細める。その表情から真剣な話が始まると思い、全員の表情が引き締まった時…。


クイクイ


「ん?」

「………」


六華がクロウの袖を引っ張って空になったコップを見せてきた。


「あ、はいはいおかわりね。ちょっと待ってて」


そう言って立ち上がってコップを受け取り、リンゴジュースを淹れに向かった。

そんなクロウを見てそれぞれが力が抜けるにため息を吐いた。


「さて、改めてお話するとしましょうか」


ジュースを渡した六華をマーサに任せ、クロウはシェルフ達と向き合う。


「今回の襲撃事件。六華と俺を会わせるために仕組まれたものだ」

「仕組まれたって誰に?」

「探究者」


その名を口にすると全員の表情が強張った。

かのN級騒乱。その時裏で動いていた存在。クロウでさえ倒しきれずに逃げられたその存在が今回の一件にも関わっている。そのことはみらい達に危機感を持たせるには十分だったようだ。


「六華にいくつか魔法がかけられていた。解除できる物はすべて解除したが、それでもすべてではない。そして解除できなかったもののほとんどが致命的な何かが秘められている」

「その何かがなにかはわからないの?」

「調べようと触れると起動しかねない仕掛けがあってな。調べることができずにいる」

「じゃあどうするの?」

「しばらくは六華と共に動いて起動したら俺が対処する。後手に回るがこれしかないだろう」

「できるの?」

「よっぽどの事じゃない限りは大丈夫。まあ、少なくともいくつか想定して対策は練っておくから問題はないよ」

「マスターが大丈夫って言うなら問題ないんだろうけど…。でも、何が目的で?」

「それに関しては俺もわからん。前回の事もそうだし、今回の事に関しても、なぜ騒動を起こしたのか、いまいちわからないんだよな」


N級騒乱。最後に関してもハデス達が吸収したダンジョンコアを混ぜ合わせ、N級キメラと呼ばれる存在すら作り上げた。それをしたのも探究者だが、それをして何がしたかったのか。そこまではわからなかった。最後は魔力暴走による大爆発によって混ぜ合わせたダンジョンコアもなくなり、探究者が得られたものはないようにも見えるが、探究者という名前からして何か知るべきことを知れたのかもしれない。


「ま、目的はそのうちわかるということで置いとくとして、これからの事だ。六華、少し聞きたいことがあるんだけどいいか?」

「?何?」

「六華があのダンジョンにいたのはずっとあそこに住んでいたから?」


そう問いかけると首を横に振った。


「気が付いたらあそこにいた」

「ってことは誰かに連れてこられたってことか。今までどこに住んでいたかは覚えているか?」

「うん」

「どんな魔物が出てきてたかも覚えているか?」

「うん、でも、いろんな動物がいたよ」

「いろんな動物…獣系の魔物が多い場所か」

「具体的にはどんな動物が多いの?」

「鳥さんとか、熊さんとか」

「木はたくさんあるか?」

「うん、あったよ」

「ってことは森タイプか。高山タイプのダンジョンじゃないなら…ある程度絞れるかな」

「それじゃあこれからはそのダンジョンを探しに行く感じ?」

「そのつもりだ」

「ん~……ねえ、クロウさん、そのダンジョンってどれくらいの難易度なの?」

「そうだな…ダンジョンごとに何度は違うが…高くてもB級ダンジョンかな」


この世界は他国も含め、無数のダンジョンが存在するが、それでもたいていはB級以下だ。A級とS級もそれなりの数はあるが、それでもそこまで多くはない。理由としてはそれらのダンジョンは特異性や内部の魔物の強さも高いがゆえに危険なダンジョンに関しては封鎖ないし監視が徹底されている。


「んー…シェルフちゃん、どう思う?」

「マスターがいるならどこでも大丈夫だと思うけど、その子が住んでたダンジョンを探すとなるとあまりよくは思えないかなー」

「なんのこっちゃ」

「あはは…おそらくお二人は配信で六華ちゃんがいたダンジョンを探したいのかと」

「あー…」


詩織が代弁するが、クロウは困ったように頭を掻く。


「ダメかな?」

「そうだなぁ…確かに六華の事は配信に映ったわけだし、それらも踏まえて配信に乗せるのは構わんが…」

「やっぱり実力?」


シェルフの言葉に頷く。


「みらいちゃん達はまだD級探索者だ。そして今の実力から見てC級ダンジョンまでならよほどのことがない限り攻略はできるだろう。だがそれはC級ダンジョンの中でもまだ下位から中位レベルのダンジョンまで。上位ないしB級ダンジョンはまだ早い。そんなところに行かせるわけにはいかないからな」

「マスターが着いてくるのは?」

「それじゃあお前らのためにならんだろ。確かに基本的には見守ってはいるが、それでも基本的に俺がやるのは前の時のN級魔物やまず相手にすらならないようなイレギュラーが出た時の対処程度で、それ以外で対処するつもりはないんだよ」

「むぅ…」

「おや、私達を探しに来た時は手を貸していたように見えたけど?」

「母さん達を探しに行った時はみらいちゃん達がついてきたからであってもともと俺の目的だったってだけだよ」


あの時はもともと一人で行く予定だったところを強引にみらい達がついてきた。今回も目的としてはクロウの目的だが、前回とはいささか毛色が違ってくる。


「……それでしたら私も参加しましょうか?」

「詩織さん?」

「私も無関係というわけではないですし、六華ちゃんも実力としては私よりも上です。私とフィンが一緒であり、六華ちゃんもいるのですからB級でも戦力としては申し分ないかと」

「それはそうかもしれないが…」

「もともとは私の配信で起こった出来事です。いくらクロウさんを巻き込んだとはいえ、そのまま除け者にされては納得できませんので」


そう笑顔で告げてくる。確かにこの問題はクロウを巻き込むために探究者が起こしたであろう問題だが、その始まりは探索者襲撃事件であり、その被害者のうちの一人だ。

故に無関係ではない以上、関わりたいというのならば参加させるのがいいだろう。


「それに、この子の存在はできる限り表に出したほうがいいかと」

「というと?」

「この子が襲撃犯であるのは確かです。今まで死者が出ていないのでそこまで大きな騒ぎにはなっていませんでしたが…それでも被害に遭った人がいたのは確かです」

「それって恨まれている可能性があるってこと?」


シェルフの問いかけに詩織が頷く。


「そこで可能な限り配信に出すことで、この子があくまでダンジョン内での常識しか知らないこと。そしてS級探索者であるクロウさんの監督の元、地上での常識を学び始めていると示せればある程度ヘイトを抑えることができるかと」

「ふむ」

「それに今回の一件が探究者の指示ならば、それを示すことで六華ちゃんは『何も知らずに利用された子』としてある程度の情状酌量も得られると思います」

「なるほど」


確かに詩織の言葉の通り、これから先も六華が地上で暮らすのならばその監督者の存在とこの子に常識を教える人が必要となる。そして事件を起こした以上、彼女に対して懐疑的になってしまう。それをS級探索者がいるから大丈夫。だなんてそんな言葉で解消できるとは思えない。それならばこの子自体が無害な存在であると示すのも大事だろう。


「そう言うことならわかった。それじゃあその子が住んでいたダンジョン探しはみらいちゃん達に任せる。といってもいつもの通りに俺も影から見守るが」

「うん、わかった」


その後、配信スケジュールと配信するダンジョン、探索方法などを話し合いながら今後についての話し合いを進めていった。




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